26話 思わぬ来客
「とりあえず一旦休憩して午後から再開しましょ」
5層目の攻略が終わり、お昼の為に一度ダンジョンから戻ってきた。これからお昼なのだが、いつも通り学食になるだろう。まだアミール達がそこまで稼げてないしな。稼ぎがある生徒は学食ではなく、王都の町中にあるレストランなどで食事をしたりするのだという。ダンジョンの中だと階段とかでしか食べることが出来ない上に携帯できるものしか食べることが出来ないのでよっぽど切羽詰まっている時以外はダンジョンの外で食べるのが理想だろう。
「アーバス学食でいいかしら」
「いいぞ」
アミールが聞いてくる。特には問題ないのでそのまま学食へ行こうとした時に引き止めてくる声があった。
「アーバス様」
「リーゼロッテか」
普段ならメルファスに居てるはずのリーゼロッテが学園まで来ていたのだ。恐らく急用だろう。
「アミール、サーラすまない。用事だからちょっと行ってくる」
「わかったわ。あまり遅くならないでね」
そういうと二人は先に食堂の方へいってしまった。アーバスはリーゼロッテへ向き直る。
「とりあえずここではお話出来ない内容ですので、拠点までお願いできますか?」
「わかった」
多分メルファス絡みだろうと思いながらアーバスは転移で拠点へと一旦戻る。
「ダンジョンで忙しいところ申し訳ありません。通信で済ませようとしたら繋がらなかったもので直接学園まで来ました」
「通信が使えないと思ってなくてな。すまない」
どうやら通信が繋がらなかったらしく、仕方なく学園まで来たとのことだった。ダンジョンで通信はしたことなかったが、どうやら通信が繋がらないらしい。これはトゥールの主要メンバーには伝えておく必要があるな。
「学園まで来たらシエスさんにダンジョンでは通信が使えないことを聞かされてまして、特別に許可を得てあそこで待機させてもらってました」
シエスもメルファス絡みと思ったみたいで学園に入る許可をくれたらしい。後で感謝しとかないとな。
「それで要件はなんだ?」
「今朝のキングレッドドラゴンの件ですが、さっき入った情報によりますと返り討ちに逢い全滅したとのことです」
13聖人二人も派遣してキングレッドドラゴンに負けるのかよ。いくら序列が低いとはいえまさか負けるとはな。政治組はあんまり戦闘したことがないと聞いたことはあるが、まさかここまで落ちぶれているとは思わなかった。
「で、ここからが本題なのですが、全滅した影響でキングレッドドラゴンが進化しまして」
「どこまで進化したんだ?」
13聖2人を倒したんだ、倒した魔力は相当だろうから進化くらいはするか
「レジェンドレッドドラゴンに進化したとのことです」
「2段階かぁ」
レッサーからハイへの2段階ならそこまで問題ないが、キングからレジェンドかぁ。人選が必要だな。バルファーティアでも問題ないとは思うが保険もかけて追加の人員が必要だろう。しかも幹部クラスの人材が必要だな。
「どうすするかなかなぁ」
「私が行きましょうか?」
「いいのか」
誰を派遣させるか迷ってる時にリーゼロッテから提案があった。行ってくれるのは有り難い、何せ幹部クラスは全員色々と忙しいからな
「最近のメルファスは色々とストレスが貯まるのよ。仕事を押し付ける無能と変態ジジイしか居ないんだから。何度燃やしたいかと思ったか」
「……」
リーゼロッテも相当キテるらしい。見た目が10代後半だからセクハラも受けるよな。これはレジェンドレッドドラゴンにストレスの相手をしてもらうしか無いな。
「そういうことなら任せよう。存分に暴れて来い」
「ありがとうございます」
そういえば丁度いいしリーゼロッテに見てもらうか
「そういえばエクストリームでドロップした奴があるんだが見ていくか?」
リーゼロッテならトゥール内で欲しいものがあればそこに持っていってくれると思って提案するが
「エクストリーム?何ですかそれは?」
リーゼロッテから予想外の返事が来た。そういえばエクストリームの存在ってシエスとルーファしか知らなかったな。アーバスは変異種のハイレッドドラゴンの話とエクストリームの話をする。
「まさかハードの上があるとは意外ですね」
「そうだな。俺も最初は目を疑ったよ」
「せっかくなのでドロップしたものを見ていきます」
アーバスは昨日ドロップした装飾品を順番に出していく、雷刀は貸しているし移動速度60%の指輪だけは使うので出さないでおく。
「どれも高性能ですね。生産品でもこのレベルだとSランク以上のモンスターを討伐する必要があると考えるとランダムとはいえお得ではありますね」
「やっぱりそうだよな」
リーゼロッテも同意見だそうだ。Sランク以上のモンスターはしょっちゅう出てくるものではないしな
「これは全て売却するつもりですか?」
「トゥールで使えるものがあればそっちに使って必要ないものは商会を経由して売却するつもりだ」
ルーファならトゥールの備品も管理してるので必要なところにエクストリーム産の装飾品を配ってくれるだろう。そう考えているとリーゼロッテが指輪を1つ手に取る
