67話 久しぶりの教室
「おはようアーバス」
「お、久しぶりだな。ジャック」
週末が終わり今日から授業が開始となる日だ。アーバスは久しぶりの教室に到着するとまだ数人しか来ていなかったが、その中の1人であるジャックがアーバスに話かけてきた。
「聞けよアーバス、俺たちレベル2をクリアできたんだぜ」
「お、すげぇな。そのペースなら結構早めにレベル5をクリア出来そうだな」
「だろ?今学期中にはレベル6へいってやるぜ」
ジャック達はレベル2をクリア出来たらしい。この期間中にレベル2をクリア出来るなんてトップクラスの連中と変わらないんじゃないか。
「パーティーメンバーは誰と組んだんだ?」
「俺とニールとサーシャとラウムだ」
サーシャは回復担当で、対抗戦では後衛としてバフと回復をメインに戦っていた子だ。もう1人のラウムは完全な前衛で剣術はこのクラスでも上から数えた方が早いくらいの実力がある。ジャックとニールの役割は排斥だしな。
「前衛3人か、物理耐性の敵だけは厄介だな。それはどうするんだ?」
サーシャは攻撃魔法は使えないのでそこが課題になるな。前衛でごり押しするのもありなのだが、物理が全く効かないモンスターも存在するからな。
「それがラウムが少しだけど攻撃魔法が使えるみたいでさ。それで少しは何とかなりそうだ」
「ラウムって攻撃魔法使えたのか」
「本人が言うには初級魔法らしいけどさ、それでも今の俺たちには十分すぎるぜ」
「それは心強いな。ただ、あんまり調子に乗るなよ」
「おぅ、わかってるぜ」
油断は命取りだからな。現にアミールがそれで何回かやらかしてるしな。
「アーバスはどうなんだよ。どうせ俺たちよりも上に行ってるんだろ」
「そりゃな。むしろ下だったら困るだろ」
「ハハハ。違いねぇや」
正直、初めはダンジョンに行く気がなかったのだが、まさかアミール達と一緒にダンジョンを攻略しているとはな。エクストリームは結構な頻度で行っていた気がするけどシエスが公表する気がないだろうから言う必要がないしな。
「で、誰と行ったんだ?」
「サーラとアミールとリンウェルだな」
「1組トップメンバーじゃん。そりゃ攻略速度も早い訳だ」
「といっても俺はアミールに誘われた側だけどな」
「マジかよ。アミールに誘われるとかどれだけ信頼されてるんだよ」
「さぁ、多分実力で選ばれたんだと思うぞ」
最初の紹介もそんな感じだったし、パーティーを組む時も性格さえ問題なければ実力が高い人と組むのは必然だしな。
「実力か。確かにアーバスは頭一つ抜けてるもんな。そりゃパーティーメンバーとして欲しくなるのは普通か」
「だろうな。俺が同じ立場だったらそうするからな」
むしろ引き抜いたリンウェルの方が例外だな。あっちは本人が乗り気じゃないのに強引にパーティーメンバーにしたくらいだしな。
「みんなおっはよー」
パーティーメンバーの話をしてるとアミールが入ってきた。その後ろにはサーラもいる。アミールはアーバスを見つけるとアーバスの元へとやってくる。
「アーバス何話してたの?」
「ジャックとダンジョン攻略の進み具合を確認してただけだ」
といってもまだこっちの攻略レベルは教える前なんだけどな。
「そうなのね。で、ジャック達は何処まで行ったのよ」
「レベル2をクリアしたところだぜ」
「そうなの。へぇ」
「何か感情がこもってないのは気のせい?」
「気のせいよ」
アミールはそういうとアーバスに耳打ちをしてくる。
「ちなみにどれくらいすごいの?」
やっぱりわかってなかったか。アミールはダンジョンに疎いようだし俺抜きだと、どこまで進めるめていたのか理解していないようだ。アーバスは「はぁ」とため息を1つ入れると
「俺抜きだと多分同じくらいのレベルだそ」
「それは凄いわね」
と関心した後にジャックの方へと向きなおり
「結構やるじゃない。ジャックって凄かったのね」
「アーバス、お前何言ったんだ?」
「アミールに常識を教えただけだだけど?」
「それってお前ら絶対非常識な攻略しただろ」
「ダンジョンで不正な攻略は出来ないと思うのだが?」
「うるせぇ。俺らの偉業が霞むくらいの攻略をしてる奴らに言われたくねぇ」
ダンジョンで不正ってどうやったら出来るんだよこっちはちゃんと合法に攻略しているだけなのにな。俺はむしろクラス代表でもないのにレベル2を攻略したジャックの方がすげぇよ。
「やめろジャック見苦しいぞ」
「ニール。お前までアイツらの味方か」
「そりゃそうだろ。クラス代表のパーティーに勝てる訳ないからな」
「ヴっ。それは確かにそうだけどさ」
「なら俺達なり頑張るしかないだろ。むしろアドバイスが貰えるんだから有り難いじゃないか」
「そ、そうだな」
ジャックが完全に撃沈してしまったな。少し考えたらアーバス達の方が先に進んでいることくらい想像出来るだろうに
「ジャックが迷惑をかけてすまないな」
「そんなことはないと思うぞ。レベル2クリアなんて誇っていいくらいに順調な成果だと思うぞ」
