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478話 勝負の分水嶺は

「ふむ。やはり圧倒的か」


コンタービレはセーティスとグリファーズの試合を見ながらそのような感想を漏らす。今までセーティスは個人戦に出場した選手以外の主力を本陣で待機させていたのだが、今日のグリファーズ戦はほぼ全員が出撃しており、その実力が始めて公に公開されることとなったのであった。

その実力は圧倒的であり、前衛エースのエースのアミール・カーンはグリファーズの主力を4人を相手しも完勝するような実力があったのである。流石はAランク冒険者と言いたいところであるが、セーティスはアミール・カーン以外にもAランク冒険者が2人いる上にBランク冒険者も出場学園の中で最大数の数がいるのでその結果は当然と言えるだろう。


「流石と言っている場合じゃないですか?明日はファルフォスとツオークがセーティスと試合をするのですよ!?」


と同席していたペルトンは焦りながらそのように言う。明日は午前にセーティスとファルフォスのパーティー戦、午後からはツオークの団体戦がそれぞれ組まれているのである。こちらには色々と武器があるものの、それを駆使したところでセーティスに確実に勝てるという安心はないという状況であった。


「そうだな。もし、これが今日みたいな状況であれば私も非常に焦っていただろうな」


なんせ今日はファルフォスとツオークにとっては非常に危うい日であり、何と事前に聞いていた紋章が使われず、全く知らない紋章が使われていたのであった。それにより細工した武器が全く使えないことに非常に焦りはしたものの、ファルフォス、ツオーク各校長が機転を利かせて非常用として用意していた闇の指輪を使ったようで何とか今日1日敗北せずに済んだようであった。ここで負けていたらセーティスとのポイント差が詰まってポイントに余裕が無くなってしまうところであったが、このまま維持ができれば優勝出来る可能性が飛躍的に上がるだろう。


「そんなこと言っている場合ではないと思いますよ。仮に闇の指輪を装備したとしてもあの実力であれば負けることは十分に考えられますし、細工した武器は使えないのですよ」


他人事のコンタービレにペルトンは現実を突きつけるかのようにそんなことを言う。今日の予定にない紋章の変更を見るに何処かの国が不正している情報を掴んだと考えて良いだろう。それが我々のことかは定かではないが、こうなった以上明日も予定にない紋章が使われると想定するべきだろう。


「そこは問題ない。サード・オプティマス(本部)の協力で明日のセーティス戦はどの紋章であっても細工した武器を使用出来るようにしてある」


今日の午後、コンタービレはサード・オプティマスへと出向いており、今日の午前までの報告と勝負どころである明日のセーティス戦に向けての詰めてきたのであった。その結果、明日の責任審判がツオークなのを良いことにファルフォス側は試合直前の審判による武器チェックの際にどんな紋章であっても黙認するよう指示を出すとのことであった。これは闇の指輪でも勝てないだろうというコンタービレの訴えを聞いて採用したものであり、それ程サード・オプティマス(本部)は新人戦による損失を避けたいという態度の表れであった。


「随分と思い切りましたね。ですが、映像に残るはずですがそれはどうするつもりなのですか?」


とペルトンが疑問に聞いてくる。代表戦は全試合色々な視点で映像が取られており、それは代表戦の本部に記録されているのである。それなのでもし、不正疑惑が上がればその映像を使って検証することとなり、そうなった時に紋章が違うという露骨な不正は見抜かれてしまうのではないかと感じてしまったのであった。


「そこは問題ない。元映像は全て消去されているし、各学園への映像は視点切り替え出来ないようになっているからな」


こんなこともあろうかとサード・オプティマス(本部)は代表戦運営にも人を投入しており、細工された武器を使ったファルフォスとツオークの試合映像は全て本部の映像記録から削除していたのであった。ただ、それだとハイライト映像が残らずに不自然に思われるのでハイライト映像は不正がわからないように加工して各学園に配布して映像を見て不正を訴えられないように巧妙に隠していたのであった。この方法はファルフォスとツオークの不正が始まった当初から使われている方法であり、今まで映像を見て不正を訴える学園が無かったことから信頼出来るやり方として今に至るまで使用されているものである。


「そういうことですか。つまり違う紋章が使われていても映像では見つけることが出来ないということですか」


「そういうことだ。剣の紋章は柄の底だしな」


剣の紋章は柄の底にあるお陰でハイライト映像に映らせないということは簡単だからな。なので仮にセーティス側からそんな訴えがあったとしても映像が残っておらず証明も出来ないので訴えは認められないだろうからな。


「なる程。それならファルフォスとツオークは勝つためにどんな手を使っても問題ないということですか」


ペルトンはこの状況をようやく理解してくれたみたいだな。どんな手を使っても問題ないのならファルフォスとツオークはセーティスに相手に負けることなんてことはないだろう。


「ただ、メルファス側の責任者がリーゼロッテなのが気になるとはサード・オプティマス(本部)は言っていてな。メルファス側の動向は気をつけるように再度言っておいてくれ」


「わかりました。そのように2校には伝えておきます」


今日の話し合いで話題に上がったのは学園側以外が刷新されたことであり、コンタービレ自身は特に気にしてはいなかったもののサード・オプティマス(本部)は変わったのに我々が一切の警戒をしていないことに疑問を呈していたのであった。私自身は調べれても証拠が出てこないので問題ないと思っていたので意見を押し通したのだが、尊師からはメルファスには特に警戒するようにと言われたのであった。コンタービレは話半分に聞いていたものの、何も対策をしていないのは良くないからと忠告するようにペルトンに伝えたのであった。


「それと盗聴関係はどうだ。何か掴めたか?」


とコンタービレは話題を変える為に盗聴器の話へ切り替える。ヌーリス中に展開して盗聴器は何者かによって破壊されてしまったのである。それを報告すると再展開しろという指示が出されたのでコンタービレ達は夜中にコツコツと仕掛けていたのであった。


「やはり設置した側から破壊されていますね。誰が破壊しているかを確認する為に盗聴器を張らせましたが、姿を見せることなく破壊されました」


「やはり足取りは掴めずか」


ペルトンの報告にコンタービレはやはりかといった表情で報告を聞く。相手が特定されていない状態での再展開は相手が何者かを特定する為に展開されることが大半なのだが、結局は盗聴器だけ破壊されてしない何処がやったのかわからずといった結果となってしまったようであった。


「仕方ない。ありのままを報告するしかないが、怒られるだろうな」


とコンタービレは仕方なしと言ったかのように立ち上がる。なんせ足取りが掴めぬままに無駄に盗聴器だけが破壊されてしまったのである。いくら委託だからとはいえ、これ程の失敗をして責任なしということはないだろう。


(だが、セーティスの優勝を阻止できればチャラだ)


その責任も金白金貨20枚の売上があればチャラどころか昇格も夢ではないだろうとコンタービレはほくそ笑むのであった。

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