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ポータブルゲーム「レティアと魔法の恋」
女性向けポータブルゲームとしては、
異例な程のヒットを飛ばしたゲームで、
5人の攻略対象が魅力的なのはもちろんの事、
音楽、声優、ストーリー全てが作りこまれ、
恋愛を存分に楽しめると人気だった。
グッズも作られ、劇や舞台になった事からも、
その凄さが分かる。
私の知識では3作品まで作られており、
私はその1作品目に登場するキャラだ。
とは言え、そのキャラと特定できるまで、
ベッドで5日過ごさなくてはならなかった。
なぜなら、主人公のレティアでもなく、
悪役令嬢でもなく・・・
どうゆう事!!!1作品目の攻略対象の・・・
母親じゃない!!!
しかし、私はまだ16歳、
婚約者もいず、結婚もしていない・・・
つまり、当然ながら子供もいない・・・
この世界での私の役目は、
1作品目の攻略対象を産む事・・・となる・・・・
で、父親はだれだっけ?そうだ!
獣人の公爵、ライオネル・ルイ・ギルバーン様だ!
ギルバーンというみよじ、
父親譲りの銀の髪から言っても間違いない。
しかし、私はライオネル様とはほとんど接点がない。
私は侯爵令嬢という立場で、
王太子のお妃候補の1人として、教育を受けてきた。
当然、結婚相手として1番可能性が高いのは王太子で、
穏やかで、優しく微笑んでくれる王太子に、
憧れを抱いていたのだ。
それが、がらがらと崩れていく・・・
失恋・・・・か・・・・・・・
まさかこんな風に失恋するとは思わなかった、
胸が喪失感に支配され、
ぽっかり穴があいたようだ。
あんなに勉強頑張ったのにな・・・
いきなり憧れていた人とは付き合えず、
ほどんど接点のない人物と子供を作る事になるという事実に、
頭では理解しても、心が追い付けずにいる。
じくじくと胸が痛む。
明らかに気落ちした私を、
優しい両親と姉は本当に心配してくれて、
私の好きな果物を持って来てくれたり、
心配りをしてくれて、じーんと癒されている。
この世界は好きだ、
両親も姉も好きだ、
ゲームの設定では、人間と獣人が諍いとなり、
私の子供がそれを抑え、平和に導く重要な役目を持っている。
侯爵令嬢として、この世界を守るのは責務、
どうあっても、ライオネル様と結婚して、
子供を作る必要があるだろう。
失恋の痛手を癒す事3日、
落馬から、合計8日経った時、初めてベッドから降りた。
この世界の未来へ強い決意を秘めて。
絶対、ライオネル様と子供を作ってみせる!