363話 Aランク昇格試験サーラ編
「‥‥‥」
私はアーバスの戦闘を見終わって思わず絶句しました。アーバスの剣術自体はエクストリームで見ていたのでわかっていましたたが、アーバスが私に初めて見せた上級魔法は明らかに私の使うものよりも高火力で魔法の発動も私以上に速かったのです。
(流石はメルファス最強ですね。魔法も一級品ですか)
私がアーバスに最初に思ったことというのはこれでしたね。初めてアーバスのエクストリームに同行した時もそうでしたが、アーバスの剣術や魔法はその全てが自分が見てきた中では1番ですね。魔法だけは流石に13聖人で師匠であるエリース様のほうが上だと思っていましたが、それも越えてくるなんて思ってもいませんでした。
「サーラと言ったな。交代だ。アリーナへ入れ」
「わかりました」
そんな私のことなんて知らない試験官のギルディオンさんは次と言わんばかりに私に声を掛けてきます。私は返事をするとアミールと入れ替わるようにアリーナへと歩いていきます。
「サーラ、気をつけなさい。アーバスの奴今までにないくらい強いわよ」
「わかっていますよ」
アーバスの強さを体験したアミールは私に向かってそんなことを言っきます。イレギュラーボスモンスターとの戦闘はともかく、それ以外だとアーバスは手を抜いていますからね。アミールは強いと思っているみたいですが、私から見るとそれでもまだアーバスは手を抜いているように見えますけどね。
それに私はアミールと違ってアーバスがジョーカーであることを知っていますのでその強さは理解しているつもりです。
「よろしくお願いします」
「サーラ、頑張れよ」
私はアーバスに開始前に挨拶をするとアーバスは一言簡潔に応援の言葉を言ってくれます。それなら手加減をして欲しいところですが、アーバスも試験官という立場なのでそういったことは出来ないのでしょう。
「ルールはアミールの時と同じだが聞くか?」
「いえ。大丈夫です」
ルール説明はアミールの時にしっかりと聞いておいたのでルール説明を断ります。なんせ全力で戦ってもアーバスには勝てませんからね。
(ですが、それでも今ある全力で戦わせてもらいますよ)
私はそう決意するとスタート位置へと移動しますが
、アーバスは既にスタート位置に立っているみたいでその場から動こうとしませんね。そして私がスタート位置にたどり着いて準備を終えるとその十秒後にブサーが鳴り響きます。
(やはり速いですね)
ブサーが鳴って直ぐに私はオールアップと障壁を発動して障壁を強化をしていきますが、アーバスは既に魔法の発動の準備を始めていたのです。さっきの試合のアーバスを見てそう思っていたのですが、実際に私よりも速い速度で展開していくアーバスを見ると私の努力を全て無駄と言われているような感覚に陥りますね。
【サンダーパルス】
先制攻撃はアーバスで私に向けて放たれたサンダーパルスは障壁によって防がれるのだが、今までにない一撃が私の障壁を襲います。が、その程度で私の障壁は破壊されることはありませんでした。
【ファイアーインパルス】
私はお返しとばかりにアーバスへ向けて魔法を放ちます。選択した魔法はファイアーインパルスという魔法で、属性は下位属性の火属性ではありますが、私が習得している数少ないオリジナル魔法の1つでアーバスに見せたことのないとっておきの魔法です。
「オリジナル魔法か。やるな」
炸裂した爆風の中から出てきたアーバスは完全な無傷であり、どうやら私のとっておきはアーバスの障壁に防がれてしまったようですね。
「見せていなかったはずなのですけどね」
「確かにそうだが、サーラの実力だと得意属性はオリジナル魔法を使えても不思議じゃないからな」
まさか完璧に読まれているとは思いませんでしたね。一応更に奥の手として聖属性のオリジナル魔法もあるのですが、これもアーバスに読まれているといってもいいでしょう。
「さてと、ここからは第2段階だ。障壁を割られないように気をつけろよ」
とアーバスはアイテムボックスから虹刀を取り出すと私へ向けて駆け出して来ます。本来なら迎撃するのがベストなのでしょうけど今の私の実力ではアーバスを近づかせないということは出来ませんので素直に障壁を強化して攻撃へ備えます。
ガキィン
