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319話 苦手なものの慣らし方

「フギュッ」


とボス前の広場に着いた途端アミールは全身の力が抜け落ちてその場にへたり込む。ここまでリンウェルと交代交代で休憩しながら進めて来たがどうやら10層のボスを目の前にして力尽きたらしい。


「全く、いい加減慣れて欲しいのだが?」


「アーバス、それは無茶ですよ。苦手な物は中々克服出来ないものですよ」


とアーバスが呆れているとサーラがそんなことを言う。確かに苦手な物の克服には時間が掛かるものだが、スパイダーの時と違って今回は耐性が無さすぎじゃないか?


「なら荒療治をするしかないか」


「?」


アーバスは独り言のようにそう言うとリンウェルは聞き取れてしまったのか頭に?を浮かべながら考えている。


「荒療治って何するつもりよ」


とどうやら力尽きていたアミール本人が直接聞いてくる。どうやら本人にも聞こえていたらしいが、裏でコソコソするよりも堂々と言った方がいいか


「ギルドの依頼を全て虫型モンスターにしてもらうだけだけど?」


「えっ」


バタリと倒れる音と共に一瞬元気になったアミールが再び力尽きる。どうやらアーバスの言葉が受け入れられなかったらしい。


「アーバス、それは鬼畜やで?」


「そうか?俺は苦手なモンスターはそれで克服したけどな」


アーバスも虫型や天使型のモンスターが苦手だったのだが、徹底的に同じ系統の依頼を受注して克服することに成功したからな。なのでアミールも同じようにすれば克服できると思っただけである。


「アーバス、それはアミールが可哀想ですからやめてあげてください」


「そうよ。ダンジョンだけは頑張るからそれだけはお願いだからヤメて」


「それなら仕方ないか」


サーラとアミールにまでそう言われたのでアーバスは思い付いた案を諦める。結構いい案だとは思ったのだが皆が拒否するのなら大人しく引き下がるしかないな。


「というかアーバスにも苦手なモンスターがいたんやな」


「当然だ。慣れるまでに苦労したモンスターなんて少なくないぞ」


特に虫型や天使型のモンスターは普通のモンスターと違う挙動をするせいで戦いにくいんだよな。なので身体が慣れるまでずっと虫型と天使型しか受けていなかったしな。


「そうなのね。私はてっきり苦手なモンスターなんて居ないと思っていたわ」


「そんなことはない。最初はアミール達みたいに苦手な属性もあったし、モンスターも居たからな」


最初に覚えた魔法が炎属性だったせいで水属性のモンスターには属性ダメージが入らなくて苦労した記憶があるな。ただ、最初に苦労した水属性モンスター達は次に覚えた雷属性で簡単に倒せるようになったので苦手意識がつく前に得意モンスターへと変わってしまったけどな。


「そうなんやな。つまりウチらも順調に高ランクへの道を歩んでいるってことなんか?」


「そうだな。後は目指す場所次第で克服しないといけないところが変わるくらいかな」


Aランク以上からは様々なモンスターへの対応が必要となっており、その一環として複数属性が使えることが必須となっているからな。その要求はランクが上がれば上がる程増えていくので目標によっては苦手な属性やモンスターでも克服する必要があるからな。


「そういえばランクアップの規定って見たことないわね」


「それなら見たほうがいいかもしれないな。見せてはいけないものではないしな」


「えっ見ていいの?」


「いいぞ。その方が目指しやすいだろ?」


冒険者ランクのランクアップの条件というものは明確に明記されており、各ギルドはそれに則ってランクの推薦をしているだけだしな。その条件というのは公にはされていないものの、秘密書類ではないのでアミール達にみせても問題ないだろうしな。


「ちなみにアーバスは本来どの位置に当たるんや?」


「わからないな。というか確認すらしていないからな」


厳密には規定を知っているからこそDランク冒険者で止めることが出来ているのだが、そこについては黙っていた方が良さそうだな


「少なくともDランク冒険者ではないことだけはわかりますね」


「というかランクアップの試験を受けなさいよ」


「それだけは受けないぞ」


前にも言ったが、アーバス自身はDランク冒険者であり続けることに不便を感じたことがないからな。アーバス自身が不便を感じるない限りはランクアップするつもりは一切としてないだろう。それに適正なランクに上げたら他のクラスから文句を言われるかもしれないしな。


「というか、アーバスの存在に皆文句言わないのね」


「そうですね。ここまで強いと対抗戦出場停止とかあり得そうですけどね」


他の組はどこも文句を言っていないが、アーバスだけ明らかに実力がおかしいのでいつ出場停止になってもおかしくないのだが今のところ抗議の類はないそうだ。


「1人でずっと前衛で無双していたらそうなるだろうが、ここまで殆ど前衛に出てないからな」


「何なら団体戦は本陣を攻撃しただけですからね」


アーバスがまともに戦闘したのは対抗戦の2組戦のみでそれ以外はサポートに徹しており、団体戦に至ってはがら空きの本陣を削りきっただけである。そのせいか各組ではアーバスは戦闘に出てこないのが当たり前と思っているらしく、警戒されても本陣への攻撃や狙撃くらいである。


「でも、何で抗議せんのや?他の組も明らかにアーバスが異常なことくらいわかってるやろ」


「そりゃアミールすら倒せてないんだから文句を言っても仕方ないんだろ」


「そういえば私一度しか退場してないわね」


なんせ団体戦ではどの組もクラス代表であるアミールを退場に追い込めなかったのである。アーバスが索敵でお膳立てしている部分があるものの、実力でアミール達に負けているこの状況で何も活躍していないアーバスを外せと言われても理由に正当性ないからな。何なら大将はサーラにしているので別にアーバスが倒せなくても無問題だしな。


「そういうことだ。せめて2組みたいに俺以外全滅の状況を作って初めて文句を言える資格があるだろうからな」


「なる程ね。なら私達が勝っている限りはアーバスは出れるということね」


「簡単に言えばそうだな」


その2組もその後の模擬戦で惨敗したのでそれも言えなくなったけどな。シエスもその認識であり、アーバス以外が実質全滅の状況が繰り返されない限りはアーバスを出禁にするつもりはないらしい。


「というか、ボスの話しはせんでええんか?」


「ボ、ボスねぇ」


とリンウェルがボスの話しをしようとするとテンションの戻ったアミールが嫌そうな顔をする。アミールの調子を戻す為に別の話しをしていたんだがな。でも、ここへ来た当初よりかは元気になったのでボスの話しをしてもいいか。


「ボスはやっぱりボスローチですか?」


「い゛っ」


とそれを聞いてアミールが戦慄する。ボスローチは普通のローチと大きさはそれ程大きくなく、HPも普通のローチよりも少し多いくらいしかないのだが、戦闘開始直後より大量のローチを召喚して戦う物量型のモンスターである。その量は圧巻で最大500体のローチを使役していたという記録もある。その量と絵面もあってかモンスターの強さ以上に冒険者から畏怖されている存在で、依頼の失敗率もBランクモンスターの中で最も高いそうだ。


「ちなみに対策はあるんか?」


「増える前に倒すのが物量型の鉄則だな」


なんせHPが低いので高威力の範囲攻撃で簡単に倒せるからな。特にボスローチは増えてからだと本物を見つけるのが非常に面倒なので速攻で倒すのが一番楽だからな。


「わ、わかったわ。覚悟も決めたし行きましょ」


そういうアミールにはまだ少し覚悟が決まりきってないように思えるが、本人がそういうのでアーバス達は階段を降りていくのであった。

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