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251話 エキシビション。やはりアミールの壁は厚い

「アーバスくん、そう言えばアミールさん達に何か言ったのですか?」


「全力でやって来いと言っただけだぞ」


もう少しで試合が始まるというタイミングでシエスが2人に何か言ったのかを聞いてくる。入場の際に2人共自信ありな顔をしていたからそれでだろうが、アーバスとしてはどちらかに必勝法を伝えたとかそういうことは一切としてないんだよな。ただ、模擬戦は時々2人でしていたとはいえ、こういう大きな舞台で戦うことなんて滅多にないだろうから楽しんで来いという意味で言っただけだしな。


「それって手加減なしでやるのではないのですか?」


「私もそんな気がしますね」


そんな心配する2人をよそ目にカウントダウンが始まる。アーバスとしては手加減なしでも問題ないとは思うんだけど何か問題があるのだろうか?そんなことを考えていると試合開始のブザーがなる。


「2属性の属性付与!?しかも2人共ですか」


「リンウェルいつの間に習得したのですか!?」


試合開始と同時に2人は武器に属性付与を掛けるのだが、その光景に観客席どころか横に座っているシエスとパーティーメンバーのサーラも驚く。


「間に合ったのか。流石だな」


そんな中アーバスだけは驚くことなく2属性の属性付与が出来たことに満足しながら称賛していたのである。


「アーバス、教えていたのですか?」


「リンウェルに相談されたからな。時間も無かったからスパルタで教えたが間に合わせてくるとは思わなかったな」


実はリンウェルが炎属性を習得した後に属性融合を覚えたいという相談があったのである。アーバスとしてはアミールやサーラにも教えたので断ることなく教えようとしたのだが、リンウェルから個人戦決勝までに習得したいというオーダーがあったのである。

本当ならサーラの時みたいに時間を掛けて覚えてもらうつもりだったのだが、個人戦決勝まで時間が無かったのもあって時間が許す限り厳しく教えていたのである。間に合うかは微妙なところではあったのだが、間に合ってひとまずホッとする。


「属性はリンウェルさんが有利ですか」


「まぁこれでもアミールに勝つには厳しいとは思うけどな」


アーバスはそんなことを言いながら試合を見守る。なんせアミールくらいなら属性の不利有利くらいは関係なくひっくり返してくるからな。

アミールは2属性の属性付与をしてきたリンウェルに少し驚きはしたものの、不敵に笑うと一気に距離を詰めて剣を振るう。リンウェルはそれを槍で叩き落とすように攻撃を弾くとアミールに突きを放つものの、アミールはステップでそれを回避する。リンウェルは逃さまいと槍を横に薙ぎ払うが、アミールは既にリンウェルの射程圏から脱出しており攻撃は空振りに終わる。


「初撃は引き分けですか」


「いや。リンウェルの負けだな」


「そうなのですか?」


「最初のチャンスを決めきれなかったからな。あれ以上のチャンスは中々回って来ないだろう」


なんせアミールの最初の一撃を叩き落としたタイミングでアミールの態勢が少し崩れたのだ。リンウェルもそれを理解していたみたいでカウンターで最高速の突きを入れたものの、アミールはバランスを崩したのを利用してステップで攻撃を躱したのである。もしこれがクロロトやロインなら攻撃が入って試合終了となっていただろう。


(思っていた以上に実力差があるとは思わなかったな)


今ので勝負が決まったと思っていたアーバスはアミールの身体能力の高さを改めて実感する。アーバスはアミールの身体能力の高さを知ってはいたものの、リンウェルが属性融合を覚えて2属性の属性付与を覚えれば勝てるまではいかなくてもそこそこ試合になると思っていたのであるが、まさかそのアテまでも外れてしまうとは思ってもいなかったのである。


「これはリンウェルさんは相当不利ですね」


「元から不利なんだけどな」


リンウェルが不利なのは元々の話だ。そこをどうやって隙を作るのかが勝負の鍵だからな。

アリーナではアミールがもう一度距離を詰めて攻撃をしているところであった。アミールは連撃でリンウェルの態勢を崩したいところなのだが、攻撃を見切られており、最小限の動きだけでアミールの剣を捌いていく。


「なんかアミールさんの攻撃を上手く捌きすぎていませんか?」


とシエスがアーバスへと聞いてくる。リンウェルの槍捌きは非常に練度の高いものであるし、パーティーメンバーであるアミールが相手とはいえ流石に効率良く捌き過ぎているのではないかとシエスは思ったのである。


「代表戦の暇な時間アミールがリンウェルと模擬戦していたからな。そのせいだろうな」


団体戦の練習の空き時間や放課後に近接戦の練習としてアミールに誘われてリンウェルと模擬戦をしょっちゅうやっていたのだ。その模擬戦はアミールが全勝していたものの、リンウェルはそこから対策をしていたのだろうな。もしかしたらその模擬戦の時から決勝を想定して色々と対策を練っていたのかもしれない。


「それでもアミールには氷属性がありますから連撃を受け続けるのは良くないのではないのですか?」


サーラの言う通り、アミールの得意属性である氷属性は攻撃によって氷が付着し、付着した氷によって動きが阻害されるといった特徴がある。そんな氷属性の攻撃を受け続けるとアミールが更に有利になってしまうのではないかと心配しているみたいだな。


「よく槍を見てみろ。氷の付着は起きてないぞ」


「本当ですね。でもどうしてですか?」


アミールを連撃をリンウェルが捌いているところのなので見えにくいが、リンウェルの槍には氷が一切として付いていないのである。リンウェルの属性は雷なので本来なら氷の付着が起こっていないとおかしいのだが、付着していないことをサーラは疑問に感じる。


「アーバスくん、もしかしてですがリンウェルさんの習得した属性って炎属性ですか?」


「よくわかったな」


「それ以外に氷属性のの氷を対処出来る属性はありませんからね」


シエスはその答えに簡単に至ったようでアーバスに聞いてくる。シエスはアーバス達がどの属性剣をパーティー内で持っているのかは知っているものの、誰が習得しているかまでの詳細までは知らないからな。

火属性は水属性には不利がつくので厳しいと言われる一方で炎属性は氷属性に不利がつくことには変わりないが、氷属性の特徴である氷の付着が起きないのでそこは他の属性と比べて有利であると言われているな。


「でも、それは不利属性を抱えているリンウェルが不利にならないですか?」


「それはアミールもだな。お互いに1つずつ不利属性を抱えているせいか属性面では五分だな」


リンウェルが炎属性が氷属性に不利がついているのに対してアミールは氷属性が雷属性に不利がついているからな。なのでお互いの2属性による相性はそこまで変わらないのがアーバスの見立てだな。


「なんかリンウェルさんの槍に氷がついているのは気の所為ですか?」


「アミールが出力を上げたからな。クロロトと同じだ」


そんなことを言っていると突然としてリンウェルの槍に氷が付着しているのが見えたのである。アミールが氷属性の方の出力を上げたせいでリンウェルの炎属性が氷を溶かす速度が追いつかなくなってしまったのだ。

リンウェルは慌てて炎属性を出力を上げようとするが、習得したばかりの炎属性では溶かし切るのは無理だったのか徐々に氷が大きくなっていく。そして、氷によってリンウェルの動きが鈍くなったところでアミールは今まで見せていなかった速さでリンウェルの槍を弾くとそのままリンウェルを斬って勝負を決めたのだった。

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