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61話 ヒュドラ戦

「戦う前に準備しますか」


とアーバスはアイテムボックスから小型の銃を2つ取り出しで両手に装備する。普段だと剣で対処するのだが、ヒュドラの体液は猛毒で構成されており、迂闊に剣で切りつけてしまうと猛毒の体液が飛んできて逆にダメージを受けるということがあるのだ。その為、ヒュドラ相手は遠距離攻撃で攻撃するのがセオリーだったりする。


「あんまり出番はないとは思うが、剣を出すよりかはマシだしな」


エクストリームでもそうだが、アーバスのメインウエポンは剣でもなく銃でもなく魔法である。アーバスは武器に関しては有利に立ち回れるように全種類の武器をメルファスの最上位である師範代まで習熟させており、モンスターの特性に合わせて武器を変更して戦ったりしているのだが、普段は得意武器である銃か剣なことが多い。


「カートリッジも念の為にセットしておくか」


アーバスは白のカートリッジをアイテムボックスから取り出すとそれぞれの銃のカートリッジ挿入部分にセットする。


「これで準備完了だな」


アーバスは装備の確認も行うと、そのままヒュドラの元へと歩いていく。ヒュドラは眼中にないのか、アーバスがヒュドラを目視できる場所まで近づいても攻撃する様子は一切なかった。


「スルー出来そうだけどアミールとサーラでアウトだろうな」


アーバスは放出している魔力量が少ないのでのヒュドラからしたら雑魚は興味なしだったかもしれないが、アミールとサーラの魔力の漏れ方だと脅威と判断して戦闘になるだろうなと思いながらアーバスはどう対処するかを考える。


「まぁいいや。いつも通りやりますか」


アーバスはそう言うとヒュドラを覆うように障壁を展開する。そこで初めてアーバスを脅威か戦闘対象だと判断したのかヒュドラは毒を吐き出して辺り一帯を毒の海にしようとする。


「そうはいかないんだなあ」


ヒュドラの毒は障壁から出ることなく、一瞬でヒュドラ自身を毒で覆い尽くす。


「うん。想定通りだな」


アーバスは鑑定と透しの魔法を使ってヒュドラの様子を確認する。ヒュドラは障壁を破壊ようと、その触手で障壁を攻撃したり毒の海を使って密度を高めたりしているが、どれも障壁を壊すまでには至らなかった。


「そろそろいいかな」


戦闘を初めて10分後、アーバスは魔力弾を展開するとそのままヒュドラへ向かって魔力弾10発連続で発射する。ヒュドラは毒を吐き出すからか毒を使うモンスターでありながら、属性は毒属性ではなく水属性のモンスターとなっている。その為、弱点は雷属性なのでアーバスは当然のように魔力弾に雷属性を残して攻撃する。  


バコン


と雷属性の魔力弾が直撃した場所が大幅に凹みそこから大量の毒の血液が流れ出す。ヒュドラは苦しいのか、更に大量の毒を吐き出すが、それが影響してか、更に他の部位も圧壊していく。そして


「ギッ」


という断末魔と共にヒュドラは消え、ヒュドラのいた場所に宝箱がドロップする。


「マジか」


透しの魔法で見ているだけなので、何色の宝箱かは毒が邪魔して判断出来ないが恐らくは銀色だろう。他のイレギュラーモンスターも倒せば宝箱をドロップしていたので当然ではあるのだが、  


「どうやって開けるんだよこれ」


宝箱は当然障壁の中にあり、しかも毒まみれの状態である。ここから宝箱を開けるにしてもまず毒を取り除く必要がある。


「どうやって?」


普段のヒュドラ戦だとこのまま自身を障壁で守りながら毒まみれの障壁を開放するのだが、それができない理由が2つ程あった。


「この毒って階段に入った場合どうなるんだろ」


1つ目の理由は階段に毒が入ってしまうことだ。場所が次の階層への階段の目の前で戦闘していたので当然である。階段にまで毒が入ってしまえば次の階層に入って少しは毒の床を歩く必要が出てくるだろう。そうなれば魔法陣を床の代わりにして歩く必要があるので無駄に魔力を消費をしてしまうし、階段の先にある階層の間の広間やその下のボス部屋が毒まみれになってしまう。


「そうなった場合は戦闘にならないな。しかも魔力が勿体ねぇ」


床が毒まみれで戦闘になってしまった場合、ボスに猛毒が入ればいいが入らなかった場合は味方の機動力が削がれるので魔法で戦うしかない。しかもよりによって魔法を使えるアーバスとサーラはノーマルのモンスターを倒しても魔力が増えないので大事なボスモンスターの魔力を捨てるしかなくなるのだ。


「仕方ない。浄化するしかないか」


一向に減りそうもない猛毒に向かってアーバスは浄化の魔法を発動する。浄化の魔法は呪いなどに対して使用する魔法で、主に呪いの解呪やデバフの無効化などの効果がある。ちなみにアンデットやゴーストのモンスターには攻撃の魔法として使用することもできる。