「この後孤児院に行くのでこの指輪持っていってよろしいでしょうか」
「孤児院にか?」
取った指輪は調理の指輪で倍率はなんと70%もある。どれだけ料理が美味しくなるのかは興味はあるが、アーバスは調理はあまり出来ないのでまだ試してはいなかったものだ。
「えぇ。これで子供達に美味しいご飯を提供出来るのなら良いのかなと思いまして」
孤児院とは戦争孤児やスラム、奴隷から開放した子供達を育てている施設であり、トゥールの管理下にあることからここで育てた子供達はトゥールやルーファ商会などへ配属されるている。ただ、表面上は普通の孤児院なのでそこまで大金を投入することは出来ないので限られた予算で運営する必要がある為に、料理のやりくりが大変と聞いている。リーゼロッテはその料理を改善する為にこれを持っていきたいという。
「いいぞ。キリコには結構苦労をかけてるしな」
キリコとはその孤児院を運営している人物であり、トゥールの幹部の1人である。キリコの仕事は孤児院の運営もあるのだが、1番の仕事は孤児の振り分け。孤児のスキルを確認して、トゥールやルーファ商会へ適切な人員を送り込むのがメインなのである。ただ、限られた予算で運営しているのでリーゼロッテは少しでも良く出来るようにとのことみたいだ。
「ありがとうございます。最近野菜が高騰しているらしくて品数を維持しようとしたらグレードを下げるしかないとキリコが嘆いていたのですよ」
今年は野菜の育ちが悪いとバルファーティアが言ってたな。バルファーティアの村からも孤児院へ差し入れもしているそうなのだが、それでも尚足りてないらしい。
「高騰している間だけ差分の追加予算を組む必要があるな」
「わかりました。次の会合には間に合わせるようにします」
ゆくゆくは組織に加入する子達だからあまりひもじい思いはさせたくはない。予算はこの装飾品の売却の資金を使ったら問題ないだろう。性能関係なく最初は高値で取り引きできるだろうからな。先にお金が必要なら後で補填してもらえばいいし
「他は必要なものはないか?」
「いえ、私が知っている限りでは必要そうなものはないですね。後はルーファに任せるのが無難かと…」
早急に必要そうなものはなさそうだな。後はリーゼロッテからメルファスの細かい情報と愚痴を聞きながら今後の対応について話しておく、セクハラについては後で教皇とも話をする必要があるなこれは。
「お話が長くなりましたね。私はこれで」
「また何かあったらいつでも来ていいぞ」
「その時はまたこちらへきます」
リーゼロッテはそういうとメルファスへと戻っていった。時刻はあれから30分経過していた。少し話過ぎたかな。
そのまま転移で戻るとアミール達は昼食を食べ終わったようで雑談をしているようだった。
「アーバス。おかえりなさい」
「戻ったぞ」
「結構時間掛かったわね」
「そうだな。間に合ってよかったぜ」
10分程度で終わると思ったがこれは想定外だったが、昨日も出発は1時間後だったので今から食べても間に合いそうだ。
「それにしてもあの人は誰なの?」
「お姉さんですか?」
お姉さんね…。年齢的には確かにそれくらいの差だが、実年齢にはもの凄い差があるんだよなぁ。そのまま頷いても良かったのだが、後々ややこしくなるのも嫌だから否定しておくか
「知り合いだよ。荷物を届けに来たらしくてあそこで待ってたらしい」
「そうなの?なら直接連絡取ればいいじゃない」
俺もそう思ってたんだけどな。まさか仕様で繋がないとは思っていなかったわ
「アミール。ダンジョンは通信が使えないんですよ。だから急ぎの場合は伝言を残すかああやって特別に許可を得て入るかするしかないのですよ」
「ダンジョンって通信が使えないの?知らなかったわ」
アミールも俺も同じリアクションをしてるな。知らなかったらびっくりするわな
「後は、救助や転移陣以外の転移も使えないとも言われていますね」
ダンジョン内って転移使えないんだ…
複数人で闇雲に探す時は転移があると便利だが、そうでないときはいらないもんな。救助は、HPが0になれば強制的に入口へ戻る仕様だからそもそも必要ないか。
「もしかしたらダンジョンって別世界かもね」
「それはあり得るかもしれないな。結構解明されていない部分が多いしな」
ダンジョンって結構解明されてないこと多いんだよなぁ。一番下のレベルもそうだし、索敵が効かないことや階段ではモンスターに襲われないことも上げればきりがなさそうだ。
「でも今はダンジョンに入るしかないので仕方ないですけどね」
「そうだな」
それらは異世界かどうかまではわからないが、今はダンジョンに行くしかないからな
「さて、アーバスも食べ終わったしダンジョンへ行きましょうか」
昼食も食べ終わり、午後の攻略の為にダンジョンへと戻るのだった
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