268話 クラス代表の戦い(アミール視点)
「アミール、リンウェル。そろそろ相手の前衛が現れるから戦闘態勢に入ってくれ」
「了解よ」
アーバスから通信が入る。そろそろ4年生と接敵するみたいね。まだ敵の姿は見えていないものの、そう言ってる内に見えてくるだろう。
「アミール、こっちは何とかするからテリーヌの相手は任せたで」
「当然。リンウェルこそ勝たないと今度こそ指揮官をクビにされるわよ」
「余計なお世話や」
私は冗談を交えながらリンウェルと作戦の最終確認を行う。作戦といっても簡単で、相手の総力戦に対してこちらも総力戦で戦うといったものね。ただ、普通に総力戦をしても私達が学園最強に勝てないのでアーバスが戦力が均衡になるように事前に相手を奇襲で倒してくれたみたいね。本当はハンデなしで戦えたらいいのだけれど今の私達では実力が足りていないみたいね。
私の当初の予定だと戦う相手は前衛主力2人だと聞いていたのだけれど相手が総力戦となった関係で私はクラス代表であるテリーヌ先輩が相手となったわ。相手はSランク冒険者なので私では力不足だと思っているのだけれどアーバスからは問題なく勝てるから頑張れと言われたわね。私なら2ランク上の冒険者相手なんて勝つことすら無理だと思っていたのだけれどアーバスから言われると勝てるかもしれないと思ってしまうのが不思議なところね。
「来たわね」
相手の姿を確認すると私達は戦闘態勢へと入ると相手の前衛の中にテリーヌ先輩がいないかを確認する。テリーヌ先輩はクラスメイトを引っ張る為なのか前衛の先頭に立っており、見つけるのは簡単であった。
「リンウェル、後は任せたわよ」
私は身体強化の魔法を自身に掛けると全力でテリーヌ先輩の元へと一気に駆け抜ける。テリーヌ先輩も私の存在に気づいたのか前衛集団を離れるこちらへと一気に近づいてくる。
私はテリーヌ先輩が剣の間合いに入ると氷刀に氷属性と雷属性を付与させて一気に振り抜く。一方テリーヌ先輩は私の剣に対抗するべく得意属性である風属性を自身の剣に付与させるとその剣を振り抜いてきた。
お互いに属性を付与した剣は中央でぶつかるとあまりの威力によって攻撃の余波で周囲に衝撃波が走る。
「チッ」
「…………」
結果は相殺。お互い初撃では有効打は与えられずかと言って力で押し切ることは出来ないそんな状況で、お互いに力任せの均衡状態が続く。
「クッ」
ただ、その力任せの押し問答は長く続くことはなくテリーヌ先輩は途中で剣を引くとそのまま後ろへと下がりながら火属性魔法で剣に付いた氷を溶かす。ただ、私は付与された属性の変化を見逃すことはなく、離された距離を再度詰め直して得意の接近戦への攻防へと持ち込んでいく
「その属性は相変わらず厄介ですね」
「でしょうね。でも、残念なことに私の得意属性なのよ」
どうやらテリーヌ先輩は氷属性を扱える人物との対戦経験があるらしく、氷属性の特徴と対応策を知っているみたいね。テリーヌ先輩は個人での1vs1はお望みではないみたいで他のクラスメイトである4年生がいる場所へと回避したいみたいなのだが、それを私は連撃を入れながらステップを使って態勢を入れ替えることでテリーヌ先輩の回避先を4年生が居ないところへと誘導する。
「中々やりますね」
「そうでもないわよ。この程度で満足していたらアイツに鼻で笑われるわ」
私は戦闘しながらテリーヌ先輩の言葉に返答する。アイツとは勿論アーバスのことであり、今は私の師匠と言っていいくらいのクラスメイトね。その実力は一級品であり、相手が災害級だろうが簡単に葬ってしまうほどの実力を持っていて、未だに底が見えない程余裕を持って戦っているわね。
それ程の人物から目標であるハードダンジョンを攻略する為に日々色々なことを学んでいるのである。ハードダンジョンを攻略しようとすると冒険者ランク換算だと最低でもSSランクと言われているので、ここで満足していてはアーバスに幻滅されるだけでしょうからね。