「そうかな?ちなみにアーバス達はどこまで進んだんだ?」
「レベル9をクリアしたところね」
「は?」
「あ?」
ジャックとニール二人してポカンとした表情になる。そうだよな、それが正しい反応だよな。
「アーバス、どうやってクリアした?」
「普通にクリアしただけだぞ」
初心者レベルはショートカットしたけど、それ以外は索敵しかしてないしな。
「そうね。イレギュラーモンスターはアーバスに任せたけどそれ以外は私達でクリアしたわよ」
「イレギュラーモンスターを討伐出来るってどうなってるんだよ」
「普通はイレギュラーモンスターなんてでたら全滅だよ」
アミール、それを言うのはいいんだが、普通の学生ではイレギュラーモンスターは討伐出来ないからな。むしろ出会ったらそこで退場なんだよ。
「アーバスってもしかして強い?」
「じゃなかったら最終戦負けてたぞ」
アミールがロイン以外の前衛を削ったのもあるが、仮に2組が全員残っていたとしてもアーバス1人に全滅していただろうな。
ジャックは正気に戻るといきなり床に座りだし
「すいませんでした」
と土下座をするのだった。別に煽られたようには思わなかったし、土下座する程ではないんだがな。
「ニール、これはどうすればいいんだ?」
「放っておいていいんじゃないかな?」
なる程、放置かそれも悪くないな。ただ、このまま顔を上げると不可抗力とはいえ、アミールのスカートの中を覗く形になりそうだな。
「ブゲラァ」
顔を上げようとするジャックをアーバスは足でそのまま床に押さえつける。すまんジャック。これもお前を冤罪から守る為だ。
「あーゔぁず、な゛に゛ずるんだ(アーバス何するんだ)」
「アーバス、それはやりすぎじゃないかな」
「すまんな。諦めてくれ」
アミールが離れない限りこの足は外せそうにないな。1年間変態の称号をつけた状態で生活してもらうのもいいかもしれないが、アーバスはそこまで鬼にはなれなかった
「アーバス面白そうね。えぃっ」
「ビギャア」
「ジャック!大丈夫かい?」
ジャック頭を足で押さえつけているアーバスがネタとして遊んでいる思ったのか、アミールは踵落としを延髄に叩き込む。アミール、そんなことより早く離れてくれ。ジャックはモロにクリーンヒットしたのか叩き込まれた時にビクンと全身が跳ね上がる。軽く踵落とししたように見えたのだが結構いいダメージが入ったようだな。
「アミールやりすぎです。というより離れてください」
「そんな。軽くやっただけよ」
「その割には結構なダメージだったと思うけど!?」
サーラがアミールを遠ざける。まぁこれで見えることはなさそうだな。アーバスは大丈夫そうなことを確認すると、押さえてた足をどける。
「あぁー死ぬかと思ったぜ」
ジャックは飛び起きると、首を軽く回す。ダメージが入った割には意外と元気そうだな。
「おい、アミールやりすぎだろ。死ぬかと思ったぜ」
「だから軽くだって言ったでしょ。全力でやってもいいのよ」
「どれだけの力があるんだよ。ゴリラにも程があるぞ」
「誰がゴリラですって」
アミールが反射的に正拳突きを放つ。全力の速度に近い速度のそれは当たると痛いどころか盛大に吹き飛びそうだな。ただ、他の生徒に当たるのは良くないのでアーバスはアミールの手を掴んで静止させる。
「なんでよ。一発殴らせなさいよ」
「やめとけ。他の奴が巻き込まれる」
「俺の心配は!?」
言ったからには殴られる覚悟があるんだろ。そこは責任を取ってもらわないとな。アミールの力が抜けたところでアーバスはアミールの手を放す。アミールはジャックに近寄ると
「次はないわよ」
「は…………はい」
アミールの脅しに屈したようだ。アミールの全力だとジャックの体力は果たして持つのだろうか?
「それにしてもアーバス達はすげぇな。レベル9とかこの学園トップ層なんじゃないか?」
「トップは現在レベル25らしいぞ。」
「レベル25!?凄くねぇかそれ」
何せ普通よりも進んでいるらしいから当然だな。驚くのも無理はない。1年でみたら間違いなくトップであるが、他の学年はそれよりも上のパーティーも多いだろうから1年では異常なだけじゃないかな
「ジャックには無理そうね」
「何だと。卒業までには攻略してやるからな」
「その調子だとレベル6で詰まりそうだな」
「そうだね」
「ニール!?」
またニールがこちらの味方になった。というか立ち位置はさっきからこちら側だったわ
「そんなに調子乗ってると足元を掬われて全滅しかねないからね」
「調子に乗ったっていいじゃん」
「良くないぞ。それでアミールは何回もボコられてるからな」
「ちょっ。それは余計でしょ」
ここに実際にやらかした見本がいるからな。ちゃんと伝えておかないとな
「ホームルームを始めるわよ。席についてちょうだい」
いつの間にかホームルームの時間らしくカイン先生が来たためそのまま解散となった。




