42話 宝箱を開けよう
「そろそろ宝箱を開けて先に進むぞ」
「そうですね。あまりゆっくりするのは良くないですからね」
今は遅れを取り戻したとはいえ、時間に余裕があるわけではないからな。あまりゆっくりしすぎると今日中の攻略が難しくなるだろう。そういう話はまた時間がある時だな。
「宝箱。やっと開けれるのね」
アミールがいきなり笑顔になって話かけてくる。やっとって前回の宝箱からそこまで時間は経ってないだろうに
「復活したな」
「そうですね。ちょっと怒りすぎましたね」
アミールの復活ぶりをみてサーラは怒り過ぎたのを反省しているらしい。本当にいったい何を言ったんだよ。
「見てなさい。とびっきり良いのを引き当てるからね」
「それはハズレが出るからやめておけ」
「なんでよ」
そうやって物欲のあるヤツ程ハズレを引くんだよな。物欲センサーって言うんだっけか?
「そうですよアミール。開けるなら無欲で開けないと駄目ですよ」
「サーラまで。そんなの関係なく引いてやるんだから」
アミールはそんなの関係なく開けるらしい。迷信を信じないと言うか怖い物知らずと言うか、度胸は凄いあるな。
「さーて、開けるわよ」
アミールは勢い良く宝箱を開けるとそのまま中にあるものを取り出した。
「見て、ブレスレットよ」
「また、良いのが出ましたね。」
「問題はスキルだけどな」
どうやらブレスレットを引き当てたようだ。大事なのはスキルなのでまずは鑑定だな。アーバスはブレスレットを鑑定にかけるとそこにあるスキルを読み上げる。
「ダメージ上昇8%か」
「やったわ。大当たりじゃない」
「そうですね。中級品ですが、スキルは大当たりですね」
中身のブレスレットは武器の方だったみたいで攻撃倍率がついており、8%となると中級品になるのでレベル8からドロップする装備としては大当たりすぎる性能を誇っている。
「そうやな。売っても結構いい値段するで」
「売らないわよ」
大騒ぎしている3人を見ながらアーバスは何とも言えない表情をしていた。理由は簡単でエクストリームで非常識の高倍率を見ているので8%という倍率を低く感じてしまっているのである。
確かに売ればそこそこの額になるし、15%が最高級品なのも知っているのでスキルも相まって喜ぶのは間違いないだろうが、このパーセンテージで喜べない自分を見て感覚が狂って来ているなと思ってしまう。
(ハードの連中もこんな感覚なのだろうな)
ハードのドロップの旨さを知ってしまったら例え実力が足りていなくてもノーマルに戻れないんだろうなぁ。
アーバスはハードの連中とは違って実力でも問題なくエクストリームを攻略出来ているので問題はないがいずれ詰む可能性はあるので気をつけないといけないな。
「ところでアーバスは宝箱を開けないんか?」
「ん?時々開けてるから問題ないぞ」
リンウェルは宝箱を開けないのかと質問をされたのだが、エクストリームで宝箱を開けているから開けたい欲はないな。
ノーマルで倒してしいるモンスターはアミール達が対処できないモンスターなので宝箱からドロップするものもそれなりのものだしな。それにノーマルのモンスター相手なら装飾品が無くても倒す分には問題ないだろう。
「それは無欲すぎんか?それとも最高級品クラスの装飾品でも持ってるんか?」
「そんなもの持ってる訳無いだろ。別に持って無くても底上げはできるしな」
実際はエクストリーム級の生産した装飾品がそこそこあるんだけどな。これはジョーカーとしての任務の時に使うので普段はアイテムボックスに閉まっていて使うことはないけどな。
装備して戦えないことはないが、明らかにオーバースペックなのと装備しすぎるとジョーカーとバレる可能性があるので極力装備せずに攻略するつもりだ。
それにバフで能力を上げた方が装飾品よりダメージが出るからな。ダメージ8%の装飾品よりもスペシャルアップ1つ使う方がダメージが出るんだよなぁ
「確かに下手な装飾品よりもバフの方が強いんやけど、そこから更に火力が上昇できるんやで」
