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434話 奇襲を知らずに

「少数精鋭の奇襲か。良く考えたな」


アーバスは前線組から離れて向かうクロエ達を見て称賛しながら戦況を見守る。なんせ3組は1組と違って本陣には誰もいないからな。4組は3組の総力戦の弱点を狙った形であった。


「ホンマやな。最小人数で奇襲しにいく辺り狙ってたやろ」


「だろうな」


前回の代表戦の作戦を見てクロエ達はこの作戦を考えていたのだろう。本来であれば索敵魔法で相手の本陣の状況を見てからこの作戦に移すのが1番の理想であるが、1組以外はフィールド全体の動きを察知できるほどの索敵魔法を展開できる奴がいないからな。なので狙い撃ちと行った形で奇襲しにいって相手の本陣の様子を見て奇襲するかどうか最終判断するのだろう。


「でも、流石にターニーのことやからその辺りは対策済みじゃないんか?」


「いや、それがそうでも無くてな。この試合に限って言えば本陣には何も細工していないから試合が終わるまで気づくことはないだろうな」


3組は試合開始と同時に全軍出撃しており、試合開始と同時に何か細工したといった類のことをした様子は一切として見受けられ無かったのである。試合開始前に細工した可能性は否定できないのだが、そっちは明確なルール違反なので3組はそんなことをしてないだろう。


「は、どういうことや?本陣をガラ空きにする時は何かしら奇襲されたことを感知する魔道具か何か置くんちゃうんか?」


総力戦を仕掛ける場合には基本フィールドのような本陣への奇襲がされる可能性が限りなく0に近いフィールドじゃない限りは本陣に感知用の魔道具を置いたり、迎撃用の魔道具を置くのが定石である。ただ、3組はそれをやらずに総力戦を仕掛けた上にその隙を突かれて本陣を奇襲される形となってしまったのであった。


「本来は置くつもりだったのだろうな。これまでの試合はそうしていたしな」


なんせ代表戦では1組と4組に総力戦を仕掛けたターニーだったが、いずれの試合も感知用の魔道具を置いていたからな。1組戦に至ってはそれに加えて迎撃用の高性能ゴレームや地雷などを置いて3組本陣にアーバスを近づけさせないと物凄い対策をしていたからな。


「じゃあ、何で今回は対策してないんや?」


「憶測で良かったら話せるが、それでいいのなら話すぞ」


「ええで、どうせこれは本人に聞かんとわからんしな」


今回の失態はクロロトからも問い詰められる上にアーバスも理由を聞こうとしているくらいに重大だからな。これくらいでアーバス個人のターニーへの評価が地に落ちることはないが、2度3度あれば評価を落とさざるを得ないだろう。


「原因は2組の棄権だろう。3組は午前中に緊急の作戦会議があったと聞いているが内容は2組のことだろう」


「2組に気を取られすぎるあまり4組戦のことが疎かになったということなんか?」


「あぁ。その証拠に試合が始まっているのに関わらずターニーは集中出来てないみたいだからな」


今は前衛同士がぶつかって戦闘が始まったところであるが、ターニーがずーっと上の空だからな。指揮自体は問題なく行えているので3組が優勢に試合を進めてはいるものの、このままいけば前衛戦でも負けるかもしれないな。


「それって指揮官としてどないなんや?何があってもやっぱり試合に集中するのは必須事項やろ」


「それだけ棄権という事象が衝撃的だったということだ」


アーバスはトゥールの情報部隊を使って情報を集めていたので2組の詳細な情報を入手しているが、他の組はサポーネ以外の情報は全くと言っていい程ないだろう。

なんせ2組は代表戦出場者は総合戦のサポーネのみでそれ以外は誰も代表戦には参加していないからな。サポーネはそれを利用して徹底的に情報封鎖を敢行しており、元クラス代表であるロインを始めとして夏休みに何処までダンジョンを攻略したかや、何かを習得したといった情報をダンジョン外では一切として話さないようにとサポーネは夏休みに入る前にクラスメイトに伝えていたのであった。

流石にクラスメイトも人間である以上は多少の情報が漏れるのは仕方ないが、それでもレイラが苦労したというくらいには情報の収集が面倒だったみたいなので情報封鎖は成功したと言えるだろう。


「それでも試合に影響を出したらアカンやろ」


「向こうは情報のない中で会議をやったはずだからそりゃ不安にもなるだろ」


なんせ全くと言って良い程2組の情報が無い中での会議のはずなのでちゃんとした作戦を組めなかっただろうしな。本来は試合が終わってから会議をするのが定石なのだが、あまりの情報の無さに思わずメンバーを集めて会議をしたのだろうな。


「アーバス、クロエ達が本陣に到着したで」


「そうみたいだな。ターニーが気付いていないことを見るにやっぱり本陣に何も用意してなさそうだな」


本陣に誰もいないことに気付いたクロエ達はそのまま本陣へと到達すると本陣へ攻撃を仕掛け始める。対してターニーはそんな本陣の様子を一切として気づいていないようで、前衛に司令を出して徐々に4組前衛を倒して優勢を作っていく。


「アーバス、ターニーは本陣の奇襲に気づくと思うか?」


「思わないな。仮に気づいたとしても手遅れの可能性が高いだろう」


アーバスみたいにフィールド全体を視ることができるのなら今回みたいな事態は避けられるのだが、そうでないのなら弱点に対しての補強はやっておいて損はないだろう。


「リンウェル、お前に必要かどうかわからないが試合直前にその先の試合の作戦会議はしないように。じゃないとこうなるぞ」


「こんなの見たら嫌でもわかるで。アーバスが試合前に他の作戦会議をしない理由がわかった気がしたわ」


実は団体戦の時に午後から試合があるにも関わらずリンウェルが午前中の翌日の作戦会議をしようとした時があったのである。その時のアーバスは試合に集中したいからと敢えて何も答えずにリンウェルの提案を断ったのだが、こういった理由があるからやらないだけであった。


「アーバスちなみにここから3組が勝つ方法ってあるんか?」


と試合が4組勝利に向かっていっているタイミングでリンウェルはそんなことを聞いてくる。恐らくターニーがこの非常に不味い状況に気付いたとしてどうやったら勝てるか気になっているのだろう。


「勝つには大将を倒すしかないが大将は4組本陣にいるからクロロトを単騎で本陣へ送り込むしか選択肢がないだろうな。それでも確実に勝てるとは言えないけどな」


代表戦では大将の位置は非公開になっているが対抗戦では公開されているからな。その4組の大将は本陣にいることになっているがこれはクロエに偽装したクラスメイトが1人本陣の前に立っているだけなのだが、これにより3組は不在のクロエが本陣にいると錯覚しているのであった。

そして、万が一このカラクリに気づいたとしても前衛の都合でクロロトを単騎で迎撃に向かわせるしかなく、向こうの大将が逃げ回ることからどっちが先に削り切るのかの勝負となるだろう。


「ちなみにこれがアーバスの立場やったらどうするんや?」


「そりゃ本陣を狙ってコソコソしているクロエを狙撃するに決まってるだろ」


さっきまでの作戦はあくまで3組の戦力を考えた時の結論であり、これが1組戦であれば間違いなく狙撃でクロエを退場させていただろう。他の連中もいるが、クロエさえ倒せれば奇襲は失敗な上に大将級の戦力が居なくなるので1組が大分有利に立ち回れるだろうしな。

そんな過程の話をしている間に4組が3組の本陣を削りきったようで3組の勝利でこの試合は終わったのであった。

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