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73話 ナニネ村

「ここがナニネ村か」


アーバスはナニネ村の近くの人通りのないところへ転移すると、歩いてナニネ村へと到着する。


(活気がないな。)


街を見ると人通りは多いが、街の雰囲気は何処かどんよりとしていた。どうやらまだレインボーゴーレムは討伐されてなさそうだな。

居酒屋の前を通り過ぎると鉱山で働いていたであろう人間達が仕事がないのか、昼間から酒を飲んでいる姿が確認できる。


(本当は話を聞きたいんだがこの格好で聞くのはなぁ)


鉱山の情報が欲しいので居酒屋に行きたかったのだが、学園の制服で居酒屋に行くと入った瞬間に追い出されそうだからな。居酒屋ら未成年は入店お断りのところが多いから仕方ないな。

リーゼロッテを連れてくれば良かったと後悔しかけたが、急な依頼だったのと外部の人間を参加させるのもどうかと思うしな。

道中で何店舗かの露点で買い物を装って聞き込みをしたが、シエスからの情報と大差ないくらいの情報しか聞くことは出来なかった。


(諦めてギルドにでも行くか)


ギルドなら多少なりとも情報が集まっているだろう。そう思ってアーバスはギルドへと向かう。ギルドの位置も聞き込みの際に聞いておいたから迷子になることはなく到着することができた。


カランカラン


ギルドに入ると冒険者達が昼間から酒を飲んでいるが、アーバスはそれを無視して依頼を貼ってある掲示板を確認する。


(依頼が少ないな)


冒険者が少ないのか、朝から冒険者達が依頼を取っていったのかはわからないが掲示板に貼ってある依頼の数が非常に少なかった。


(鉱山系は………………あった。)


幸いにも鉱山の魔物討伐の依頼が残ってのでそれを剥がす。ゴーレム20体の討伐依頼だったのだが、どうせ道中で倒すことになるだろうからついでに依頼も受けることにする。後、報酬も悪くないしな。普通にシエスからの依頼を討伐するだけでもいいのだが、道中で倒したモンスターから更に追加でお金も貰えるなら受けるしかないな。


「この依頼を受けたい」


アーバスは受付嬢の座っている机に依頼を置きながら言った。

受付嬢は事務作業的にクエストに承認の判子を押そうとしたところで、目を見開き動きを止める。これは気づかれたか?


「失礼ですが、ランクを確認してもよろしいでしょうか?」


「Dランクだけど」


アーバスはそう言いながらアイテムボックスからギルドカードを出す。このギルドカードは潜入用のギルドカードで、アーバスの名前とランクのところにDと書かれている。このギルドカードを久しぶりに出すが、確かまだCランクへのランクアップ条件は満たしていないはずなので問題なく偽装出来ているはずだ。

一応別でジョーカーのギルドカードもあるのだが、そっちは学生服の状態で見せれるものではないからな。


「申し訳ございません。今鉱山では高ランクのモンスターが出現してまして、こちらを読んでサインを書いて頂かないと立ち入りが出来ないような決まりになっているのです」


と受付嬢が申し訳なさそうに1枚の紙を出してくる。誓約書か。誓約書にはAランク以上のモンスターが出現したということと、鉱山で何があっても責任は取れませんということ、そして、ギルドはそのことを説明したことが書かれていた。誓約書とはここのギルドはしっかりとしているなと思いつつアーバスはその誓約書にサインして受付嬢に返す。


「これでいいか?」


「は、はい。それではお気をつけて」


アーバスがサインしたことに驚いたのか受付嬢は動揺しながら承認してくれた。これで、小銭もゲットだな。

アーバスはそれを確認すると問題のゴーレムを片付けようと鉱山の方へと向かおうとするが。


「兄ちゃん待ちな」


「ん?何だ」


アーバスが向かおうとすると背後から声を掛けてくる男がいた。アーバスは振り返るとそこには1人の男がおり、装備は傷だけであるものの質は高く風貌から歴戦の冒険者のようだ。


「俺はBランクのマティウスだ。悪いことは言わねぇからその依頼速攻破棄しちまえ」


「どうしてだ?こっちはAランクモンスターから逃げ切れる自信があって依頼を受けたんだが?」


恐らく忠告しに来たのだろう。残念ながらこっちはそのAランクモンスターの討伐依頼で逃げることが出来ないんだよなぁ。まぁ逃げるとか言っているが逃げずに討伐するんだけどな。


