377話 夜の結果
「アーバス様、おはようございます」
ルーファとのんびり朝食を食べていると調査を終えたレイラがやって来たのである。アーバスは事前に用意していたレイラの分を出すとレイラはルーファの隣に座って一緒に朝食を食べだす。
「レイラおはよう。情報は集まったか?」
「はい。想定よりかは質の良い情報が集まっであります」
どうやら思っていたより良い情報を集めれたみたいでレイラは情報を纏めた資料をルーファとアーバスに配る。
「まずはアーバス様が気にしておられた情報の漏洩ですが、こちらはありませんでした。会って会話していたのもアミールさんとサーラさんだけでダンジョンアタックの会話は一切としていなかったであります」
どうやら誰もダンジョンアタックのことは話題にすら挙げてなかったようだな。アミールとサーラは放課後に良く話をしているのと聞いていたが、そこでもダンジョンアタックの話題を出さないとは徹底しているな。
「逆に他の学魔法園は翌日の攻略の相談をしているパーティーが多かったであります。ただ、話を聞く限り3層目をクリアしているパーティーが最速でありますね」
どうやら他のパーティーは今日の攻略の為の打ち合わせをしていたようで、資料を確認すると他の学園のパーティーの進行度は全て把握済みとなっているみたいだな。その中で1番進んでいるのはユズリハのパーティーで、昨日は3層目をクリアしたところでダンジョンを離脱したようである。しかもレアモンスターも2体倒しているそうで、レアモンスターのポイントと進行度を併せると暫定2位のポイントとのことである。
そして、3位だが、ガーロスのクイケラ先輩のパーティーでこちらは2層目を攻略したところで終わったみたいだな。レアモンスターは倒していないが、Aランクダンジョンなことと2番目に進んでいるということでポイントのアドバンテージで有利そうだな。
「そして各パーティーの到達目標ですが、クイケラさんは5層目のボスをユズリハさんは6層目をそれ以外の方は4層目の攻略を目標に2日目を挑む予定でありますね」
「やっぱりそこが基準になるのか」
初日がイレギュラーモンスターで退場したパーティーが多かったのもあって無事に1層目を通過出来たパーティー以外は4層目の攻略を目標に挑むみたいだな。アーバスとしてはテリーヌ先輩同様もう少し先へ進めるのではと思ってしまうのだが、排斥をパーティーに入れれてないようで彷徨いながらの攻略なので厳しそうだな。
「そうですね。ダンジョン攻略には排斥よりも継続戦闘能力を重視するパーティーは多いですからね」
「それと排斥の質の悪さも問題で、ダンジョン1層を丸々俯瞰できる程の人物がいないのも大きいでありますね」
「戦闘能力が無くても排斥を学園に入れたらいいのにな」
「枠の都合がありますからね。仕方がないことだと思いますよ」
他のパーティーの排斥の能力を確認してはいないが、魔法学園は戦闘を重視する為か排斥は実力がなければ評価されることはないからな。仮に半径が1キロ以上の索敵範囲を持つ排斥が入学を希望したとしてもEランク冒険者程度の戦闘能力が無ければDクラス、あるいは不合格となってしまうからな。
アーバスとしてはそんな人材を不合格としてしまうのは勿体ないと思っているのだが、ダンジョン攻略をパーティーで行うせいで排斥を入れる場所が無いそうだ。その為、どれだけ優秀であってもパーティーで活躍出来る場がないので落とさざるを得ないそうだ。
そしてそれはセーティスだけではなく他の魔法学園も同様のようで、結果的に慢性的な排斥不足となっているようである。
「ところで、ファルフォスとツオークはどうして進んでないんだ?」
アーバスが資料を見るとファルフォスとツオークはどちらも1層目止まりのようで、普段代表戦で優勝争いをしている割には非常に苦戦しているようだな。
「パーティー会議をこっそり盗み聞きしましたが、実力不足なようであります。武器と装備で結構なステータスやスキルを盛っているようですが、それだけではモンスターには対抗出来ないということみたいでありますね」
「そういうことか」
どうやらファルフォスとツオークはパーティーの不足している実力を武器と装備で補っているようで、見栄え上は他のパーティーよりも強いのだが、圧倒的な経験と実力不足なせいでイレギュラーモンスターに敗北したそうだ。
アーバスがダンジョンアタック前に見たステータスだとイレギュラーモンスターくらい余裕で倒せそうだったのにまさかそんなカラクリがあったとはな。
「しかも、ダンジョンの探索も相当苦戦しているみたいで、イレギュラーモンスターとの遭遇も1番遅かったようでありますね」
どうやら索敵のスキルまでは用意していなかった上に実力不足を相まってダンジョンの進行度は相当遅かったようで、最初に出てきたテリーヌ先輩よりも4時間も遅くに出てきたみたいだな。
「なる程な。それでファルフォスとツオークはダンジョンアタックでは下位に沈んでいるんだな」
詳しいところまではわからないが、ファルフォスとツオークはダンジョンの攻略に関しては苦手と見ていいだろう。魔法学園では場所によって力の入れているところが違うのだが、恐らくファルフォスとツオークはダンジョン攻略よりも他のところに力を入れているのだろう。それは何かは知らないが、そうでないとここまでダンジョン攻略が苦手になる理由というのが思い付かなかったのである。
「そして、ファルフォスとツオーク関連ですが、昨日深夜にとある治安部隊幹部が接触したと報告を受けております。恐らくサードオプティマスの一員かと」
「ほぅ。やっと尻尾を現したか」
どうやらこの前のギルド本部への襲撃に加担した内通者のようだな。接触した本人がサードオプティマスの一員かはわからないが、捕まえて情報を引き出した方がいいだろう。
「レイラ、そいつにはちゃんと張らせてるな」
「当然であります。本日は街の警備だそうですので、確保は容易であります」
レイラはその幹部にしっかりと見張りを付けているようで、既に今日の行動まで把握済みなようだ。ただ、問題があるとすればアーバスの方で今日1日はダンジョンへ出撃しないといけないので不測の事態が起こった時にアーバスがサポートすることが出来ないことくらいか。
「ルーファ、シエスが勘づく可能性は」
「確保した時点で勘付かれるかと、最悪のパターンとしてはシエスさんが介入して取り逃すこともあり得るでしょう」
「それは困りましたね」
アーバスはルーファに確認するが、この王都はシエスの箱庭で、その目を掻い潜っての確保というのは厳しいという判断だった。勘付いて無視してくれるならまだしても介入されて取り逃すという事態になれば恐らくその人物はサードオプティマスによって消されるだろう。そうなればセーティス内のサードオプティマスの情報を拾えなくなる可能性が出てきてしまうだろう。
「シエスさんに連絡するというのはどうでありますか?」
「俺かルーファなら問題なく接触できるだろうが、接触した時点でバレるだろうな」
なんせシエスが粛清したといってもサードオプティマスに汚染されていないとは言い切れないからな。なので確保するにはシエスとの接触は避ける必要があるだろう。
「ではどうされますか?」
「本日深夜に捕獲作戦を決行する。変な行動を起こせばバレるリスクが高まるから情報部隊には無茶をしないように言っておいてくれ」
「承知しましたであります」
アーバスは捕獲作戦のタイミングを決めてレイラへ指示を出すと朝食を食べ終えて学園へと向かうのであった。




