306話 ファイヤーバードの倒し方
「やあっ」
とアミールは聖属性の魔法であるホーリーショットを放たれた光のビームは空中にいるモンスター目掛けて飛んでいくが
「クワァ」
と鳥形のモンスターはそれを難なく回避するとお返しとばかりに口を開けるとそこから火球がはなたれる。
「それはもう慣れたわ」
と何度目も見たその攻撃をアミールはステップで躱しながらもう一度ホーリーショットを打ち込む
「グェェ」
アミールが放ったホーリーショットは火球を放って硬直しているモンスターに直撃するとそのまま揚力を失って地面へと墜落する。
「やあっ」
とアミールは墜落と同時にモンスターの元へと駆け寄ると聖刀で一刀両断してモンスターを光へと返す。
「ふぅ。アーバス、やっと倒せたわよ」
とアミールはモンスターを倒し終わるとそのまま進もうとせずにアーバスの元へと一度戻る。
「そうだな。ただ、無駄にホーリーショットを使っているからそこを改善しないとな」
「仕方ないでしょ。相手が小さい上にすばしっこいのが悪いのよ」
「そうはいっても所詮ファイアーバードだから簡単に倒せて当然なんだけどな」
「遠距離が苦手なんだから仕方ないでしょ」
とアミールは中々倒せないのを遠距離だから仕方ないと言い訳にする。アーバスはもう一体のファイアーバードを任せているリンウェルの方を見ると、リンウェルもアミールと同じように習得中の初級魔法であるアイスショットで相手をしているが、こちらも非常に苦戦しているみたいで放たれたアイスショットは虚空を向かって飛んで行ってしまったのである。
「こりゃやり方を見せないといけないな」
「あるのなら始めから見せなさいよ」
「本当は自力で何とかして欲しかったんだけどな」
アーバスはあっちもかと内心思いながらも見本を見せることを決意する。本当は自力で倒して欲しかったのだが、このまま放置していると攻略よりも先に魔力が無くなりそうだしな。
「リンウェル、次の戦闘は俺がやるから見ておいてくれ」
「了解や」
とアーバスはリンウェルにも次の戦闘の待機を命じるとそのまま次のファイアーバード達のいるところへと移動する。
「さてと、始めるぞ」
とアーバスは魔法陣も何も展開せずにファイアーバード2匹と対峙する。魔力弾を使えば楽に倒せるのだが、それだと意味がないとアミール達から言われるしな。
「まずはだ。最初はこちらから攻撃はする必要はない」
「えっそうなの!?」
とまさかの放置にアミールは驚く。今直線に攻撃できる初級魔法を打ち込んでも避けられるだけだしな。それなら攻撃出来るタイミングまで何もしないのが一番なのである。
「そして、相手が攻撃態勢に入ったタイミングで打ち込む」
とファイアーバードが火球を放とうと構えたところでアーバスはホーリーショットを放つとそのまま横にステップで火球を避ける。一方で行き違いで飛んでいったホーリーショットはファイアーバードに直撃するとファイアーバードは地面へと落下して気絶する。
「ここまで来たら簡単だな」
とアーバスはアイテムボックスから剣を取り出すとそのままファイアーバードを切りつけて光へと還す。宝箱は落ちなかったがこれで一通りの説明は終わりだな。
「何か質問はあるか?」
「何で火球を放つってわかったのよ。私の時は突っ込んで来たわよ」
とアミールが手を上げて質問してくる。確かにアミールがファイアーバードを相手にしていた時は突進ばっかりして火球は殆ど放って来なかったな。
「ファイアーバードは距離が離れすぎていると突進か回避しかしないんだよ。でも、射程内に敵がいたら火球を撃ってくるんだよ」
ファイアーバードの火球の距離には制限があり、射程外に出てしまうと突進しかして来なくなるのである。突進は直進で進んで来るので反撃しやすいと思いきや、攻撃中でも相手の攻撃に反応して回避してくるのでカウンターするにしても攻撃を当てるのが非常に難しいのである。そして、火球の攻撃時以外は攻撃よりも回避が優先されるので遠距離で攻撃を当てようとすれば魔力を隠すか、逃げ切れない範囲の範囲攻撃をしないとダメージを与えることが困難なのである。
「そうなのね。でも近すぎたらファイアーバードから離れるわよね」
「そうだな。だから程々の距離で戦うのが一番なんだよ」
ファイアーバードは近すぎると近接攻撃が当たることを警戒してか遠くまで逃げる傾向があるからな。しかも逃げると火球の射程外まで逃げてしまうのである程度近づかないと次の攻撃が突進になってしまうのである。
「そうやったんやな。知らんかったわ」
「リンウェルは知らなかったんだな」
「相手にしてたのは大抵水系モンスターばっかりやったから仕方ないんやけどな」
Cランク冒険者のリンウェルなら同じCランクで雷が弱点であるファイアーバードを倒していてもおかしくないのだが倒した経験がないらしい。そういえば冒険者は有利属性の依頼を優先して受けるんだっけか。そのせいで有利属性であったとしても火属性などのモンスターの優先度はどうしても低くなるみたいだは。
「私は倒したことがあるけど大抵はさっきみたいなことが多いわね」
「私は相性が悪いのでアミールに任せていますね」
アミールとサーラの方を向くとアミールは倒したことがあるものの、中々攻撃を当てれなくて無駄に魔力を消費していたみたいだな。冒険者だと一回に倒すのはせいぜい数体程度なのであんなやり方でも問題ないのだが、ダンジョンだと倒す数が多いので時間も掛かるし効率も悪いから今の内に矯正させておかないとな。
「わかった。アミール、リンウェル今教えたことを実践してくれ」
「「わかったわ(で)」」
と2人に教えたところで次のファイアーバード戦へと続く。次に戦闘になったファイアーバードも2匹だったのでアミールとリンウェルそれぞれに1体ずつファイアーバードの相手をしてもらう。
「アーバス、これくらいでいいの?」
「もう少し縮めてもいいぞ。…………そうそれくらいだ」
と距離を聞いてくるアミールにアーバスは適正位置を教えるとアミールはその距離を保ってファイアーバードの行動を待つ。
「クワァ」
「そこね。『ホーリーショット』」
とファイアーバードは突進することなく、火球の攻撃モーションに入ったのでアミールはそれを逃さずにホーリーショットを放つ。ホーリーショットはファイアーバードが火球を放った直後に直撃するとファイアーバードは態勢を崩して地面へと落下すると、アミールは火球を避けた後にファイアーバードを斬って光に還す。
「これは私のやり方が間違っているわね。圧倒的に倒しやすいわ」
「そうやな。距離で攻撃を固定出来るんやな」
と簡単にファイアーバードを倒せたことをアミールとリンウェルは実感しながら驚いていた。この攻略方法は距離の取り方の説明が難しいのと一度しか受注しないことが多いせいかギルドからは教えてもらえないものだしな。
「他にも居るんだがその時また教えるよ」
何せこういったモンスターはCランク以上である程度の数がいるからな。ダンジョンだと同じ系統のモンスターと戦うことが多いので依頼と違って教えても損はないだろう。
「わかったわ。倒すのも簡単になったしバンバン倒しましょ」
と簡単に倒せて時間短縮になったことで上機嫌となったアミールはリンウェルと一緒にファイアーバードを次々と倒していくのであった。