「俺は実際に奴を見たが、あれは一般人が勝てるわけがねぇ。逃げるにしても足が非常に速くて逃げ切れずに倒された仲間が沢山いるくらいだ」


「俺には逃げる為の魔法があるからそうなならないさ。それに万が一戦闘になっても俺ならゴーレムなら何度も討伐しているからな」


そりゃスーパーかウルトラかわからないが、そいつから回避や障壁系の魔法なしで逃げるなんて無理だろうがアーバスの実力なら完封できるだろう。


「自信があるのはいいことだが、あそこは学生が行くところじゃねぇ。それに今は行ってもまだ入れないと思うぜ」


「ん、入れないとはどういうことだ?」


非常事態とはいえ冒険者はモンスターを討伐するのが仕事なのだから本人の意思さえあれば入れるはずなのだ。それなのに入れないとはどういうことなのだろうか


「昨日だったな。メルファスのヘボカスっていう13聖人がやって来てそいつがAランクモンスターを倒す為に今日1日は冒険者であっても鉱山に入れねぇらしい」


アーバスはそれを聞くと天を仰ぐ。ヘボカスとは13聖人ではあるが、名前だけの政治組の雑魚だ。しかも下から2番目と実力も低いので本人だけだとスーパーレインボーゴーレム相手でも負ける可能性が高いだろう。

ただらヘボカスの部下はそれなりに強かったはずなので俺が出るまでもなく倒してくれると助かるのだけどな


「受付嬢は何も言ってなかったが?」


「そりゃ正式には通達してないらしいからな。だが今行ってもその取り巻きに追い返されるのがオチだから行かない方がいいぜ」


「そうなのか。なら状況が変わるまでここにいさせてもらおうかな」


「あぁ、その方がいいぜ。学園からの依頼なのにすまねぇな」


本当は一刻も早く討伐したいのだが、今行ってもヘボカスの取り巻きによって鉱山へ行けないのなら状況が変わるまでは此処にいた方が良さそうだな。アーバスは空いている席に座るとその対面にマティウスが座る。


「それにしても災難だな。本校からここまで遠かったのに来たら鉱山に入れないとか可哀想な奴だな」


「そうだな。まさか入れないとは思わなかったな」


アーバスは転移で来たので10分程だったが、王都からだとここまでは4日程かかるからな。シエスの元に届いた手紙は速達で昼夜問わずに大急ぎで運んだようで普通よりも1日到着が早かったみたいだな。


「それにしてもDランクなのにあの誓約書にサインするなんて怖いもの知らずだな」


「忠告はありがたいが生憎こっちも別の依頼があってな。これはそのついでだ」


本当の依頼はそのAランクモンスターなのだが敢えてそこは黙っておく。


「何の依頼かしらねぇがそれはそこまで命を掛けるものなのかよ」


「命は掛けるつもりなん一切ないさ。でも、依頼を達成しておかないと成績に響いたら嫌だからな」


今回が依頼を受けたのが初めてだが、任務の成功可否って成績に影響するのだろうか?シエスのことだから無理な依頼はしていないだろうから依頼の成功率はほぼ100%だろうから成績に直結することは無いとは思うけどな


「Aランク相手に命を掛けてないってとんだ大物だな。せいぜい死なないように気をつけろよ」


マティウスは哀れな目でアーバスを見ながらそういった。普通のDランクならAランクモンスター相手だと死ぬだけだからそりゃそうだよな。


「そういえばAランクのモンスターを見たって言ってたよな。どんなモンスターだったんだ?」


予想ではスーパーレインボーゴーレムだが、その上のレベルのモンスターかもしれないから見たというなら状況を聞いておかないとな


「見た目はレインボーゴーレムと大して変わらなかったな」


「見た目は変わらなかったのか」


スーパーレインボーゴーレムだと普通のレインボーゴーレムと一緒なので威力の問題か? 


「まず、手足の属性が2属性融合しててよ」


「ん?」


「足から火が出て高速で接近してくるし」


「は?」


「しかも手が分離して高速で飛んでくるんだよ」


「ちょっと待てい」


どこが普通のレインボーゴーレムだよ。完全に別物じゃなねぇか。しかも1つ上のウルトラレインボーゴーレムでもそんな動き聞いたことがないぞ。


「な、やべぇだろ?」


「そういう次元じゃねぇよ」


こりゃヘボカスが負けるのは時間の問題だな。というか会ったら速攻で勝敗がつくんじゃないか?

アーバスかそんなことを考えていると


「大変だ。メルファスの奴がどうやら負けちまったみたいだ」


野次馬で見に行った冒険者だろうか。戻ってきた冒険者の言葉にギルドが凍りつく。マティウスはその言葉を聞いてニヤニヤしながらアーバスに向かって


「13聖人様でも負ける程の相手なのにそれでも兄ちゃんは行くんかい?」


「そりゃそうだろ。ミスって留年の方が嫌だからな」


むしろ邪魔者が居なくなったのでこっちは助かるけどな。ただ、この前のキングレッドドラゴンの時のように13聖人が負けてモンスターが進化するパターンだけは嫌だけどな。


「情報ありがとうな。参考になったぜ」


「兄ちゃんも気をつけてな。無事に帰ってくることを祈ってるぜ」


マティウスに感謝を伝えるとアーバスはギルドを出て鉱山の方へと移動するのだった。

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