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晴れた日、スパイス屋に向かう事に。
父の許可は出たが、
スパイス屋の前で馬車を降り、
スパイスを買ったら、すぐに馬車に乗る。
寄り道は一切不可。
それでも私の心は浮き出し立つ。
スパイス屋はいきなり馬車が来て、
かなり驚いていたようだが、優雅に礼をした。
「お邪魔いたしますわね」
「これはこれは、こんなに美しいご令嬢に
ご利用頂けるとは、幸運の極みです」
「素晴らしいスパイスですのね」
大きな袋に溢れんばかりに入ったスパイスを見る。
予想以上に種類も多く、状態もかなりいい。
おそらく侯爵家の者がさんざん調べたスパイス屋なのだろう。
このスパイス屋を見つけた者に報奨金を出してもいいぐらいだ。
辺り一面に漂う匂いに、
これよね~とテンションを上げながらスパイスを吟味していく。
カレーの基本となるのは、
『クミン』『ターメリック(ウコン)』
『コリアンダー』『チリ』の4つで。
『クミン』『ターメリック(ウコン)』
『コリアンダー』でカレーを作り、
『チリ』で辛さを調整する。
『クミン』は秘訣とされる薬味で、
疲労回復や消化促進、抗菌作用があり。
『ターメリック(ウコン)』は
胃酸の分泌を促し、食欲増進や消化促進の効果。
『コリアンダー』は
アンチエイジング、整腸作用、骨を強くする効果。
『チリ』は
体内のコレステロールや老廃物の排出を促進。
とそれぞれ体にいい事が満載だ。
他にもスパイスの女王と呼ばれる『カルダモン』を始め、
『マサラ』『クローブ』『フェヌグリーク』
なども購入していく。
ライオネル様は肉が好すき。
辛さの調整と共に、肉に合うように、
これらのスパイスを調合していく予定だ。
問題となったのは、前世ではグラム単位だったのが、
この世界にはグラムという単位がない事、
スプーン1杯が1ルルンという単位で、
升のような入れ物が1タール、
それらを頭の中で計算して、
20人分ぐらいのスパイスを購入する。
「お買い上げありがとうございます!」
袋に詰めながら話す店主に、私は質問する。
「普段はどんなお客様が?」
「魚料理に味つけしたり、
逆に肉料理だと、肉の臭みを取ったりが多いですね」
「それにしては、種類が豊富なのね」
「どんな調味料が売れるか分からないからね、
できるだけいろんな種類を仕入れるようにしてるんですよ」
おかげで、希望するスパイスが全て手にはいったのだ、
店主には感謝しかない。
メイドがお金を支払う。
「おいおい、ちょっと多いんじゃないか?」
普段値切られる事はあっても、
多く払う客は少ないだろう、店主が慌てている。
「これは、これからのお付き合いを含めての事よ、
もし父に気に入られれば、
家に売りに来てもらう事になるかもしれないから」
「それはそれは・・・よろしくお願いします」
まだ戸惑っている店主を見ながら、
私は馬車に乗り込んだ。




