293話 パーティーで久々の依頼
次の日、いつものようにアーバスがウトウトしながら授業を受けていると目覚ましのこどく任務の鐘が鳴り響く。
(どういうことだ?)
学園からの任務は上級生から割り当てられており、上級生にBランクやAランク冒険者パーティーが一定数ある為か、1年生へ回ってくる依頼は殆どないのである。一応アーバスだけは災害級や厄災級のモンスターを唯一対応出来るものの、そんなものが学園の任務として回ってくることはないしな。
そんな状況なのにも関わらず、アーバスの元に週2回も依頼が回ってくることに驚くと同時に何かイレギュラーが起きたのではないかと勘ぐってしまう。アーバスはやれやれと思いながら椅子から立ち上がって横を向くとアミールと視線が合う。
(パーティーとしての依頼か。そんなものあったな)
周りを見るとサーラとリンウェルも席を立っていることからどうやらアーバス達のパーティーでの依頼みたいだな。ここ最近はアーバス単独の依頼ばっかりだったのでパーティーでの依頼があるということを完全に忘れていたのである。
「アーバス、久しぶりの任務よ」
「いや。少し前にやったばっかりだろ」
代表戦期間中にリヴァイアサンの討伐任務をやったはずなのだが、その事は既に忘れているようだった。
「リヴァイアサン?そんなもの倒した記憶ないで?」
「リンウェルはランク不足だったからな。それに3組戦前だったしな」
「それはしゃーないわ。多分依頼と聞かれても断ってたわ」
リンウェルも呼んでも良かったのだが、リヴァイアサンというSランクモンスターだったということと、リンウェルが3組戦に向けての準備とで敢えて呼んで無かったのである。
「アーバス、何か学園長から聞いてないですか?」
「何も聞いてないな。でもパーティー依頼だからそこまで強くはないだろうけどな」
任務がある時はシエスから事前に聞くこともあるのだが、昨日聞いていないということは今日入った依頼なのだろう。それにパーティーでの依頼ということなので相手はBランクかAランク下位のモンスターであると予測できる。
「というかアーバスは今週2回目じゃない。なんでそんなに多いのよ」
「多いのは仕方ないだろ。高難易度依頼を受けれる人が少ない以上、できる人に集まるのは当然の流れだしな」
学園からの依頼は様々であるが、高難易度になればなる程受けれる人が少ないので、1年生でも高難易度依頼であれば回って来やすくなるからな。
「高難易度ってBランクは十分高難易度に当たると思うのだけど?」
「冒険者ギルド視点ではそうだろうな。だけど、この魔法学園としては珍しい存在ではないからな」
ギルドではBランク冒険者は数が少ないので非常に重宝されるそんなであるはずなのだが、王都の魔法学園では珍しい話ではないからな。この学園のSクラスにはBランク冒険者はそこそこな数がいるしな。
「じゃあ、何処まで上げれば依頼が回ってくるのよ?」
「Sランクだと多くなるんじゃないか」
とアミールの質問にアーバスは答える。Aランクでもそこそこの頻度で依頼を受けれるだろうが、Sランク冒険者だとテリーヌ先輩しかいないのでテリーヌ先輩が出撃していればこちらへ依頼が回ってくるだろう。
「Aランクじゃ駄目なの?」
「Aランクになったら依頼も増えるだろうが、Aランク冒険者はそこそこいるからな」
2年生にはAランク冒険者はいないが3年と4年にはいるからな。そして4年生のAランク冒険者は複数人いてそちらに優先されてしまうのでSランクと比べると依頼頻度は多くないだろう。
「失礼します」
「いらっしゃい。そちらに座って下さい」
シエスがそう言うとアーバス達はソファーへと座る。そしてシエスが空いている場所へと座ると依頼の説明が始まる。
「まず討伐モンスターなのですが、今回はAランクのブルーホースの討伐です」
「Aランクやと!?」
シエスからの依頼にリンウェルは驚く。今回の依頼がまさかAランクモンスターの討伐依頼だとは思っていなかったのだろうが、アミールがギルドでAランクモンスターを倒しているのでアーバスに驚きはなく、むしろ妥当なところだと感じてしまう。
「はい、下位ですがAランクモンスターです。パーティー全員が雷属性を上級まで使える上にアーバスくんもいますので問題ないと判断しました」
どうやらパーティー全員が雷属性を扱えるのが理由の1つみたいだな。もう一つはアーバスという保護者がいるからというのが理由みたいだな。アーバスとしては保護者になった覚えはないのだが、アーバスの実力からすると保護者になってしまうのはやむ無しといったことろだろうか。
「ちなみに場所を聞いてもいいか?」
「場所は南東部カーン領の外にあります山脈の麓です」
「私のところじゃない。お父様を派遣したら解決するのではないですか?」
と場所を聞いたアミールが驚く。まさか依頼で行くところが自身の出身地と近くだとは思ってなかったようだ。
「場所としてアミールさんの故郷の近くになりますね。ただ、自身の領地ではないことから領主自身の出撃は難しいところでしょう」
「何よそれ。腑抜けなだけじゃないの?」
「アミールさん、領地外のことは他ところに任せるというのは良くあることなのですよ。モンスターが頻繁に来る領地は特にその傾向が強いですね」
これが、領地内での出来事やら領主自身が出撃したであろうが、カーン領の主戦力は領主自身である。本当はカーン領で対処したかったであろうが、主戦力が領主自身な上にカーン領はモンスターの進行がそこそこ多いことから領地外での出来事に戦力を出したくないというのが本音らしい。そういったことを補完するのが学園やギルドの役割なので領主の判断としては間違ってないと思うが、アミールからしたら不服みたいだな。
「アーバスそうなの?」
「校長の言う通りだ。それで出撃して自分の領地に襲撃があったら困るからな」
アミールが確認するようにアーバスに聞くのだが、アーバスはシエスに賛同する。領地外の脅威を対応している間に他のモンスターに領地を襲撃されるなんて良くある話だからな。戦場もモンスターのところへ出向くよりも領地内で戦った方が要塞もあって戦い易い上に他の場所がモンスターからの襲撃があったとしても即座に情報が入ってくるからな。
なので仮に領地外の脅威に対して対応することになったとしても領主は参加しないことが殆どだな。
「他に質問はありますか?」
「討伐対象のブルーホースは何体だ。後、他に脅威となるモンスターはいるか?」
「ブルーホースは今のところは1体だけしか確認しておりませんが、複数体いる可能性は捨てきれはいですね。ブルーホース以外にはBランク以上のモンスターは確認されていないですね」
誰も質問しようとしなかったのでアーバスが代わりに質問する。ブルーホースは単独で行動する時と複数体で行動する時があるのだが、今回は単独での行動みたいである。単独ならアミールとリンウェル2人掛かりでいけば余裕で倒せるだろう。
「わかりました。詳細はギルドですか?」
「いえ。領主の方に聞くのをお勧めしますね」
普段ならギルドの方が詳細な情報を持っているのでその街の冒険者ギルドに行くのだが、今回は領主の方が詳しいみたいだな。ということは第一発見者は領主側の人間なのだろう。
「わかりました。それでは行ってきますね」
「はい。無事に帰還できることを祈っています」
これ以上確認することはないのでアーバス達は依頼へ向かう為に校長室を後にするのだった。