とアーバスの攻撃が私の障壁に当たると非常に大きな音と共に嫌な衝撃が私の元へと届いて来ます。障壁は一撃は耐えてくれましたが、アーバスが連撃で障壁を攻撃していますのでいつこの障壁が破壊されても不思議では無いですね。
(でも、防ぎ切るしかありませんね)
先程のアミールとの対戦を見るに私が接近戦をしたところで一瞬で決着が付くでしょう。このまま耐えきるのも1つの手ですが、アーバス相手だと耐久しきるのは不可能でしょうから魔法で迎撃するしかありませんね
【ホーリーレイン】
私は障壁を強化しながら範囲魔法であるホーリーレインを複数展開して断続的に光の雨を降り続かせることでアーバスを下がらせようとしまう。アーバスは私の放ったホーリーレインを障壁で受け止めるのではなく、後ろへ下がることで回避しましたね。実力的に障壁で防ぎながら攻撃することも可能でしょうが、試験ということもあってか簡単に下がってくれましたね。
「やっぱり突破出来ないか」
「それはアーバスは知っているのではないですか?」
「虹属性と障壁破壊で攻撃したはずなんだけどね」
とアーバスは肩を落とします。アーバスの程の実力者であれば相手の実力を読み間違えることはないでしょうから恐らくは演技なのでしょう。本心ということもあり得ますが、それだともっとギリギリのラインの高出力で攻撃しているはずですからね。
(アーバスか攻撃して来ないということは試験項目を突破したということですかね?)
私は近接戦を再度警戒しますが、アーバスはそのようなことをする素振りはありませんね。ということは先程の攻撃は近接戦への対応力と障壁の硬さの試験なのですからね。
(ということはここからが本気の打ち合いになりますね)
後衛の試験は大体は障壁の耐久と魔法攻撃、そして近接戦への対応力が主な評価点ですからね。その全てが今ので終わりましたのでここからは試合決着させる為にアーバスは動くでしょう。
「サーラわかっていると思うが覚悟しろよ」
「わかっていますよ」
そんな私にアーバスは今から遠回しに試合を決着させることを伝えてきます。私はそれをわかってはいましたがこうして言われるとどれだけの力を出してくるのかが想像付かないですね。
(本当はアーバスみたいに魔法を破壊できたらいいのでしょうけど今の状態だと出来ませんよね)
本当はアーバスの攻撃に対して魔法でカウンターをしたいところですが、今の私ではカウンターを当てれる速度も技術もありませんからね。
(でも、精一杯足掻かせて頂きますよ)
私が魔法を発動する準備をしているとアーバスは同じ土俵で戦いたいのか接近戦をせずに魔法を放つ準備を始める。私の不利な近接戦だと思っていましたが、アーバスはあくまで相手の得意な土俵で勝つ気なのですね。
【クワタブルパルス】
私は今使える4属性全てを属性融合させて上級魔法であるパルス系として放ちます。使えるかどうかわからないぶっつけ本番で放ったその魔法は何とか成功して発動するとアーバスに特大威力の魔法が炸裂します。爆風でアーバスの様子が見えませんが、どうなったのでしょうか。
「流石だな、サーラ。まさか障壁が破壊されるなんて思わなかったぞ」
そう言いながらアーバスはパチパチと拍手をしながら姿を現すのですが、私の渾身の一撃はアーバスの障壁を割るのが精一杯だったようでアーバスは無傷で私へと向き直る。
「せっかくだから本物を見せてやる。サーラの最終系だから一度は見ておいたほうが良いだろう」
とアーバスは魔法陣を6つ展開するとそこから現れた6属性の魔法が中央で大きい球体を作り出します。展開する直前に一瞬右手が光った様な気がするのですがこれはもしかして
(ブルームーン!!!)
ブルームーンとはジョーカーとっておきの魔法で、基本属性の6属性に加えて無属性を入れた7属性で構成される属性融合の魔法ですね。全ての属性がオリジナル魔法であり、単発でもその威力はメルファス13聖人を軽く凌駕すると言われていますね。そのような魔法を合成するのですからその威力は凄まじく、歴代最強モンスターと言われているキョウロクールや魔王ガリバディロムを一撃で屠ったとも言われる都市伝説級の魔法です。
(見られるのは嬉しいですが、どうやって耐えろというのですか!?)
ジョーカー最強の魔法を見れるのは感動ですが、それが私に向けられるとなると感動よりも絶望の方が上回りますね。
「それではこれで決着だ」
そう言うとアーバス私に向けてブルームーンを放つのでした。




