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侯爵家で作られたカレーは、
すぐさまライオネル様の元に届けられた。
侯爵家が新商品として、販売予定の商品を、
先行してご提供すると言う事で、
私の単なるお礼以上の箔がついた。
「どうですか!?」
ライオネル様がカレーを口に含んだ時に、
すかさず私が聞く。
ライオネル様は無言で、パクパクと食べ、
言葉がない事に少し不安になったが、
尻尾がぶんぶんと振られていたので、
期待を込めてライオネル様を見る。
「こんなに美味しい物、初めて食べた」
その言葉に胸が熱くなる。
良かった~
やっぱり、夫婦は食事の好みが合う事も大事!
好感度のパロメータは急上昇!!!
ライオネル様との結婚は、
父はもちろんの事、国にも認められているし、
かっこよくて、仕事もできて有能。
しかも食事の好みまでばっちりあう。
子供を作る為のお見合いだったけど、
かなりいい相手なのでは?
再確認すると、いきなり心臓が
どきどきしてきた。
あれ?私ライオネル様の事
好きになりかけている?
「このカレーという商品の、
スパイスの配合をしたと聞いたが」
「そんな、料理人が凄いのですわ」
本当はスパイスの選定からレシピまで用意したが、
私が完全に作ったとなると、
令嬢がどうやって?となってしまう。
スパイスの本は見つかったが、
カレーの本はない。
怪しい事この上ない。
なので、私が特許を取るという事で、
料理人が花を持たせてくれたという事にしたのだ。
ライオネル様もそれに納得してくれる。
「ライオネル様は辛い物がお好きなんですね」
「ああ」
「カレーはスパイスによって、もっと辛くできるようです、
好みの辛さを探すのも楽しみですね」
「そうだな」
どきどきする心臓を誤魔化しながら、
何とか冷静を装い会話をする。
カレーを食べた後、
口直しにさっぱりとしたシャーペットが用意された。
私はそれを食べる。
ううう~ん、美味しい!
ライオネル様の元にはシャーペットは運ばれていない、
ライオネル様って、甘い物が苦手って事になっているのよね。
お姉様の情報でも、甘い物が苦手だったので、
それが社交界での一般的な情報なのだろう。
しかし!
私はエターニャ様に聞いている!
本当は甘い物も大好きだと。
しかし、男らしくないとか、
体を鍛える為に、あまり食べない方がいいとか、
いろいろ考えて、甘い物を絶っていると。
そこで。
「ライオネル様、あーん」
私はシャーペットをスプーンですくい、
ライオネル様の口元に持って行く。
「え?」
目を見開き、戸惑うライオネル様。
「ほら!溶けちゃいますよ」
そう言うと、しばらく迷った後、
ぱくりと食べてくれた。
尻尾はカレーを食べていた時と同じぐらい、
ぶんぶんと振られている。
その姿に胸はキュンと音を立てる。
あ・・・もう完全に恋に落ちたかも・・・・
ふふふ・・・これからは、
甘い物も食べてくれるといいな、
やっぱり好きな物を食べるって幸せだものね。
私は満足に浸っていた。