「そうですか。ならこちらも本気でいきますね」
「上等。それでこそ倒しがいがあるわ」
テリーヌ先輩は温存していた魔力を使って自身へ身体強化のバフを掛ける。それに押されなように私も温存していた魔力を開放して対抗する。本当は奥の手として残しておきたかったのだけれどここで開放しないと押し切られる気がしてしまったのよね。
「後はこれもついでよ」
と更に私は雷を纏った氷のフィールドを展開する。それによってテリーヌ先輩の足が一瞬だけ凍るが即座に火属性魔法によって溶かされる。
「氷と雷の2属性のフィールドですか!?そんなものまで習得しているのですか」
テリーヌ先輩はまさか私が2属性を使いこなしていると思わなかったみたいで、展開されたフィールドに驚いていた。テリーヌ先輩は火属性を付与しているからか次々に足に纏わりついてくる氷が塊になる前に溶かしており、氷属性の特性は完全に封殺されると言って良いだろう。ただ、雷属性の方は封殺出来なかったようで地面から伝わる雷がテリーヌ先輩のHPをほんの少しずつ削っていく。
「属性融合っていうらしいんだけどこれ使えると凄い便利って言われて習得したのよ」
「なっ」
私が属性融合について説明するとテリーヌ先輩は驚いた顔をする。私的にはそこまで苦労せずに習得出来たのでそこまで気にしていなかったのだが、Sランク冒険者のテリーヌ先輩が驚くということは本来は簡単に習得出来るものではないのでしょうね。その証拠にテリーヌ先輩は属性融合を使っていないので、後でアーバスにどのくらい難しいのか聞いておいてもいいかもしれないわね。
「何故それだけの実力があってBランクなのですか!?」
「入学時点よりも大幅に強くなっているからよ」
私とサーラの冒険者ランクの判定は魔法学園入学前に行った適正検査が最後で魔法学園に入ってからはまだ受けていないのよね。適正検査とは昇格試験の前段階に当たるものであり、検査用の魔道具を使って自分の冒険者ランクを確認するというものである。この検査結果で自身の冒険者ランクより上のランクが表示されれば昇格試験を受けれるようになるのよね。
魔法学園に入ってからは自分で強くなっている実感はあるものの、Aランク昇格への必要属性数とその属性の習得期間の練習で1日が潰れてしまっているのでそもそも適正検査を受ける時間がないのよね。
一応夏休みに入ったタイミングで受けるつもりではあるものの、そこまで期待していないというのが今の私の率直な感想である。
それにアーバスのギルドがルーファ商会本部にあるせいか、冒険者ランクが足りていなかったとしても実力が足りていると判断されればAランクモンスターの依頼を受けることが出来るからね。アーバスが冒険者ランクは低くても指名依頼があれば上げる必要がないと言っていたのは間違っていなかったと感じさせられる。
「そこよ」
「しまった」
長期戦に持ち込んだせいかテリーヌ先輩の方が先にバテて来たのだろう。私はテリーヌ先輩の属性付与が弱まったタイミングを見逃さずにここぞとばかりに力を入れてテリーヌ先輩の持っていた剣を弾き飛ばす。
テリーヌ先輩はそのことに気づいていなかったのか、私の渾身の攻撃をモロに受けると同時に持っていた剣が弾き飛ばさせる。そのタイミングで付与の力が弱まっていたことに気づいたが、時すでに遅しで私は残った魔力を氷刀に込めて試合を決めに掛かる。更に運は私には味方したようでこのタイミングで雷属性を受け続けたことによる麻痺がテリーヌ先輩に発生してその場から動けなくなる。
「やぁぁぁぁぁぁぁっ」
私は声を上げて気合いを入れながらテリーヌ先輩へ向けて氷刀を振り抜く。抵抗できずに私の攻撃が直撃したテリーヌ先輩は耐えきれず一撃で退場となり、それと同時に試合終了のブザーがなったのであった。




