308話 ブースターバード戦
「カー、カー」
「!!!」
と光が収まると同時に出てきたブースターバードにアーバスは目を疑う。散々イレギュラーだと予測しておいてまさかレアボスだったことにアーバスの脳が理解を拒絶する。
(落ち着け。まだ、強化個体の可能性もある)
とアーバスは自分の心を落ち着かせるように鑑定を掛けてブースターバードの情報を確認する。レアに見せかけたイレギュラーとかもあり得るしな。そうして掛けた鑑定だが、鑑定結果はただのブースターバードであった。
(銅色はレアボス確定ということか)
きっとこれ以外にも銀や金などの色があってそれによってボスが決まっていて銅色はレアボスだったということだろう。アーバスはそう納得してアミールの方へと振り向くと
「アミール、ただのレアボスのブースターバードだ。後は任せた」
「わかったわ」
とアーバスはアミールと前衛を交代の指示をだす。アミールは待ってましたとばかりに前へと出てくるがそれを許さないものが1体いた。それは勿論ブースターバードでブースターバードはアーバスを逃さまいと羽根に付いているブースターを出力を上げてアーバスを猛追しようとするのだが
「それは困るな。少し黙っててくれ」
とアーバスはブースターバードにブランドの魔法を掛ける。ブランドというのは文字通り視界を塞ぐ魔法なので一見機械であるブースターバードに意味がないと思いきやブランドはモンスター全てに有効なのでブースターバードであってもブランドが掛かってアーバスを一時的に補足できなくなる。
「やあっ」
「ガーッ」
ブースターバードは目標を見失って高度を下げたところにアミールの攻撃がヒットする。ファイアーバードならこれで墜落してくれるのだが、ブースターバードはそれだけでは揚力を失わず、逆にブランドが解けて再度上空へと飛んで行ってしまう。ただ、ブースターバードの狙いはアーバスからアミールへと変わったようでブースターバードはアミールを見ながら旋回して攻撃の機会を伺っている。
「これで入れ替わり成功だな」
「上手く行き過ぎやろ」
あまりに手慣れた入れ替わりにリンウェルは思わずツッコミを入れる。イレギュラーボスだと思っていのでこの陣形になったが、当初の予定通りとなったので結果オーライだろう。
「使った魔法がブランドだけだからそこまでヘイト稼いでないからな」
「それはそうですが、ブランドを当てて成功させるのって結構難しいのではなかったでしたっけ?」
と簡単に言ってのけるアーバスだが、サーラの言う通りで特殊属性に部類されるブラインドはその中特に難しい魔法であり、高ランクや機械のモンスターへの成功確率は特殊属性の中では一番低く設定されているのである。これはスタンや麻痺などど違って蓄積がなく成功すれば必ずブラインド状態になるからで、機械でAランクモンスターであるブースターバードに一般の冒険者が使うブラインドの成功率は10%程と言われているのである。
「習熟度とレベルによるな。一応ブラインドなどの特殊属性にも初級、中級、上級があるからな」
「なんやそれ。初めて聞くんやが」
特殊属性にも初級などのレベルがあることにリンウェルは驚く。普通の魔法にもあるのだなら特殊属性にも当然あるということに気づいてもおかしくないと思っているのだけどな
「ということはオリジナルもあるのですか?」
「あるぞ。といっても使える人間は非常に少ないけどな」
特殊属性の場合、中級や上級を覚えるのも難しいのでマスターしている人間はアーバスが知っている中では数える程しかいないからな。ちなみにアーバスは特殊属性は上級まではマスターしているものの、オリジナルの領域にはまだたどり着けてはいないけどな。
「ちなみに今のはどのレベルなんや?」
「中級だな。Aランクくらいなら中級をマスターしていれば最初の一回は確実に成功するな」
勿論例外のモンスターもいるが、AランクとSクラスの一部のモンスターなら中級で十分成功するからな。
「ちなみに範囲魔法もあるのですか?」
「あるぞ。ただ、使えるのは上級だけどな」
普通の魔法にはレイン系などの範囲攻撃が中級からあるのだが、特殊属性は中級魔法には範囲攻撃はなく、上級しか存在しないのである。アーバスもあるかもしれないと色々と試行錯誤をしてみた時期があるのだが、手がかりすら見つけることが出来なかったな。
「サーラ、アミールに障壁を展開する準備をしてくれないか?合図はこちらでする」
「わかりました」
特殊属性について話をしている最中にアミールの戦闘を見ていたアーバスがサーラに障壁の準備を指示する。先程からアミールはブースターバードがレーザー砲で攻撃しようとする度に躱して魔法で攻撃を当てて順調にブースターバードのHPを削っており、その状況は雑談をしながら安心して見れる状況である。
ゴオオオオオオオオオッ
「ちょっ」
とアーバスが指示して数回を攻防を挟んだ後、突如としてブースターバードは羽根にあるブースターを展開するとその出力を一気に上げる。アミールはそれに一瞬動揺した後に横へと飛んで回避しようとするが、それよりも早くブースターを全開にしたブースターバードがアミールへの元へと突っ込んでくる。
「サーラ」
「わかりました」
アーバスはブースターバードがブースターを展開したと同時にサーラに障壁の展開を指示させる。障壁はブースターバードが突撃するよりも張り終えると亜音速で飛んできたブースターバードはお構いなしにと障壁へと突っ込むが、障壁はブースターバードに負けることなく正面からそれを受け止める。
キイイィィィィィィン
とブースターバードは障壁を貫通するべく更にブースターの出力を上げるが、サーラの障壁にヒビ1つつけることが出来ずに状況は均衡する。
「リンウェル隙だらけだから魔法で攻撃してくれ」
「了解や。【サンダーパルス】」
とリンウェルはブースター目掛けてサンダーパルスを打ち込むとブースターバードは回避することなくモロに攻撃を受けるとブースターによる突撃は中止される。
「隙ありよ」
とそこへ聖刀に雷属性を付与させたアミールが上空へ逃げようとするブースターバードに追撃の一撃を放つ。先程の攻撃でブースターを使い切ってしまったのか、ブースターバードは持ち前のブースターを使用せずに回避しようとするが、その程度ではアミールの攻撃を避けることが出来ずに攻撃が直撃する。
「ガーッ」
とブースターバードはダメージの蓄積かアミールの攻撃を受けてその場でダウンする。その大きな隙にアミールは攻撃しようと足に力を入れたその時だった。
「え、嘘でしょ」
ダウンしたブースターバードは着地と同時に白く輝き始めたことにアミールは驚いたのたが、気づくのが遅く一歩踏み出してしまったせいで回避が間に合わなくなる。それをみたアーバスは「はぁ」とため息をつくと自身の周囲とアミールの周辺に障壁を展開する。サーラに任せしても良かったのだが、ブースターバードの自爆は光ってから爆破までの時間が短いからな。それで間に合わずにアミールが退場しても困るので自分で障壁を展開したのである。
ちゅどーん
という音と共にブースターバードは盛大自爆にするのであった。