「まぁドロップがあれば使ってみるかな」
装飾品のバフは補助の魔法と違って魔力は消費しなくて良いし補助のバフから更に上昇補正がかかるから持っていて損は一切ないんだけどな。ただ、1桁のアップが中級品なことを考えると値段の割に倍率が低いので必須で集めないといけないとは考えていないのである。
ただ、今のところ使えるドロップは今装備しているレア度+1のネックレスのみで他は装飾品をドロップしていないので一切装飾品をつけていないのだ。だから勧められても仕方ない状況にあるのかもしれないな。
でも、スーパーレインボーゴーレムが何レベルで出てくるかはわからないが、そこまでは装飾品が無くても問題なく戦えそうだな。ただ、そこまで行くまでにアミール達が倒せるくらいに実力をつけて貰う必要があるけどな。
「本当やな。なら次のボス戦はアーバスに任せたで」
「おい。なんでそうなる」
次のボスって最下層じゃねぇか。さては戦いたくないから理由をつけたな。最下層のモンスターは強い分入ってくる魔力は多いので自力で倒して欲しいんだけど。
ただ、そんなアーバスと違って残りの二人の反応はアーバスの想像と違うものだった。
「そうね。たまにはアーバスでもいいかもね」
「そうですね。装飾品も少ないですし、この際良いのをドロップしたらいいですね」
アミールとサーラもこれである。アーバスはこめかみを少し押さえると軽く息を吐き出して
「お前らのレベルアップはどうなる。一応言っておくが、俺に任されてもお前らの腕は上がらないからな」
「いいじゃない1回くらい」
「1回くらいってな」
その1回が重要だろうに、それにさっきスーパーレインボーゴーレムと道中のゴーレムを倒したところだろ。
アーバスは少し考えるが道中はともかくボス戦しかも最奥となるとやっぱり得られるものより失う方が大きな
「その話はなしだ。予定通り次のボス戦もアミールとリンウェルでいくぞ」
「えー。楽出来ると思ったんやけどな」
「それにボス戦はさっき見せただろ」
やっぱりリンウェルは楽したかっただけか。アミールはそんなことを考えてないと思うけどな。単純にさっきのスーパーレインボーゴーレムとの戦闘を忘れているだけだろう。サーラは2人に乗っかっただけか
「じゃあ道中は?1層くらいやってくれてもいいじゃない?」
「それも下層だとなしだな。上層なら1層くらい手伝ってもいいけどな」
今大事なのはアミール達の魔力の増強だ。アミールはそこそこ魔力はあるが、リンウェルやサーラはまだまだ足りない領域だしな。
魔力は容量が増えるとそれに比例して使える魔力量が増えていくのである。特にサーラの場合は1回に使える魔力が実力と比べて足りていないので特に魔力を増やす必要があるからな。
「じゃあ何時になったら私達と戦闘に参加してくれるの?」
アミールがそんなことを聞いてくる。一緒に戦いたいといってもレベルが違いすぎて今はまだ無理だな。仮に戦い一緒に戦えるレベルとなるとそうだな
「せめてハードになってからかな」
「ハードね…」
エクストリームしか行ってないからハードのことはわからないが、ハードまで行ったら流石にサーラの補助だけでは足りなくなる可能性があるのでアーバスが補助または戦闘に参加する必要が出てくるだろう。
ただ、まだ1年の入学したてなのでそこまでいくのにどれだけ順調に行っても1年はかかるだろう。
「わかった。頑張ってハードまでいくわ」
「行けるのか?結構過酷だぞ」
「行くのよ。ダンジョンの攻略レベルが上がれば勝手にハードに行けるでしょ」
アミールがどういう気持ちで言っているかはわからないが、少なくともハードのことをただのダンジョンの攻略レベル上げのついでにしか思ってないな。
「そうだな。せいぜい頑張るんだな」
どうせ卒業までこいつらとダンジョンに潜るんだしのんびり成長を待ってもいいだろう。
「じゃあ先へ進みしょうか」
「そうだな。時間もそこまで余裕がある訳じゃないからな」
「そうですね」
アーバス達は次の階層へと進んでいったのだっだ。