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さっそく屋敷に戻り、
調理場へスパイスを運んでもらう。
調理場では、カレーに使うのには、
高級すぎるのでは?と思うような肉が、
すでに用意されていた。
まあ、公爵である、ライオネル様への、
贈り物でもあると考えると、
やりすぎはないのかも知れない。
「料理長、よろしくね!」
私はスパイスを入手してから、
紙に書いた調理法を渡す。
本当は私が作りたい!
玉ねぎのみじん切りだってしたい!
カレーを混ぜたい!
しかし、スパイス屋へ行くというだけで、
かなりの無理を通している、
私は料理人が調理するのを見守るだけにした。
最初は、初めての料理だし・・・
と思って、いろいろ指示を出すつもりでいたが、
さすが侯爵家の料理人、プロ中のプロである。
流れはスムーズ、手際よく早い。
玉ねぎは飴色を通り越し、茶色になるまで炒めてもらう。
そこにトマトを入れ、しょうがとにんにくで味を調える。
そのままペースト状になるまで炒め、
火を弱めてから、ここでスパイスの登場!
調理場にスパイスの匂いが広がって、
ああ幸せ~と、幸福感に包まれる。
灰汁を取って柔らかくした肉と、
ヨーグルトを混ぜ、後は蒸し煮にするだけ。
全ての作業が完璧で、結局私は何一つ口を挟む事なく、
カレーが出来上がった。
そして、その日の昼食、
カレーが食卓に並んだ。
「これがカレーか」
父が独特の匂いに、少し不安気に話す。
「料理人に聞いたのだけど、
スパイスには体にいい物が多く、
美容にもいいとか・・・楽しみだわ」
母はブレない。
お姉様はにこにことして、心の内が読めない。
本当はカレーライスにしたかったが、
ご飯がこの世界にはない。
なので、ナンに近いパンを用意し、
一緒に食べる事にした。
父がカレーを口に運ぶのをどきどきと見る。
ぱくりと一口食べ、その後無言で食べ進める。
そして、いきなり
「料理長を呼べ!」
と言った。
私の心臓はどきどきと煩く、緊張感が半端ない。
料理長があわてて父の元にやってくる。
「お呼びと聞きました」
神妙な顔して、料理長が父の言葉を待つ。
「このカレーという料理は、スパイスからできているんだな」
「さようでございます」
「すぐさまこのスパイス屋と連絡を取れ!
カレー専門の店を開く!」
私は父の言葉に嬉しくなる。
いきなり店を出すとか凄いが、父ならやる。
それだけの権力とお金がある、十分に。
「よくやった、アマリア!
著作権の権利はアマリアにして、
売上の一部はアマリアに入るようにしよう」
「ありがとうございます、お父様」
臨時収入も大きいが、
これから、いつでもカレーが食べれる!と、
私は歓喜に震えていた。