アーバスは仕方なく浄化の魔法をかけるが、アーバスの使える浄化の魔法では少しずつしか浄化することが出来ないので障壁内の猛毒が減っていっているものの、このペースだととてもじゃないがタイムリミットまで間に合いそうもなかった。


「サーラ。聞こえるか?」


『はい。聞こえてますが、どうやって』


「説明は後だ。アミールとリンウェルを連れて戻って来てくれ」


『はい。わかりました』


アーバスはサーラとの会話を終了する。アーバスよりもサーラの方が浄化に関しては専門なのでサーラに手伝ってもらうほうが速く終わるだろう。

そして通信を切ってから数分後にサーラ達が到着する。


「何やこれ。どないなってんや」


「サーラ。浄化を頼みたい」


「浄化ですか?毒のように見えますが」


「毒ではあるな。厳密には猛毒なんだが」


とサーラに説明するとサーラはうーんと考えてから


「では解毒でもいいですか?多分ですが、効くと思いますよ」


「そうなのか?任せるぞ」


「それでは。『解毒』」


サーラが解毒を行うと障壁内にあった猛毒は一瞬光を放つと次の瞬間には消え去っており、中には銀色の宝箱が姿を現した。


「宝箱じゃない。つまりは倒したってことね」


「あぁ。ただ、後処理が想像以上に難しくてな」


ヒュドラを圧懐させての討伐までは想定通りだったが、まさか浄化が殆ど効かないとは思っていなかったぜ。


「宝箱を開けるか」


「大丈夫なんか?その宝箱」


「見てみるまではわからんな」


アーバスはそういうと障壁を解除して宝箱の元へとむかう。宝箱はぱっと見では綺麗になっており、とてもではないがら毒の中にあったとは思えないくらいだった。

念の為に宝箱に看破をかけるが、特に宝箱の内外に毒によるダメージはなさそうだった。


「よし開けるぞ」


アーバスは宝箱を開けるとそこには腕輪が1つ入っていた。


「これは調合の腕輪ですか?」


「ちょっと待ってろ………やっぱりそうだな。」


ドロップしたのは調合の腕輪でこれを装備するだけで調合の成功確率が上がるものである。ちなみに装飾品の腕輪と違って鉄っぽくて彫りしかないのが調合の腕輪の特徴だ。装飾品の方だと何かしらの宝石や装飾がされているから違いがすぐわかるんだよな。

調合倍率は+16%で最上級品だった。まぁ、レア度+1付けている状態でヒュドラを倒したのだからそのくらいの報酬がないと釣り合わないけどな。


「良かったじゃないですか」


「使い道は限られるけど大当たりだな」


「使い道がないのは勿体ないわね」


調合できる人がいるならいいんだが、残念ながらこのパーティーはできる人がいないから売却だろうな。仕方ない。


「それにしても本当にヒュドラを1人で倒すなんてね」


「そりゃ倒せるから1人で行ったんだけどな」


アミールはヒュドラのいたであろう場所見てそう呟く。ヒュドラは倒すのに高ランクパーティーが必要だとは言われているが、それは毒の海を対処するのに1人だと難しいからと言われているのが理由であった。


「それにしてももの凄い強度の障壁でしたね。もしかして私達に毒の海が来ないようにとの配慮ですか?」


「いや。この方法のほうが楽だからやっているだけだよ」


強度な障壁の中にヒュドラを閉じ込めると自身の毒で勝手に圧懐してくれるからな。ただ、自然に圧懐するまで待つのは時間が掛かるのである程度密度が高くなってから少しダメージを与えると簡単に圧懐してくれるのでアーバスはある程度毒が濃くなったタイミングで攻撃したのであった。

 

「ただ、さっきみたいに毒まみれの障壁が残るのが弱点でな。あれのいい処理方法が未だに思いかないんだよ」


アーバスの魔法ではヒュドラの毒は防げるが、毒を無効化することは出来ないからな。なのでいつもは毒を放出しているのだが、今日は放出出来ないのでそれで困っていたのだ。


「なら解毒を覚えたほうがいいですね。ある程度は解決できると思いますよ」


「機会があれば習得するか。便利そうだしな」


状態異常はヒーリングで治せるが、自身以外には使用できないからな。それを考えると解毒などの他人の状態異常も回復できる魔法も覚えておいた方がいいかもな


「残り時間は………大丈夫そうだな。ちょっと休憩してからボス戦にしようか」


「そうしましょうか」


「そうね。その方が色々と準備できるからいいわね」 

 

「やな。昼からここまでずっと攻略しっぱなしやからな」


時間を確認すると普段よりも 30分早く最下層まで辿り着いたのでそこで休憩を挟んでからボス戦でも余裕で間に合いそうなので、広間で一旦休んでからボス戦に行くことになったのでとりあえず広間まで移動することにした。

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