43話 もう上級魔法!?
「サンダーレイン」
サーラが雷魔法を発動すると、雷は狙ったかのようにレインボーゴーレムへと向かい全て直撃する。
レインボーゴーレムは直撃に耐えられなかったのかそのまま光になって消えていく。
「流石だな。明日には上位魔法を試してもいいかもしれないな」
「もうそれくらいですか?早いですね」
サーラも驚いているが、サンダーレインを完全にコントロールすることが出来ているので、次の上級魔法への習得条件はほぼ満たしていると思っていいだろう。
ただ、今の階層がボス直前の14層目なこともあり、今から上級魔法の練習をするにしても中途半端に終わる時間なので明日からにしたほうが良いとアーバスは判断したのである。
「もう中級魔法を覚えたやと?」
「凄いわね。最速記録じゃないの?」
「だろうな」
「いえいえ。武器のお陰ですよ」
武器のお陰って武器以外の要素も絶対にあるだろ。
「サーラ、一旦雷刀を預かるから武器無しでやってみてくれ」
「わかりました」
アーバスはそう言って雷刀を回収する。この後、シエスに見せる必要があるからな。そして最短ルートで歩いていると、幸いすぐそこにレインボーゴーレムいた為直ぐにエンカウントしてくれた。
「リンウェル、左は任せた」
「了解や」
リンウェルに左のゴーレムを任せる。左のレインボーゴーレムは緑と青だったのでリンウェルに任せても問題ないだろう。右のレインボーゴーレムは左腕が茶色で右腕で赤色で雷属性の弱点はないが、サーラの魔法の習熟度と試すには丁度良いだろう。
「サーラ、場所は任せる。魔法はサンダーレインにしてくれ」
「わかりました。『サンダーレイン』」
レインボーゴーレムの上空から雷の雨がレインボーゴーレム目掛けて降り注ぐ。雷の雨は周りに散らばることなくレインボーゴーレムに全部命中する。レインボーゴーレムは倒れてはいないものの相当なダメージが入っただろう。所々に雷に打たれたような穴が空いており、そこから焦げたような煙が上がっていた。
「しっかりコントロールされてるな。次は半分当てて残りは周囲に落とすようにしてくれ」
「はい」
サーラはもう一度サンダーレインを発動される。また、頭上から放たれた雷は注文通り半分程はレインボーゴーレムに直撃し、もう半分は周囲にレインボーゴーレムを囲むように降り注いだ。
再びサンダーレインか直撃したレインボーゴーレムは流石に2発は耐えれなかったのか光になって消えていってしまった。
「もう消えたのか。思ったよりもHPが少なかったな」
「結構な数が当たりましたからね。むしろ良く耐えたほうじゃないですか?」
サーラがそう言うが、もうちょっと試す為に敢えて弱点属性のないレインボーゴーレムを選んだのに思ったより弱かったな。
「まぁ、コントロールも問題なさそうだし、中級魔法は完全に習得できたな」
「そうなのですね。何か実感がないです」
「そうだろうな」
他の中級魔法は使ってはいないが、サンダーレインのコントロールと比べたら簡単なので練習すれば直ぐに使えるだろう。それくらいレイン系統は中級の中でマスターするのが難しいのである。
「魔法の習得に喜ぶのは良いけどまだ戦ってるわよ」
「そう言ってももうすぐ終わるぞ」
魔法のマスターを確認している最中アミールからそんなことを言われる。リンウェルは確かに戦ってはいるが、もう慣れたもので終始優勢に戦っており、放おっておいても勝てるような状態だった。
ただ、完全に見てないわけではなく魔法でしっかりと観察しており、それで戦況を理解した上でサーラと会話をしていたのだ。
アーバスが返答して少しすると、残りのレインボーゴーレムと討伐されて宝箱がドロップしたのだ。
「お、宝箱がドロップしたな」
「久しぶりですね」
「そうね」
アーバス達はリンウェルの元へと移動する。リンウェルも宝箱がドロップしたので普段ならアーバス達の方へと戻ってくるのだが、宝箱の前でアーバス達が来るのを待っていたようだった。
「アーバス、サーラはどんな感じや?」
「中級魔法はマスターしたといって良いくらいだな。明日からは上級魔法の習得に行ってもらおうと思っている」
「流石やな。やけど習得が早すぎるんやないか?」
「俺もそう思うが、雷刀が思ったよりも優秀すぎるのかもしれないな」
「そっちかい。そんな属性剣聞いたことないで」
俺だって聞いたことないわ。これだけ優秀なら他の属性剣もドロップしてほしいところだけど、取ってくるのは俺なんだよなぁ。
「そうですね。私も火属性をマスターするのに2年はかかりましたからね」
「それも早くないか?普通はそんなに速く習得出来へんで」
普通に魔法を使いながらだと2年での習得はちょっと難しく、最低でも3年かそれ以上かかるのだ。2年という期間はむしろ異常だろう
