39話 イレギュラーモンスター
「やぁっ」
慣れた手付きで、また1体ゴーレムが光に還っていく。アミールは光になった瞬間に次のゴーレムへとターゲットを移す。
「順調だな」
「そうですね」
現在は8層目で時刻はあれから1時間弱くらい経っており、次の階層までは後少しといった状況である。道中は5層目にいたゴーレム達であり、アミールとリンウェルは得意属性を優先的に倒して倒した後は残りのゴーレムを近い順番から倒しながら進んでいたのである。
「このままいけば15時迄に10層目に間に合いそうだな」
「ですね。さっきの階層の階段が近くて助かりましたね」
5層目クリア時点では30分程遅れていた攻略が、7層目の階段が近かったことで昨日と同じくらいの時間のペースになったので今日中に攻略出来そうなペースに戻って来たのだ。これは運に感謝するしかないな。
「お、階段が見えてきたな」
「そうですね」
アミール達がゴーレムを倒して角を曲がって少しすると次の階層への階段が出てきた。周りにモンスターは居ないので見つかる前に階段へと入っていく。
「リンウェル、アミール魔力は大丈夫か?」
階層毎にではあるが、アーバスはこうやって魔力残量を聞いて確認しているのである。なんせ1階層で思っていたよりも消耗することがあるからな。それに今の階層は2人が苦手な茶色のゴーレムが多かったからな。
「私は大丈夫よ。この調子だと最下層まで問題なさそうね」
「うちも魔力残量はまだ問題ないんやが、最下層まで持つかはわからんな」
リンウェルの魔力が少し怪しいか。なら10層目を超えた辺りの魔力残量次第で多めに休憩させないといけないかもな。
そう考えながら9層目に入って索敵魔法で階層の様子を探った時だった。
「お?」
「アーバスどうしたの?」
索敵であからさまに強い反応があった為、アーバスが声を出すとアミールがそれに反応する。
「1体強そうなのがいるな」
「えっ、そうなの?」
「それは回避して通るしかないですね」
「いや。場所的に避けて通るのは難しいな」
場所は次の階層へのある階層付近であり、場所的に避けて階段へ通るのが難しそうであった。アーバスだけなら問題なくスルーすることが出来るが、アミール達全員を回避させるのは厳しそうだ。
「そんなんどうするんや?」
「いいじゃない。腕がなるわね」
リンウェルは絶望していたが、アミールは倒す気満々だ。どっからその自信が出てくるんだよ。
「やめとけ。サーラのバフ込みでも負けるぞ」
強さを見るにサーラのバフ込みでも押し負けるだろう。秒殺ではないがリンウェルと一緒に戦ってもまだ不利だろう。
「それってアーバスじゃないと倒せないってこと」
「あぁ、そうだな。今回は我慢してくれ」
「むー」
倒せる範囲ならアミール達に任せるのだが、やっぱりイレギュラーモンスターは厄介で、アミール達で対処出来るモンスターが全然出てこないな。その対処出来たモンスターもスライムキングだけで、あれも障壁で防げたからサーラが倒すことが出来たのだが、障壁が甘くて貫通していたら全滅していたな。
「そんで、どれくらい強いんや」
「そうですね。確かに気になりますね」
リンウェルとサーラが強さについて聞いてくる。探知しているのは魔力量なだけであってどのモンスターまでかは近づくまでは特定出来ないんだよなぁ。
「モンスターが何なのかはわからないが、この魔力量だとAクラスの上位個体じゃないかな」
Sクラスの可能性もあるが、反応している魔力量的にはSクラス寄りのAクラスである可能性が高いな。ゴーレム系でそのクラスのモンスターは1体しか居ないが、ゴーレム以外の可能性もあるから詳細までわかるまでは放置かな
「そこまでわかるなんでどないなってんや?」
「それって普通の排斥よりも優秀ですよね」
メルファスの頃は最初の頃は排斥を連れて行くことはあったが、排斥の訓練を始めてからは連れて行ってないから自身の排斥のレベルについては詳しくはわからないんだよな
「普通はどれくらいからわからないが、そこらの排斥よりかは優秀なのは確かだぞ」
メルファスにはアーバスより優秀な排斥はいるらしいが、それも数人だけとリリファスから聞いたことがある。なのでメルファス内でも相当上位に当たるのだからそこらの排斥より優秀なのは見なくてもわかるのだ。
「階段の近くまではこれまで通りリンウェルとアミールに任せる。もし、そいつが来るようなら前衛交代だな」
「わかったわ」
「了解や」
「じゃあ先へ進もうか」
今のところは周囲をウロウロしているだけだが、何かを察知してこちらへ移動してくることは考えられるからな。その為に事前に打ち合わせだけはしておく。打ち合わせしていてもその通りに動けないこともあるしな。
「今のところは来ませんね」
