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470話 思わぬ観戦者

「ギルディオン、来ていたのですか?」


「何やら面白い事になっていると聞いてな。午前はこの試合を見ることにした」


リーゼロッテとルーファが雑談をしながらアリーナの一角にある主催室へと足を運ぶとそこにはギルディオンが座っていたのであった。リーゼロッテとルーファは空いていた席に腰掛けるとギルディオンは楽しそうな顔をしながらそんな事を言う。リーゼロッテはギルディオンはてっきりアーバスの方を見に行くと思っていたのでこれは意外であった。


「普通な事を面白いと言うのは語弊がありませんか?」


ルーファは面白そうにしているギルディオンに対してそんなことを言う。なんせ運営(こちら)は皆と同じように戦うことを強要しただけであり、他の学園からしたら至極真っ当なことなのである。それを面白いと言うのは真面目に戦っている他の学園に対して失礼極まりないと思ったのである。


「確かに語弊はあるな。だが、ファルフォスの慌てっぷりで相当であったぞ」


と思い出したかのようにギルディオンはニヤニヤと嗤う。実は先程のファルフォスの騒動はギルディオンはこの運営席から魔法を通して見ており、そのドタバタ劇に大笑いしていたのであった。


「そりゃ肝だった作戦が使えなくなったらそうなるでしょうね」


なんせファルフォスの不正武器による作戦はこれまで問題なく使用出来ており、今大会でも問題なく使えていた代物だったのである。それが、急に使えなくなったら慌てふためくのは当然のことであった。


「ですが、ファルフォスの選手陣に焦りや絶望は無さそうですね。何か新たな策を用意したのですか?」


とルーファは入場しても全く焦っていないファルフォスの選手達を見てそんなことを言う。普通は作戦が使えないとなると選手間に落胆した雰囲気が流れるのであるが、ファルフォスの選手達にそんな気配はなく、むしろやる気なように見えた。


「鋭いな。どうやらファルフォスはこうなることを想定していたようでな。新たな物を選手陣に渡したようだ」


試合直前に来たリーゼロッテとルーファとは違い選手の集合時間から居座っているギルディオンは不正武器が使えなくなったファルフォスが何をするのか当然知っていたのであった。


「新たな物ですか。それは不正の類ですか?」


「現物を見ていないからわからんが、現時点では不正ではないと踏んでいる」


ギルディオンが言うにはそれは不正では無いそうだ。ファルフォスが不正なく正規で使える物など限られているだろうが、ギルディオンが不正と見ていないというのなら正攻法なのだろうか?


「もしかして装飾品ですか?」


「正解だ。どうやらとんでも倍率の装飾品を用意しているらしくてな。それを使うとかいっておったぞ」


正解にたどり着いたルーファにギルディオンは拍手をしながら盗み聞きした内容を話す。ファルフォスは武器が使えないのならと装飾品の力を借りる作戦に出たようである。


「とんでも倍率ですか。確かに装飾品に関しては基本の倍率の低さから倍率の制限はありませんが本当ですか?」


「俺も現物を見るまでは信じるつもりはないが、奴らはそうだと言っているな」


実は武器のスキルの付与というのは非常に簡単に高倍率を付与することが可能なのである。鍛冶師の腕によって倍率は左右されるが、一流の鍛冶師であるボナークやエバクであれば簡単に3桁の倍率を付与できることから代表戦では生産武器に関しては30%の上昇までと決められているのである。

何故この制限が生産武器のみに掛けられているのかというとダンジョン産の武器はスキルを自分達で決められない上に深い階層に潜らない限りは超高倍率の武器が出てこないからである。その為、高倍率のダンジョン産武器というのはある意味ご褒美の一種という風に捉えられていた。

ただ、武器と違って装飾品は倍率の高い物を用意しようとすれば高ランクのモンスターを倒さないといけないという課題がある上に更にはスキルによって倍率に差が生まれるらしく、1番の人気である攻撃力アップなどのスキルに関しては災害級の素材を使っても50%程度であるということから代表戦のルールでは装飾品には一切としてスキルの上限倍率というものが設定されていなかったのである。


「それは興味がありますね。倍率も興味がありますし、生産方法も気になります」


ルーファは装飾品自体に興味を示したみたいで倍率以外にどうやって生産しているかが気になっているようであった。確かに生産方法さえわかればトゥールでも生産が可能となるのでそんな高倍率の装飾品を安価で製造できるなら欲しいと思っているのだろう。


「俺も興味があるが、止めておいた方が良いぞ。恐らく禄でもない方法だ」


ギルディオンは興味を示す一方で、生産方法などの詳細な方法については言いたくないみたいだな。ギルディオンはリリファス達と同じように数百年生きている人間ではあるが、その年数において装飾品が発展した例は殆どなく、稀に高倍率の装飾品が大量に生まれる時は大抵禄でもない生産方法であることが殆どなのである。なのでギルディオンは()()()禄でもない生産方法だと検討を付けていたのであった。


「禄でもない生産方法ですか。それはどういったものなのですか?」


ただ、言葉を濁したところでルーファ引き下がることはなく、詳細な話を聞いてくる。生産方法を知っているのであれば知っておきたいというのがルーファの考えであるが、ギルディオンの言う禄でもない方法を知っているリーゼロッテはその言葉に賛同する訳もなく黙り込む。


「言っても手を出さないという条件とこのことを他言しないと言うこと守ってくれれば良いだろう」


「良いでしょう。その条件を受け入れます」


念には念を押すギルディオンにルーファは即答する。念を押されようともルーファはその探究心を抑えることをしようとはしなかった。


「なら良い。素材というのは簡単だ」


とギルディオンはこの会場を指さす。が、ルーファはそれで気付くことはなく?の表情を浮かべる。


「人間だ。俺が見てきた異常な倍率の装飾品には人間が素材として使われている」


「厳密には魔法師の心臓だけどな」と付け加えるギルディオンにルーファが今更ながら断れば良かったと後悔する。確かに装飾品にモンスターを素材として使うことが出来るので同じ生物である人間を素材にすることも可能ではあるだろうが、まさか本当に人間を素材として使用した事例があるとはルーファは思っていなかったのである。


「そんな同族殺しを人間は許しているのですか?」


「許される訳無いだろ。だから出る度に根絶させているのだが、いつの時代も狂人(マッド)研究者(サイエンティスト)が勝手に生み出してしまうのが難点でな」


と許せないという感情を出すルーファにギルディオンは同調するかのように答える。なんせそのような人間秩序を破壊するような行為もギルディオン達の世界秩序の維持の中に入っており、見つけ次第根絶させると決めていたのであった。


「そうですか。なら今後協力致しますので私達にもちゃんと報告を下さいね」


とルーファは強い口調でギルディオンに言う。人間界に少なからず関わりを持ってしまったルーファにとってそんなことは到底許す訳もなく、見つけ次第抹殺するとたった今心の中で決めたのであった。

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