表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
475/491

475話 相手の本陣へ(クロエ視点)

「クロエちゃん。本当にこっちであってるの?」


道なき道を真っ直ぐ進んでいく私にパーティーメンバーであるアロマが話しかけてくる。私達はグリファーズの本陣へ向けて進んでいる最中なのだけど途中から道を外れた上に索敵の妨害も掛かっちゃったからちゃんと進めているのか不安になっているみたいね。


「大丈夫だよ。アーバスくんから借りているこの魔道具がちゃんと道を教えてくれているからね」


試合開始前にアーバスくんから道案内をする為の魔道具を装備してくれと言われて装備しているのだけれどまさか本当に掛けているだけで道を教えてくれる魔道具だとは思わなかったよ。


「本当?でも周りは何もないよ」


「大丈夫だよ。アーバスくんがそんな意地悪するはずはないと思うよ」


アーバスくんが貸してくれている魔道具だから信用はしているけど、それだけを頼りにして歩くのはアロマちゃんの言う通り不安なのだけど索敵が妨害されてしまっている以上は私達で周囲の状況を確認することは出来ないから道を外れた時点でアーバスくんを信用するしかないんだよね。


「ちなみに相手の本陣までの距離ってどのくらいかわかる?」


「後500メートルみたいだよ。だからもう少しだけ頑張ろ?」


この魔道具は目標や敵までの距離も教えてくれるすぐれものみたいで目標の距離以外にも色々なものの距離まで教えてくれるみたいだね。私はその情報を元にアロマに残りの距離と共に頑張ろうと奮いたたせる。なんせ私達の作戦は本陣の強襲と敵主力の引きつけでなので最悪本陣の攻撃に失敗しても主力を本陣に戻せればそれだけで十分だと言われていたのよね。


(期待されていないのも困るけど、アミールちゃんが強すぎるもんね)


と自身のパーティーか与えられた役割について不満はあるものの、前衛エースであるアミールちゃんの実力を目の当たりにしてしまうとこの作戦になるのは仕方ないと納得する。対抗戦ならアーバスくんがこの役割を担っているのだけれど、代表戦では人数が余っているからと私達のパーティーが奇襲の役割を担って代わりにアーバスくんを自由にすることとなったのよね。


「皆、そろそろ着くから周囲を警戒してね」


相手の本陣までの距離が200メートルを切ったタイミングで私は皆に周囲の警戒をお願いする。既に相手陣地には入っているものの、ここから先は相手が目視で警戒していても不思議ではない領域だからさっきよりも更にゆっくりと慎重に前へと進む。


(そろそろ相手本陣みたいだね)


前が開けていることに気付くと私はパーティーメンバー全員を静止させた後、私1人だけ前に出て本陣の様子を確認する。


(やっぱりあれ相手の本陣だね。流石はアーバスくん)


開けた場所を音を立てないように慎重に確認するとそこは相手の本陣の真横であった。私は誰にも気づかれていないことを確認すると敵の本陣に何人残っているからをじっと観察しながら数える。


「戻ったよ」


人数を数え終わると私はここからの行動をどうするか相談する為に一旦パーティーメンバーの元へ合流する。


「クロエちゃんどうだった?」


「ざっと見た感じだと本陣に残っているのは3人で主力はいないみたいだよ」


と私は見たことをそのままパーティーメンバーに伝える。ここで大事なのは自分が見た情報を正確にパーティーメンバーに伝えることだからね。なんせ私達はこれから奇襲を仕掛けるので情報が正確でないと失敗するかもしれないからね。


「3人ね。プティちゃんどう思う?」


「クロエちゃんの情報が本当なら仕掛けて良いんじゃないかな」


とアロマちゃんはプティちゃんにも相談する。プティちゃんはアロマちゃんと同じ後衛の魔法師で、アロマちゃんは攻撃魔法とバフが得意で回復は使えないのだけれどプティちゃんは回復とバフが得意なのでアロマちゃんが使えない回復を主に担当している。

私の情報を聞いたプティちゃんは奇襲をするのに賛成だそうで、アロマちゃんの質問に即答していた。


「私もプティちゃんの意見に賛成だよ。ヘクトちゃんは?」


「僕は君たちに任せているからね。皆が賛成なら僕から何も言うことはないよ」


と言うのはこのパーティーのサブアタッカーであるヘクトちゃんで、ヘクトちゃんは前衛特化の剣士である。このパーティーではサブアタッカーとしての役割ではあるが、剣士のしての腕は高く代表戦の予選ではSランクの生徒を倒しまくってベスト8まで進む程の腕前を持っている。準々決勝では惜しくもクロロトに敗れてしまったのだけど、それが無ければ決勝までは問題なく行けていたくらいの実力があったからね。ただ、自身の意見を言うのは苦手だそうで、ヘクトちゃん曰く余程のことが無い限り自身から意見を言うことはないらしい。


「なら仕掛けようか。アロマ、相手は本陣前に固まっているから魔法を打ち込んでくれる?私とヘクトちゃんは攻撃を合図に飛び出そうか」


「僕は異論はないよ」


「わかった。じゃあ準備するから位置についてくれる」


大凡のプランが決まると私とヘクトちゃんは相手本陣が見える位置に移動して相手の様子を伺う。相手はまだ私達が本陣に到達していることを知らないのか本陣の前でのんびりと雑談をしており、警戒や緊張感といったものは一切として見られなかった。


(流石に私達の本陣もこんなことにはなっていないよね?)


危機感が一切として無い相手本陣を見て私はそんな心配をする。私達はここまでの全試合前衛として戦っていたので本陣の様子を見ることは出来なかったけど、待機していたヘクトちゃんが言うのにはアーバスくん達に危機感といったものは一切としてなく、終始雑談していたと聞いていたからである。

アーバスくんのことなので前線が安定していたからなにもしていなかったのだろうけど、そんな話を聞いてしまうとどうしてもこちらも不安になってしまう。


【フレイムパルス】


そんなことを考えているとアロマちゃんの準備が整ったのかフレイムパルスが雑談している3人へと向けて放たれる。私とヘクトちゃんはその瞬間に隠れていた場所から飛び出してフレイムパルスで残った相手にきっちりとトドメを刺すために一直線に走り始める。


「「「ぎゃああああああっ」」」


(えーーーーっ)


飛び出した私達の目に映った光景は雑談に夢中でフレイムパルスの発動にすら気づかずに直撃する3人の姿であった。その馬鹿すぎる状態に私は心の中でびっくりした声を上げる。もし、これがアーバスくんならフレイムパルスをきっちりカウンターした上に私達に迎撃をしてきていただろうと想像がつく。


「ありゃあ」


フレイムパルス爆風が晴れた後を見て思わず私は頭を抱えてしまう。結果はフレイムパルスによって3人は退場。あまりにお粗末すぎる結果に私は思わず驚きと落胆の混じったことを上げる。


「クロエちゃん、突っ立ってないでさっさと相手本陣を削るよ」


その光景からいち早く切り替えたのはヘクトちゃんでヘクトちゃんは3人の退場を確認すると即座に本陣を攻撃し始めていた。


「そうだね。アロマちゃん、プティちゃん。周囲の警戒をお願いしてもいいかな?」


「任せて」


3人の退場を確認して合流してきたアロマちゃんとプティちゃんに周囲の警戒を任せると私もヘクトちゃんと一緒に相手の本陣のHPを削り始めるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