「そうだな。いきなり来るのも困るけどな」
道中のゴーレム達はアミールとリンウェルに任せて先に進んでいく。例のモンスターは今のところは特に行動範囲から出ることはなく行動しているようだった。
「アーバス的にはこのまま来てくれない方が助かるのですか?」
「その方が被害も出にくいし、モンスターを倒せる数も増えるからな」
最悪のパターンは戦闘中に乱入してくることか。そうなったら他のゴーレムとも戦う必要もあるし、何よりターゲットがアミールやリンウェルに向いてる状態で戦闘になる可能性が出てくるのだ。
通常ならモンスターのターゲットは与えたダメージがメインでその他には行動パターンなどによってきまるのだが、乱入してきた時はアミールやリンウェルがモンスターに攻撃している関係上ヘイトがそっちに向く可能性がある。
その場合はアーバスがダメージを稼いでターゲットを変えさせる必要がでてくるので、短時間に大量のダメージを与えて強制的に変えさせないといけないのである。
「もしそうなりそうになったらどうするのですか?」
サーラがそんなことを聞いてくるが、アーバスの答えは1つだった。
「そんなの乱入される前に戦闘を終わらせるに決まってるだろ」
幸い戦闘しているのはゴーレムなので魔力弾一発で倒すことができる。その為、ダメージ量などのヘイトでのターゲットが向かれることはほぼないだろう。
「アミール、リンウェル。そろそろ下がってくれ」
「そろそろなんやな」
「そうだ。それに乱入されるのも面倒だしな」
そろそろ階段へと近づいて来たのでアミールとリンウェルをサーラと同じ場所まで下げる。属性ゴーレムは後1戦残っているのだが、乱入されることを警戒して事前に2人には下がってもらうことにした。リンウェルは問題ないだろうが、アミールの場合はそのまま戦いそうだしな。
アーバスは先頭を交代して歩くとゴーレムが3体出てきた。色は赤が2体と緑が1体でアーバスは魔法陣を2つ展開し、魔力弾にそれぞれ水属性と地属性を付与してそれぞれに弱点であるゴーレムへ向けて放つ。
射出されは魔力弾は亜音速でゴーレムへ飛んでいくと、勢いと弱点も合わさって一撃でゴーレム達を粉砕していった。
「アーバス1人で攻略出来るんちゃうんか…」
リンウェルは小声てそんなことを呟いていた。アーバスはその小声は聞こえてはいたが、そんなことは無視して集中する。
(やっぱり来たか)
ゴーレム達と戦闘に入って直ぐに例のモンスターがこちらへ向けて高速で移動し始めたのだ。アミールとリンウェルに任せていたら確実に乱入されていたな。
この場所は階段よりかは少し遠いがイレギュラーモンスターのテリトリーに入っていても不思議ではない場所なので予想がある程度的中した形だな。
(予想は合ってたか)
モンスターを確認すると、それは1体のゴーレムであるが、身体は虹色で右手は赤、左手は青、右足は緑、左足は茶色となっていた。
「これってもしかしてスーパーレインボーゴーレムですか?」
「あぁ。そうだな」
「Aランク最上位モンスターやんけ」
このスーパーレインボーゴーレムは四肢が各色の弱点でそれを狙って攻撃を当てて倒すというモンスターである。ただ、普通のゴーレムと違って壊した傍から即時再生されるのだが、弱点があって全ての部位をほぼ同時に破壊すると一定時間の間、再生が出来ないという特性を持っている。
更に各部位には得意属性の無効化という厄介な効果があり、これにより1つの属性しか使えない人間は戦うことが出来ないようになっており、Aクラス冒険者であっても1つの属性しか使えない冒険者は受けることが出来ないモンスターなのである。
ちなみに外の世界ではHPという概念が無いのでその凶悪さからAランク最上位のモンスターである。
「これはアミールや私では太刀打ち出来ないですね」
「そうね。コイツとの相性が最悪なことぐらい私でもわかるわ」
「これは厳しいやろうな」
アミールは氷属性の1属性しか扱えないので左手を破壊することが不可能なので倒すことが出来ず、サーラの場合は魔法という性質上、次の魔法を発動するまでに時間がかかり、その間にスーパーレインボーゴーレムの再生がまにあってしまうので倒すことは不可能だな。リンウェルが複数の属性が使えたらまだ可能性はあるが、ゴーレム相手に雷属性を使っていた辺りリンウェルも1属性しか使えなそうなんだよなぁ
「でも、倒し方を知ってると案外簡単なんだよなぁ」
アーバスはそういうと魔法陣を展開させて、そこから魔力弾を発射する。魔力弾は5発連続して亜音速で飛んでいき、まずは両足を破壊するとそれと同時に両手を破壊する。最後に胴体に魔力はが直撃したと同時にスーパーレインボーゴーレムが弾きとんでスーパーレインボーゴーレムが居ただろうその場所には宝箱が落ちていたのである。