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次にライオネル様のご希望の魔導具屋へ行く。
大きな前世でいう家電みたいな魔導具もあれば、
アクセサリーの形をした魔導具も多く、
家電屋とアクセサリー屋が、混ざった店のような、
ごちゃごちゃした店だった。
とにかく品数が多く、所狭しと置かれていて、
うっかり触って落とさないか心配になる程だ。
ライオネル様は見ただけで、
どの商品がどんな魔導具か分かるようだが、
私にはチンプンカン。
ライオネル様は店主の男性と話しているが、
それらも全然話がついていけない。
ある魔導具が風が出て涼しくなると聞いて、
扇風機かな?と検討はつくが、
その作りは日本で見た羽がぐるぐる回るのとは大違いで、
大きな丸い穴袋のような物から風が出るらしい。
「この風が出る魔導具、どうゆう仕組みなのかしら?」
店主と話しを終え、
いくつか購入し終えたライオネル様に聞いてみた。
「ああ、これは袋の所に風の魔石が入っているんだ」
「魔石」
私は思わず呟く。
確か、魔獣から取れる、特別な効果を持った石を、
魔石と呼ぶと王太子妃教育で習ったけど、
こんなに、身近な道具に使われているとは思わなかった。
この世界に魔法はない、
科学技術も、日本に比べれば、ずっと遅れている。
しかし、逆にこの世界にしかない、
技術が存在するのも事実だった。
ちなみに屋敷はセントラルヒーリングで、
夏は涼しく、冬は暖かくなる。
なので、この扇風機の袋は見た事がなかったのだ。
よくよく考えれば、屋敷が温度調整されているのは当然で、
どうやって調整されているのか、深く考えた事がなかった。
恐らく魔石が使われているのだろうが、
仕組みがまったく分からない。
「まだまだ知らない事ばかりですのね」
「まあ、魔導具を使うのはほとんどメイドだろう、
令嬢・・・特に高位になる程、
自分では使わないという風習があるから、
知らなくても仕方ない」
ライオネル様のフォローを聞きながらも、
転生先でこんな面白い物があるなら、
もしかして、何か発明できないかしら?
と期待に胸を膨らませる。
魔導具の世界の奥深さに感動して、
屋敷にある魔導具の本を読んでみようと決意したのだった。




