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272話 復興は進んでおらず

「アーバス様、お疲れ様でした」


「いきなりどうした?」


エクストリームの攻略を終えて拠点でくつろいでいるとルーファがコーヒーをアーバスのところに1つ置くともう一つを持って自分の椅子に腰掛ける。ここ最近トゥール関連では特段仕事をしていなかったのでアーバスは何かあったかと思い返す。


「代表戦の予選が無事に終わりましたからね。表情を見るにとりあえず山は超えたようですね」


「そうだな。アミール達の実力の伸び方が予想外だっただけでそれ以外は想定通りだったけどな」


とアーバスは代表戦の予選を終えたこの状況をそう評価する。代表戦のは試合というよりも対戦相手や対戦フィールドの特徴の確認という試合以外の部分の情報収集が大変だったからな。


「むしろそっちの方が大変だと思うのですが」


「最初はそうだな。でも来年からは追加されたフィールドだけの調査になるから楽になるけどな」


対戦相手の情報は定期的に更新している上に作戦立案もベースの作戦が今のところは強いお陰で細かい作戦を投入しなくて済んでいるからな。


「追加ですか。代表戦は毎年新しいフィールドが出来るのですね」


「厳密には入れ替えだけどな。フィールドは毎年20個の中からランダムに10個選ばれているからな。だけど俺からしてみたら入れ替えみたいなものだからな」


代表戦は10個のランダムフィールドと3つのベースフィールドで構成されているのだが、そのうちのランダムフィールドは全20でその中から10個選ばれるのである。ランダムといっても全部総替えになることは確率上ほぼないので次回以降は情報のないフィールドだけ情報を入れれば良いだけだしな。


「そういえばアミールさんとサーラさんですが、そろそろ昇格試験を受けても良い頃合いかと思うのですが」


「そうしたいのが、アミールが2属性しか使えのが問題でな。出来れば同時にランクを上げたいんだよ」


ルーファからの話にアーバスは待ったを掛ける。面倒なことにAランクの昇格には3属性の習得していることが推奨されているからな。必須ではないとはいえ、アーバスとしては出来るだけケチが付かない状態でランクアップさせたいと思っているのである。


「3属性ですか。いくら属性剣があるとはいえ早期に終わるのですか?」


「後1ヶ月もあったら終わると思うぞ。それくらいには順調だ」


アミールも雷属性をサーラと同じ1ヶ月で習得することができたので習得するスピードはサーラと同じと考えていいだろう。そして、ノーマル産を強化した属性剣はエクストリーム産と習得速度は殆ど変わらないのをリンウェルで確認しているので何も無ければ1ヶ月で習得出来るというのがアーバスの見立てである。


「ということは長期休みに入ったタイミングで昇格試験ですか?」


「そうなるな。それに合わせて試験官を派遣してもらうつもりだ」


なんせ試験官は誰が派遣されるのかわからないからな。普通はギルド本部から派遣されるのだが、ギルド本部は立て直し中だからな。正直、政治組と関わりのある連中が来るかもしれないとアーバスは思っている。


「試験ですが、何処か試験会場を借りる必要がありますがそれはどうされますか?」


試験会場というのは文字通りの意味でアーバスのギルドはルーファ商会の本部を使っており、一般のギルドにあるような闘技場の設備を持っていないのである。


「外でも出来るが、流石に試験会場は抑える必要があるか。でも、タポリスにはアリーナは無かったよな?」


「タポリスにはありませんね。ですが、ヘルティアにはあったはずですので、申請出来るか確認してみます」


一応街の外でやるのも可能ではあるものの、アリーナを借りる方が良さそうだよな。首都のタポリスは商業都市として発展したせいか、魔法学園とギルド以外にアリーナなどの模擬戦や試合が出来る設備がなく、アリーナなどの試合が出来るような施設はヘルティアを始めとした他の都市に置かれているみたいだな。


「ヘルティアか。そこのアリーナを借りるとなると結構な金額がいるかもな」


「その辺りは聞いてみないとわかりませんね。商会もアリーナを持ってはいますが、大陸が違いますので転移でいけるとはいえ推奨しないですね」


ルーファ商会も1つだけとはいえアリーナを持っているのであるが、場所が東大陸と全く違うところにあるのである。そこは護衛の戦闘技術や武器の性能試験をする為の施設でルーファの権力を使えば簡単に使えるのだが、転移でいけるとはいえやはり大陸を移動することはルーファ的には避けた方が良いみたいだな。

