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403話 実家からの呼び出し

日曜日、本来ならアーバス達はダンジョン棟へと行くはずなのだが、今日はダンジョン棟にその姿は無かった。


「朝から呼び出してごめんなさいね」


呼びつけたのはこの学園の主であるシエスである。昨日は土曜日だったこともあり、アーバスはシエスから何も事情を聞いていないのでいきなり呼び出されて何事かと思ってしまう。


「学園長、依頼ですか?」


とアーバスはシエスに質問する。アーバスが聞いていない話しで急な呼び出しとなれば依頼絡みだろうと予想したのである。


「依頼ではありません。といってもアーバスは関係ありませんが」


といってシエスはアーバスから視線を外して3人の方を見ると3人はバツが悪そうに視線を逸らす。その良くわからない行動にアーバスは首を傾げる。


「あなた達、実家の帰省の呼び出しを無視していますね?」


とシエスは強い口調で言う。そういえば夏休みか始まる前に全員実家へ帰る為に調整していたと言っていたが、それっきり何も音沙汰が無かったな。


「えっと、それは調整中で‥‥‥」


「何を言っても無駄ですよ。あなた達の実家から私の元へ直接抗議文が届いています」


「‥‥‥」


とアミールが言い訳するが、シエスが取り出した家紋付きの手紙3通を見て3人は黙り込んでしまう。


「そういう訳で3人には今日から3日間の帰省を強制致します」


とシエスは3人に向かって宣言する。学園的には抗議文まで届いた以上は強制的に実家へ返さないといけないと思ったのだろう。


「シエス、それはやり過ぎじゃないか?」


と抵抗出来ない3人に代わってアーバスが抗議する。アーバスは単純にやり過ぎだと思ったのではなく、強制的に実家へと帰らす意図が何なのかが、理解していなかったのである。


「やり過ぎではありません。学園の為の資金を出してもらっている以上、長期休みの際に実家に顔を出すのは当然だと思いますが?」


というシエスの意見は全うで、実家からの資金を受けてここへ通わして貰っている以上、長期休みの際の呼び出しに応じなければいけないのは当然なのであるのだが


「ダンジョンも学業だから手出しはさせないといった学園長が言うセリフかそれか。残念だな」


「ちょっとそれは今関係ないでしょ」


とアーバスはため息に似た言い方でシエスに言う。以前シエスはリリファスに学業を盾にして学園へ通っている間はジョーカーとしての活動をさせないと宣言していたのである。それをアーバスに掘り返され思わずシエスは素の口調でアーバスへ言い返す。


「コホン。でも、そうも言ってられないのですよ。アーバス、中身を見て下さい」


とアーバスは3つの封筒をアーバスへと渡す。恐らく読めといったところだろう。アーバスはアミールの家の手紙から順番に手紙を読んでいく。


「うん。これはお前らが悪いな」


アーバスは手紙の全てを読み終えると即答で3人に向けて言う。アーバスも最初は別にそこまで帰らないといけない程かと疑問に思っていたが、手紙の内容を見た瞬間にこれは帰省させないとヤバいと直感が囁くほどであった。


「そ、そんなにヤバいの?」


「あぁ。俺でも今すぐに帰った方がいいと思ったくらいだからな」


とアミールが怯えながらそんなことを聞いてくる。アーバスは一度アミールの父親である領主と依頼で会っているが、兄と違ってとても温厚そうに感じていたのだが、手紙の内容から見るに相当怒ってそうな感じだったからな。


「ということで、今日のダンジョン攻略は中止だ。俺が送ってやるから今すぐに寮に戻って帰省の支度をしてくれ。支度が出来たら学園の入口で待つように」


アーバスはそう言うと強制に3人を寮へと帰らせる。3人共半分嫌嫌といった感じで校長室から出ていきそれぞれ帰省の為の準備を始めるのだろう。というかどれだけ帰りたくないんだよ。


「シエス、これで良いんだな」


「はい。ごめんなさいねアーバス」


3人の実家からの手紙の中にシエスから伝言が挟まっており、アーバスはその指示の元3人を実家へと帰省させるように言ったのである。手紙を読んだ感じではアミールとサーラの家については2人が帰省すると言っているにも関わらず、帰省の日にちの段取りが進んでいないことについての問い合わせのうな手紙だったので、本人達というよりかは学園への不満のように受け取れた。

ただ、リンウェルの方だけは別で手紙から領主がリンウェルと学園両方に対して怒っているのが見て取れたのであった。アーバスとしては何をしたんだとリンウェルに対して思ってしまうが、リンウェルは実家に対してそこまで良く思っていないことを思い出したのできっと実家へ適当に返事していた結果だろう。


「で、何故こういうことになるまで放っておいたのですか?」


「調整は本人達に任せていたからな。まさか進んでいないとは思っていなかっただけだ」


アーバスは事前に3人が帰省することを聞いていたので帰省が決まればその間はダンジョン攻略を中止してトゥールのことをやろうとしたつもりだったからな。それなのに一向にアミール達の帰省が決まらないのでアーバスは諦めてレイラにお願いしたからな。


「アーバス、ダンジョン攻略をやり過ぎたのではないですか?」


「それはないぞ。ちゃんとパーティー内で話し合って決めたしな」


なんせ夏休みの配分はアーバスが決めた訳ではないからな。アーバスの個人的な意見を入れるのだったらもう1日ダンジョン攻略の日を減らして自由な時間を作るつもりだったしな。


「次からはちゃんと帰省する日を入れてくださいよ」


「わかった。事前に設定しておくことにする」


今回のことでアミール達に任せていても一向に帰省が進まないことがわかったしな。次からは予定を決める際に予め帰省する日を設定しておいた方がいいだろう。


「というか何故3日も設定したんだ?1日あれば十分だろ」


とアーバスは帰省する日が3日もあることに疑問を感じてしまう。なんせ実家に帰るのは基本的には顔見せという意味合いが大きいので日帰りで十分であるとアーバスは思っているのである。夕飯を食べてから帰るにしても転移であれば問題なくその日に帰って来るし、ゆっくり泊まるにしても次の日に帰れば問題ないだろう。


「別に日帰りでも問題ないですよ。3日間に設定したのは休息を取らせたいだけです」


どうやら実家へ帰るというのは顔見せだけでなく休息を取らせるのが目的みたいだ。確かにアーバス達はずっとダンジョンや依頼漬けの毎日を送っているおり、休息の日は全くといっていい程ないからな。


「さてと、そろそろと支度を始めますか」


とシエスは何処かへ行く準備を始める。どうやらこれから何処かへ行くようであるが、シエスがタポリスの外へ行くなんて凄い珍しいな


「アーバス、何をぼーっとしているのですか、支度をしますよ」


「俺もか?」


どうやらアーバスも対象らしい。アーバスは帰省の話がないのでこの間に何処かへ行くという話がないのだが、一体どういった理由なのだろうか。


「はい。ちなみに強制参加ですので拒否権はありせんよ」


どうやら強制参加なようである。アーバスてしてはこのままでもいいのだが、シエスが私服を選び始めている辺り学生服で行くのはよろしくないのだろう。


「わかった。ちょっと家へと戻って準備してくるから待っててくれないか?」


「わかりました。入口で待っていますね」


アーバスは急遽準備の為に拠点へと戻るのであった。

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