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獣人公爵とスパイスな恋  作者: あいら


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15/27

15(ライオネル視点)

今思えば一目惚れだった。


アマリア・スカーレット嬢は、

14歳でデビュタントのパーティに出席し国王に挨拶をした。


王太子と年が近い高位令嬢は、

5歳の時、容姿、能力で判定を受け、

合格した者は、王宮から派遣される家庭教師の元、

徹底的に王太子妃教育がなされ、王妃候補の1人とされる。


例え5歳の時、候補として合格しても、

その後の厳しい教育に耐えられなかったり、

社交界を上手く渡れなかったりと、

脱落していく者も出て来る。


そんな中、アマリア嬢は優秀として知れ渡っており、

デビュタントでもトップでの入場、

その後も王太子妃候補の最有力の1人として知られていた。


可憐な容姿、優しい微笑み、

それだけでも、胸が苦しいぐらいなのに、

長年の教育により、自信に溢れ、

かといって傲慢さはなく、姉に甘える一面もある。


好きにならない方が無理だった。


しかし、相手は王太子妃の最有力。


公爵という身分をもってしても、

アプローチする事はできない。


ただ、遠くから彼女を見つけ、

この目にその姿を映せる事を幸せに思うしかなかった。


しかし、思いがけない幸運が舞い込む。


なんとそのアマリア嬢とのお見合いの打診だ。


これは俺の妄想が見せた、都合のいい夢かと思った。


何度も釣書を眺めたが、一緒に送られた姿絵は、

焦がれた彼女で間違いない。


王太子妃候補であった事を考えると、

当然父親の侯爵・国王も了承という事だ。


詳しく話を聞くと、街道や護衛など侯爵家の利益と、

ギルバーン公爵家が更に発展し、

それが国益になると判断してとの事だが、

それなら姉のリリアナ嬢でも良かったはずだ。


あまりにも自分に都合が良すぎる話だが、

受けない手ははい。


お見合いの日、現れたアマリア嬢は可憐で、

ほとんど返事しかできなかった。

気の利いた話の一つもできない自分に嫌になる。


呆れられたか?嫌いになられたらどうしよう?

そんな不安ばかりだったが、

すぐにまた会いたいと手紙が来て、

心が温まると共に、その手紙は宝物になった。


エターニャと会っている聞いた時は、

背筋が凍る思いがした。


エターニャがアマリア嬢を傷つけるような事をしないか、

不安でたまらなかった。


しかし、後になって話を聞くと、

悠然とお茶会をこなしたばかりか、

エターニャにあっさりと認めさせてしまった。


ほっとしたのと同時に、

そんな令嬢に釣り合うように、

自分ももっと努力しないといけないと思う。


しばらくした時、カレーなる料理を持って来てくれた。

今まで食べた事のない料理で、

複雑なスパイスがとても美味しかった。


どうやら、アマリア嬢はカレーに深い思い入れがあるらしく、

カレーを好きだと伝えると、

今まで令嬢として完璧だった表情が、

普通の令嬢のような親しみやすい表情になり、

さらに胸がどきどきさせられる。


好きだと思っていたが、

もう一度惚れ直してしまったらしい。


とどめを刺すように、

あーんとシャーペットを食べさせてくれた。

もう俺が本当は甘い物が好きな事はバレているのだろう、

その満足そうで、幸せそうな顔に、

2人でいれば、ずっと幸せでいられると思ってしまう。


彼女を手放したくはない。


愛している。


この幸運を運命にしてしまう、そう決意した。

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