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355話 最下層の練習

「うわぁ。ホンマにサラマンダーないか」


最下層に辿り着き光が収まって現れた巨大な蜥蜴にリンウェルはマジかといった顔で見る。サラマンダーとかバジリスクを始めとした蜥蜴型モンスターの上位種の存在であり、火属性の炎を操るAランク中位のモンスターである。


「アミール、行ってきていいぞ」


「わかったわ」


アーバスはサラマンダーを見て予想通りと言わんばかりに即決でアミールに戦うように指示を出す。アミールもそれに何も文句を言わず、むしろ楽しみにしていたかのように飛び出していく。


「ホンマに氷刀なしでええんか?」


「有利属性な上に腕試しには丁度良いモンスターだから問題ないだろ」


アミールの相棒とも言える氷刀は現在氷属性習得の為にサーラへ貸し出している状態なのである。その状態で戦うのは氷属性威力が落ちて良くないとリンウェルは言いたいのだろうが、最終的に氷刀じゃ無くなるかもしれないので今のうちに慣れておいた方がいいだろうしな。


「サーラ、回復は付与させているか?」


「ちゃんと付与していますよ。オートキュアで良かったのですよね?」


「それで十分だ」


アーバスはオートキュアが掛かっていることを確認するとアイテムボックスからスタンライフルを取り出して右手に装備する。スタンライフルを装備する理由としてはアミールがサラマンダーと戦えないと判断した時に介入する際に使うものである。


「何だかんだ言っても面倒見は良いのですね」


「スパルタだけどな」


アーバスはメルファスの頃から強くなりたいと来る人間に対してはある程度までは教えているからな。そのせいなのか、アーバス派というものは居ないがアーバスに肩を持つ人物はメルファス内に結構いたりするのである。


「やっぱり優勢くらいは取れるよな」


「アーバスの言った通りですね」


アーバスは最下層へと降りる前にアミールに注意事項は共有していたのが、本当に聞いているのかは心配だったのである。ただ、アミールは注意事項である炎属性のフィールドを自身の氷属性のフィールドへと上書きすることが出来ており、その上で聖刀でサラマンダーの攻撃を捌きながら反撃出来ており順調にHPを削っていたのである。


「流石はSランク冒険者に勝つことが出来るだけあって凄い強くなってるんやな」


「そもそもAランクモンスターくらいだったら多少の努力があれば何とかなるからな」


大抵の冒険者がAランクに上がれないせいで凄い存在と思われているのだが、属性剣などの特殊な物を使わなくてもAランクモンスターを倒している冒険者だっているからな。ただ、誰もできる代わりに努力と練習方法が大事でここを間違えるとAランク冒険者へ遠回りとなったり、Aランクモンスターを倒せずに上がらずに引退ということになってしまうのである。むしろ大変なのはSランク冒険者からで努力と練習方法の中に属性の追加というのが必須となってしまうからな。


「Aランク冒険者って誰でもなれるんやな」


「でも、複数の3属性が必要ですよね?」


リンウェルがアーバスの説明に納得しているのを聞いてサーラは思い出したのかアーバスにAランク冒険者へと上がる為の条件を再度確認する。


A()()()()()()()()()()()()()()。別にAランクモンスターを狩るだけならBランク冒険者でも問題ないからな」


アミールがレッドドラコンを倒しているようにBランク冒険者であっても実力があればAランクモンスターの討伐を任されることがあるからな。


「なる程、そういえばそうでしたね」


「だろ?だから無理に属性を増やすのに拘る必要なんてないんだよ」


冒険者ランクの都合上、Bランクになれば属性を極めるよりも属性を増やすことが最優先となってしまっているが、アーバスは目指すところによっては1属性でも問題ないと思っているのである。


「お、良い一撃が入ったな」


そんな話をしているとアミールがサラマンダーの攻撃を弾き飛ばしてバランスを崩させると首目掛けて鋭く振り抜かれた剣がバジリスクに当たってノックバックしながらそのHPを大きく減らす


「順調そうですね」


「ん?‥‥‥そうだな」


バジリスクを圧倒しながらダメージを与えていくアミールにサーラは余裕そうだとアーバスへ同意を求めるのだが、アーバスは即答することはなく少し間を置いて賛同する。


「アーバス、なんか気になることがあるんか?」


サーラと同じくアミールが余裕で勝てると思っていたリンウェルはアーバスの間の置き方に疑問を感じて聞いてくる。さっきアーバスは優勢だと言っていたはずなのにその表情は何時もの楽観的な表情では無く、まるで何かのタイミングを逃さないように真剣な表情でアミールとの戦闘を見つめていたのである。


「2人にはアミールが余裕そうに見えるんだな」


「「!!!!」」


そう言われて2人は改めてアミールの方を見る。アミールは氷属性と雷属性の2属性の属性融合を使って戦っていてバジリスクの攻撃を全て捌いて反撃しているように見えるのだが、その表情は焦りが見えていたのである。


「アーバス、どういうことですか?」


「優勢は取れているんだけど結構ギリギリなんだよ。相手の方が少し強いから下手に攻撃を受けるとノックバックしてしまって致命的な隙が生まれるんだよ。だから攻撃を見極めて弾かないといけないからその判断を含めて対応がギリギリなんだよ」


簡単に弾いているバジリスクの攻撃であるが、一撃の威力は非常に重く、サーラのバフなしのアミールだったらその攻撃を正面から受け止めることが出来ないのである。その証拠に戦闘開始からアミールがバジリスク相手に力押しで攻めるということをしておらず、攻撃を受け流しながら隙が出来た時だけカウンターをするという戦術で戦っていたのである。


「そんなギリギリだったらバフ込みで戦ったらええやん。なんでしないんや?」


とリンウェルはバフで戦況を安定させることを提案してくる。これがダンジョンではなくアーバスもいないのならそれが正解だろう。なんせ死と隣り合わせなせいで失敗は許されないので最初から全力で戦うのが推奨されているのである。


「力押しばっかりしていると格上を相手した時に押し負けるからな。失敗しても退場で済む上に俺がフォローできるから実戦練習には丁度いいんだよ」


なんせ普段のアミールは普段から力押しで戦っている上にアーバス以外に格上と戦う機会なんてないからな。そうなった時に程良い格上で、しかもモンスターというバジリスクはアミールの練習相手として完璧な存在だったのである。

アーバスはアミールに力押しばっかりの戦闘になって格上との戦いに押し負けないような戦い方を復習してもらう為に敢えてサーラにバフを指示していなかったのである。


「それでずっとスタンライフルを持っているんやな」


「そういうことだ。フォローの準備をしていないせいで退場も可哀想だしな」


アーバスの指示で不利な戦いをしているのにミスをしたらそのまま退場でボス戦をクリアされているのは可哀想すぎるからな。


「クッ」


ずっとして集中して戦って攻撃を捌き続けたアミールだが、とうとう攻撃を捌き損ねてノックバックしてしまう。その致命的な隙をバジリスクは当然見逃すことなくアミールへ鋭く尖った牙で攻撃しようとする。


「ギュッ」


ただ、その攻撃は後ろで銃を構えていたアーバスが待ってましたと言わんばかりに撃ち込んたスタンライフルによってバジリスクは麻痺してその攻撃機会を失うのであった。

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