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「ライオネル様がいらっしゃいましたよ」
「そう!すぐ行くわ!」
「お待ちください、アマリア様!
この髪飾りだけ~」
メイド3人がかりで準備を終え、
あわてて玄関に向かう。
今日はライオネル様とデートの日なのだ。
ライオネル様は騎士団長という任務の上、
公爵として領地の管理も行っている。
領地運営については、優秀な人を何人も雇い、
できるだけ手がかからないようにしてるらしいが、
それでも最終決定はライオネル様自体が
行わなくてはならない。
そういった事情もあって、
久しぶりに会う事になり、
私の心は随分浮足立っていた。
普段買い物は商人が屋敷に売りに来るが、
いつも買っている本以外は、
書店の本棚を眺め、気になった本を買うのも
楽しみだと話をすると、
一緒に出掛けようという話になった。
後はライオネル様が魔導具を見たいと希望があり、
私も知ってはいたが、普段手にする事のない
未知の道具に興味しんしんで、
ぜひつれて行って欲しいとお願いした。
後は食事をして、帰る予定だ。
「お待たせ致しました」
「いや、・・・・今日も・その・・・・・美しい」
顔を少し赤くして、一生懸命言って
下さっているのが嬉しい。
「ライオネル様も素敵です、
お洋服もとてもお似合いです」
実際、銀の髪に濃紺のスーツが合い、
お世辞ではなくかっこ良かった。
いつもは仕事の制服である軍服が多いので、
こういったフォーマルな服は新鮮で、
それがまた魅力的に感じさせてくれる。
エスコートされて馬車に乗り、
馬車に向かい合いで座る。
ライオネル様が合図を出すと、
馬車はゆっくりと動き出した。
「今日はどんな本を?」
「本屋で見るのは小説ですね、
冒険の小説や恋愛小説が好きです」
「恋愛は分かるが、冒険も好きなのか?」
「はい!主人公が強敵に立ち向かっていく所なんて、
どきどきします!」
「そうなんだな」
「物語では、苦難があっても、必ず乗り越えられるんです、
お約束かもしれませんが、その達成する姿に魅力を感じます」
「俺が剣の稽古をして、今まで敵わなかった相手に、
勝った時の喜びと同じ感じかな?」
「そうかもしれません」
そんな話をしていると本屋に着く。
本屋は前世の本屋とはイメージが違う。
どちらかと言えばは図書館に近く、
3階建ての建物全ての階にぎっしりと本が並べられている。
図鑑や剣術書をはじめ、小説、子供の童話まで、
200年前に出版された本などが、
普通に並んでいたりする。
めったに置かれている本は変わらないので、
広いと言っても、お目当てのコーナーで、
新作の本をチェックするのがいつものお約束だ。
待ち合わせをしてもと言ったが、
今欲しい本はないという事で、
ライオネル様も私と一緒に小説のコーナーに来て下さった。
「こんなに種類があるんだな」
「そうですね、特に劇になる作品は、
全て目を通す必要があるので、
そういった作品は必ず置いてあります」
「全部か・・・・」
「全部です」
ライオネル様は棚を見て、溜息をついていた。
「話題作だと、演じている人物が誰かも話題になるので、
そういった情報収集は必須です」
「俺は男でよかった、剣を振るっている方が性に合う」
しみじみと言うライオネル様を、
ふふふと笑いながら見る。
結局今回はめぼしい物はなく、
何も購入しないで書店を後にした。
「何も買わなくていいのか?」
「ええ、今回はどんな本が今出ているか、
確認できただけで満足です」
そう言って店を後にした。