「そうですか?あの時は覚えるのに必死でしたからね」
サーラは過去を思い返しながら答える。そんなに必死だったのか?聖属性なだけで十分だとおもうのだが
「私の家もアミールと同じで武闘派なんですよ」
「あー、何となくわかってしもたわ」
つまり、回復も大事だが1番は攻撃が出来ないといけないということか。聖属性に攻撃魔法はあるにはあるが、その種類が少なく、そもそも上位属性の魔法自体が殆ど認知されていないので聖属性の攻撃魔法を諦めて火属性の魔法を習得したということか。
「つまり、認めて貰う為に火属性を習得したのか」
「そうですね。そうじゃないと魔法学園の受験すら出来なさそうだったので」
「サーラのところも厳しいもんね」
アミール、それは厳しいじゃなくて見極めれてないだけだぞ。聖属性なんて数が少ないのにあれだけのバフをかけれるサーラに攻撃魔法が足りないとか脳筋すぎる。
聖属性は回復やバフがメインの属性であり、前線で回復役として居るだけで十分な存在なので、攻撃魔法なんて覚える必要はないのだ。覚えたとしても護身用で攻撃魔法を少し使える程度でいいのである。
サーラはそんなのも覚えなくてもバフや障壁も一流なので攻撃魔法は趣味程度で問題ないだろうが。
「サーラ、ちなみに聖属性の攻撃魔法は?」
「聖属性に攻撃魔法ってあるんですか!?」
サーラは聖属性の攻撃魔法の存在について知らなかったらしい。念の為に聞いてみたけどやっぱりか。
これは雷属性の上級魔法か聖属性の上級魔法どちらから習得させるか迷うな
「あるぞ。というか攻撃魔法なんて全属性にあるけどな」
「そうなのですか?私の見た本には上級魔法がない上位属性は結構ありましたよ」
どこの文献だよ。書いた人を処刑するレベルで間違っているぞ。いったいどうすれば上位属性の上級魔法がないなんて言い切れるのか不思議で仕方ない
「ちなみに聖属性と雷属性ならどっちを先に習得したいんだ?」
「雷属性ですかね。丁度練習していますからね」
「わかった。といっても明日からなんだけどな」
「ねぇ、私は?」
「アミールは感覚で覚えてるんだから必要ないだろ」
「ケチ」
アミールが少し拗ねる。それならどこまで使えるのかしっかり理解してくれ。それがわからないと教えようがないんだよ。
宝箱の中身を回収するとアーバスは次のマトを探しに行く。
「アーバス、レインボーゴーレム出てきたけど試し打ちするんか?」
「必要ないがサーラの練習の為にも1体はこっちに任せてくれ」
「了解や」
「サンダーレイン」
レインボーゴーレムを見つけるとリンウェルは雷弱点のあるレインボーゴーレムへと走っていく。その間にもサーラはサンダーレインを唱えており、もう1体のレインボーゴーレムに雷の雨を降らしていた。
先程まではサーラが雷弱点のレインボーゴーレムを担当していたので交代した形だな。それによりレインボーゴーレムが1撃で落ちることはなくなったが、代わりにリンウェルの討伐速度が速くなるのでさっきのことを考えるとこの方が討伐時間的に丁度いいだろう。
「やっぱりこっちは1撃では倒せないですね」
「結構削れてるとは思うがまだ威力が足りないな」
「バフを使った方がいいですかね」
「…いいぞ。ただ、今は勿体ないから次からな」
サーラにはスペシャルアップがあるが、雷魔法の練習の為に使っていなかったのだ。アーバスは使うかどうか少し悩んだが、既にサンダーレインを習得済なことも踏まえて許可を出したのだ。
「はい。他の属性も使った方がいいですかね」
「そうだな。感覚は覚えておいた方がいいかもな」
「わかりました。ヘルファイア」
サンダーレインでダメージを与えていたレインボーゴーレムが爆発して散っていく。右腕が茶色だったので弱点属性の火属性で攻撃したのだ。結果オーバーダメージとなってレインボーゴーレムは爆発四散したのである。
「やっぱり雷魔法も良いですけど、火魔法を豪快でいいですね」
「豪快ってな」
もしかしてそれで火属性を選んだんじゃないだろうな。覚え方は人それぞれだが、そんな理由で覚えたのなら逆に凄いな
「リンウェルも終わったみたいですね」
横を見るとリンウェルがレインボーゴーレムを倒して戻ってくる途中だった。宝箱はドロップしなかったようだが、得意属性とあって倒す速度が早いな
「終わったで」
「お疲れ様。次はボス戦だから階段の広間で一時休憩しようか」
「もう階段なのですか!?」
サーラがもう階段が近いことに驚く。だって階段が左側にあるのでここかだと死角になっているだけでそこの角を左に曲がったから階段だしな。
「立ち話もあれだし先に移動しようか」
アーバス達はモンスターがやって来る前に階段の途中にある広間へと移動するのだった。