アーバスも出来ればセーティス内でアリーナを借りたいのでルーファ商会のアリーナは手詰まった時の最終手段になるだろう。


「会合の話を聞くに裏側は静かみたいだし、暫くはやることが無いかもな」


「裏側はサードオプティマスの勢力が一時的にではありますが落ちましたので暫くは手を出して来ないでしょう。ただ、表側に少し問題が」


「ん?何かあったか」


会合では何も問題無かったはずだが、どうしたのだろうか?


「オレミナですが、壊滅的被害と主力冒険者の喪失の影響で復興が殆ど進んでいないのです。このままだと放棄まであり得るだろうと踏んでおります」


「緊急時の財政がないのだからそうなるだろうな。デナー領主はどうするつもりなんだ?」


どうやらオレミナの復興が進んでいないらしい。襲撃からまだ1ヶ月しか経っていないとはいえ、放置しすぎるとモンスターが住んでしまい追い出すのに時間が掛かるからな。中の街の復興は時間が掛かっても良いが、外の城壁は復興する気があるのなら早めに作っておいた方がいいだろう。


「復興する気はあるようですが、やはり財政が問題みたいですね。国とは掛け合っているみたいですが、まだ支援の内容は決まっていないですね」


普通なら復興の資金が降りる前に予備の資金を使って復興するのだが、その資金を税制優遇という形で国民に還元していたからそうなるよな。国も復興が始まっている前提で予算を用意しているはずなので下手をすると予算が足りなくなるかもしれないな。


「ちなみに支援を表明しているところは?」


「ないですね。なんせ支援できる所は自分達も損害を受けていますからね」


ルーファ商会はデナー領に一切店を構えていなかったが、他の商会はルーファ商会が店を出していないからかオレミナに結構な大型店を出している商会もあったくらいだからな。そのオレミナが壊滅して出していた大型店も破壊されたので出していた商会は損害の方が大きすぎて支援する余裕がないみたいだな。


「こちらから復興資金を提供するのは?」


「回収するのに相当な優遇を要求する必要があるでしょう。そうなった場合、私達が仕組んだと勘違いする連中が出てくるかもしれません」


なんせ今回の襲撃で被害を受けなかった商会はルーファ商会だけだからな。優遇を条件に復興資金を出すこと自体はこの世界では良くあることだが、商会を置いていない街に襲撃されたからという理由で優遇を条件に資金を出せば間違いなく疑われるだろう。


「なら、資金だけ出してこちらから条件を提示しなければいいんじゃないか?」


アーバスはそう提案する。こちらから要求をすれば間違いなく顰蹙(ひんしゅく)を買うだろうが、向こうから出てきた条件を了承すれば良いだけだしな。


「正気ですか?もし、何も見返りが無かった場合はどうするのですか」


条件を提示しない資金提供にルーファは戸惑う。確かに資金だけ受け取って見返りがないということは全然あり得る話だが、アーバスはそれならそれで良いと思っていた。


「そうなればこちらが完全に手を引けば良いだけだ」


デナー領にはルーファ商会の支店はないものの、代わりに高頻度でキャラバンを出しているからな。支店程では無いにしてもセーティス内で支店が無いところでは1番優遇されているからな。


「その分利益は落ちると落ちますが、それはどうされるおつもりですか?」


「一時的には落ちるだろうが、最終的にはデナー領からの移住があるだろうからそれで補えるはずだ」


全滅により既にオレミナ分の収益は無いに等しいからな。元々オレミナ行きのキャラバンはオレミナとビアールが利益の大半を占めていたからな。それがビアールだけとなると他の街を回れば収益はほぼなし、もしくは赤字だからな。それならキャラバンを無くしても問題ないだろう。


「わかりました。アーバス様がそう言うならその通りにしましょう」


ということでアーバスはデナー領に資金提供を決める。それからどうなるかはデナー領次第といったところだろうから反応待ちだな。

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