382話 ダンジョンアタックを終えて
「お疲れ様でした。今から集計を行いますのでこちらの控え室で待機しておいて下さいね」
エルペスと戦闘した時点で制限時間となっていたようでアーバス達は戦闘が終わると余韻に浸る前に強制的に転移陣で地上へと戻されたのである。地上へ戻るとアーバス達の帰りを待っていたのかカイン先生が立っており、パーティー毎に用意された控え室へとアーバス達を連れて行ったのであった。
「アーバス、お疲れ様。何とか終わったわね」
「そうだけど、あれでクリア出来ているのか?」
アミールからお疲れと言われるが、アーバスはどちらかというとAランクダンジョンをクリア出来ているかの方が心配であった。制限時間に余裕がないことはわかっていたのでアミールが無理だとわかった時点でアーバスが戦闘を交代した上に高火力の魔法戦で短期決着を決めにいったのである。それでも、制限時間を超過してしまったようで、アーバス達が30層目の階段の降りたところにある転移陣で帰る前に地上へと戻ってきてしまったのである。
「普通のダンジョンやとクリア扱いでしょうけどリンウェルは何かしっていますか?」
「ウチもそこまでの現象に立ち会ったことがないから知らんわ」
サーラが言うように普通のダンジョンであればボスを倒した時点でその階層は攻略扱いで、最下層の場合は攻略済となるのであるが、今回はダンジョンアタックなのである。最奥の転移陣で帰還しなかったから階層クリアだけでダンジョンのクリア扱いになってないと言われるかもしれないからな。ダンジョンアタックを知っているリンウェルもどうやらこの現象に当たったことはないそうで、どのような扱いになるのかは知らないようである。シエスから貰った資料にも何も書いてなかったので、こういったことは想定されていないか当然だから書いていないかのどちらかであろう。
「アーバス、どうしてそんなにクリアしているかどうか気になるのですか?」
「そりゃ追加報酬が貰えるかどうかの瀬戸際だからな。気にするに決まっているだろ」
なんせ今回シエスから引き出した追加報酬はダンジョンをクリアしないと意味のないものだからな。一応取れなかったところでそこまで痛くはないもののの、折角手の届く場所にあるのだからどうせなら取って置きたいんだよな。
「ところで追加報酬って何だったのですか?私達は何も聞いていませんが」
「そうよ。終わったのだから教えなさいよ」
「クリアしていたら学園長が後から教えてくれるから我慢してくれ」
とアミールとサーラは追加報酬の内容を聞いてくる。アーバスもダンジョンアタックが終わったので教えてもいいんじゃないかと思うのだが、それも駄目とシエスから言われているからな。余程サプライズにしたいと思っているみたいだが、アーバスにとってはサプライズにする程か?という内容なんだけどな。
「ちなみになのですが他のパーティーは戻って来ているのですか?」
「いや、後2パーティー程帰ってきてないな。結果発表はその2パーティーの点数が判明してからだろう」
アーバスが索敵で確認するとまだ帰ってきていないパーティーはクイケラさんとユズリハのパーティーのようだな。アーバス達が30層をボスを倒し終わった時点で制限時間が来て即帰還となったので、帰ってきていない2パーティーはまだボス戦をしているということになる。
(テリーヌ先輩相当頑張ったんだな)
テリーヌ先輩は既に帰ってきていたみたいなのだが、その様子は満足そうであり、無事に5層目以上に辿り着いたようだな。昨日時点では4層目まで行けたら十分とか言っていたのに5層目以降へ行けたなんて相当な奇跡と言っていいだろう。
「アーバス、私達の点数ってわかるのかしら?」
「詳細は点数まではわからないな。なんせ最下層の点数がわからないからな」
「ならそれ以外でいいわ。わかる範囲の点数を出して頂戴」
どうやら待ち時間なこともあってか暇になったアミールはアーバスに現時点の点数が何点かを聞いてくる。なんせ30層目のボスを倒したが、クリア扱いになっているかどうかわからない上に最後の白金の聖天使エルペスがイレギュラーボスモンスターだったので何ポイント入るのかがわからない状態なのだからな。ただ、アミールはそれを抜いた数値でも興味があるようで、アーバスは事前に聞いていた得点の計算方法で計算するとアミール達に見せる。
「21250ポイント?」
「は?何やそのポイントは!?」
アミールはそこに書かれた点数を疑問符を付けながら読み上げる。アミールにとってはそこに書かれたポイントが多いのか少ないのか良くわからなかったみたいだったが、ダンジョンアタックの優勝のボーダーをある程度知っているリンウェルにとってはその規格外の数字を聞いて非常に驚く。
「リンウェル、これって多いの?」
「当たり前やろ。優勝のボーダーか3000ポイント前後やで。それの7倍とか異次元にも程があるやろ」
何もわかっていないアミールにリンウェルはその点数がいかにもおかしい点数かを説明する。なんせ最下層のポイントを抜いているのにも関わらずその点数だからな。アミールが理解していないのは最初にボーダーの話をした時に前衛で戦っていたから聞けてないんだよな。というかここに最下層の点数が加わるとどんな点数になるんだろうな。
「アーバス、私の記憶とモンスターの討伐ポイントがズレているのは気の所為ですか?」
「それは俺が残ったモンスターを全て倒しているからだな」
サーラが自分達が倒してきたモンスターの討伐数とポイントが合わないことに気付いたのかそんなことを言ってくるのだが、アーバスは悪びれる様子もなくサーラに教える。まさかアーバスが残ったモンスターを全て狩っていたとは思わないよな。
「ダンジョンのモンスターを全て狩ったとかパーフェクトやないんか?」
「Aランクでならそうだろうな」
一応隠し扉の先の モンスターは倒していないからパーフェクトかと言われると微妙なところなのだが、隠し扉を除いた通常の攻略というのなら取りこぼしがない完璧なダンジョンアタックだっただろう。
「もしかしてこの点数を越えられることってないんじゃないの?」
「一応Sランクダンジョンを攻略している2パーティーなら可能だが、多分足りていないだろうな」
アーバス達のパーティーの点数を抜ける可能性があるとすればテリーヌ先輩とユズリハのパーティーだが、その2つのパーティーも10層まで攻略出来ていないだろうから点数が足りなさそうだしな。
「というか、普通に攻略しているだけでこの点数って相当異常よね?」
「やっと異常なことに気付いたんか?」
「異常って普通に攻略しているだけだろ。皆が遅すぎるだけだ」
とアーバスが言うと何やら言いたげにリンウェルが見てくるが、アーバスはその目に対して厳しめの目線を向けるとリンウェルは目を逸らすのであった。
「アーバス、こう言うのは良くないですがやはり索敵が広すぎるのですよ」
「そうでもない。ただ、魔法学園は戦闘できなければどれだけ優秀な排斥であっても落とされるのが原因だな」
戦闘出来る排斥という現実的にあり得ない組み合わせにアーバスが自分で言いながら無茶を言うなと思ってしまう。なんせ排斥というのは索敵が仕事なので戦闘することは想定されていないからな。それなのに戦闘を要求してくる魔法学園は本職が排斥の人からすれば絶対に受からないのでこっちからお断り状態だからな。アーバスがもし排斥しか出来ないとしたらギルドで排斥の依頼ばっかり請け負って魔法学園には行かないだろうからな。
「お待たせしました。結果発表の用意が出来ましたのでついてきて下さいね」
どうやら全パーティー戻ってきたようでアーバス達はカイン先生に呼ばれて講堂へと移動するのであった。




