25話 レベル7初めてのボス戦
「さて、5層目ね。どんなモンスターかしら」
「お昼には戻れそうですね」
「そうだな」
あれからもアミールとサーラをメインに戦いながら5層目まで辿り着いた。道中はコボルトとゴブリンばっかりであったが、魔法の練習も兼ねながらやっていたので昨日よりは少し遅いペースでここまでたどり着くことができた。
「中級魔法は難しいですね。雷刀を持った状態でも中々発動できないです」
「他の魔法もそうだが、中級からは一気に発動する難易度が上がるからな」
初級魔法を習得したサーラは現在中級魔法を試しており、まだ発動までは到らないが何回も練習しているところだ。
「雷刀持ってるのに中級魔法が発動出来ないってどういうことなの?」
「使用可能と発動はまた違うからな」
属性刀の特徴はあくまでも雷属性の使用可能。そこに習熟度の強化などがあるのだが、あくまでも使用可能にするだけなのだ。魔法の発動となれば別で魔法にするには必要量の魔力を込めたり魔法をイメージすることで発動することが出来るのだが、そこに習熟度が重なってくる。要は雷魔法を使い続ける必要があるのだ。初級はそれが比較的少ないので短期間で習得ができるのだが、中級以降は必要な習熟度がかなり多いので結構な頻度で使い続けないと習得出来ないのである。
「でも、初級魔法は雷刀を装備してたら発動できたじゃない?」
「初級魔法は習熟度関係なくて雷刀を装備している間だけは使えるからな」
中級以降は習熟度もないと発動出来ないのだが、初級魔法だけは例外で雷魔法の経験がなくても属性剣を装備しているだけで発動できるのだ。なんなら魔法を使ったことがなくても使うことができるからな。ただ、装備を外したら習熟度が足りていないと雷魔法の使用はできないのは注意だな
「でも、属性付与だと簡単に強力なのが発動出来るわよね」
「そりゃ魔法の発動と属性付与はまた別だからな」
属性付与とは剣に指定した属性を付与することで、これは例外のうちの1つである。属性付与の場合はその属性を付与することに対しての補助効果が凄まじいのである。簡単に言えば初級魔法しか使えない状態でもその属性の付与を行えば剣の補助だけで中級魔法以上の火力の属性を使えてしまえるのである。しかも習熟度まで増えるおまけ付きなので前衛にとっては使ってるだけで簡単に習熟度を稼ぐことができる代物なのである。
「それならサーラにも属性付与を使ってもらったらいいじゃないの?」
「それよりも使えない中級魔法を使おうとするほうが習熟度は遥かに伸びるらしい」
これは俺も原理はよくわかってないのだが、使える魔法を連続で使用するよりも、使えない魔法を使用するほうが何故かその魔法の習得速度が早いのだ。
「へぇ〜。不思議ね」
「ただ、余裕のある時限定だけどな」
魔法の発動自体は失敗している間は棒立ちと一緒だしな。使えない魔法の方が伸びる説としては失敗してもそれだけ魔力は使っているので、その魔力の消費が初級魔法よりも中級魔法の方が多いことから消費魔法が多ければ多い程良いのでは?とのことである。
「だったら上級や最上級魔法を使った方がもっと習熟度が早いんじゃないの?」
「不思議なことにな、覚えている魔法より1個上じゃないと駄目なんだよ。だから初級魔法しか使えないサーラは中級魔法じゃないと駄目なんだ」
「そうなの?何か意外ね」
ちなみに属性剣を装備してやっと初級魔法が使える場合は初級魔法を使わないと習熟度が伸びないという実験結果がある。属性剣を装備したからといって中級魔法ばっかり使っていてはいつまで経っても初級魔法を覚えないのである。
「ちなみにアミールは氷魔法をどこまで使えるんだ?」
そういえばアミールが氷属性が使えること以外に情報が一切ないな。さっき範囲で凍らせる魔法を使っていたけどあれってどのくらいのレベルだろうか
「感覚で使ってるからわからないわね。魔力依存だし」
「マジか…」
でた、自分がどこまで使えるのかわからないやつ。前衛だとたまにいるんだよなぁ。前衛だから特定の魔法しか使わないので普通の魔法が使えない場合が多いんだよなぁ。とアーバスがそう思っていると横からサーラがフォローする。
「多分ですけど、アミールの場合最上級を越えて固有のところまで来てると思いますよ。」
「そんな状態か」
「はい。相性次第ではハイレッドドラゴンを倒せるくらいには実力がありますから」
ハイレッドドラゴンといったらAランクだぞ。相性次第とのことだから冒険者でいうとBランククラスはあるのだろう。将来有望なBランクならメルファスでも議題に上がるはずだ、そんな有望な氷属性の冒険者がいるわけ…
あったわ。1人だけ心当たりがあるわ
「もしかして氷結って…」
「アミールのことですね」
当たりかよ…確か最少年のBランク冒険者コンビの前衛の別名が氷結だったな。つまり、相方であるサポートの女神がサーラか。
「シエスの奴どんなクラス分けをしたんだよ」
小声でシエスに対して愚痴をこぼす。確かに伸びしろのある人材を要求したのはこっちだが、Bランク冒険者2人はやりすぎだろ。
「まぁ他のクラスの代表もBランクやCランク冒険者クラスの実力はありますからね」
Cランク冒険者クラスのところには複数人Cクラス冒険者クラスを入れたんだろうと思うが、それでもやりすぎだぞ。しかも2人共Bランクだが、Aランクへの昇格が近いBランクだからな。リーゼロッテの資料には確かにBランク冒険者クラスとは書かれていたが、本当にBランクとは思わなかったわ。
「そういう訳だからわからないのよね私」
「そりゃそうだな。まぁでも、確かにその実力なら固有まで行ってる可能性は十分にあるな」
「そうですね。ただ、普通に測れないのが残念ですが…」
感覚依存ならどのレベルかわからないな。というかそのレベルなら氷刀を使う必要はあるのか?と思ってしまうのだが、得意な氷属性を伸ばしたいのならありなのかもしれないな。
「そんなことは置いといて行くわよボス戦」
アミールは自身がわからはい話に飽きたのか階段を降りて大部屋へと足を進める。アーバス達もその後に続き、全員入ると同時に白い光が中央で輝きだす。
「やっぱりコボルトよね…」
そこに現れたのはコボルト5体でその内1体はハイコボルトであったが、それは昨日にゴブリンで見た光景だった。
「やっぱり1体ハイコボルト混ざってる?」
「あぁ。1体だけ大きい奴がそうだな」
「あれがそうなのね。そいつだけ警戒して戦うわね」
アミールはそういうとコボルト達へと駆け出していった。
「それにしてもハイコボルトの情報はいらないのかなぁ」
大抵のモンスターの行動や弱点を知ってるアーバスだが、アミールはそれを聞く前に走り出してしまう。レベル6での最下層の時のことからモンスターの内容については聞くようにはなったが、詳細までは聞こうとせずに走り出してしまうのだ。アーバスが困った表情をしているとサーラが
「アミールはああいう性格なので、いつもクエストを受ける時に詳細な情報を聞いていたんです」
「なる程な。モンスターがいると狩りたくなるタイプか」
「見も蓋もない言い方するとそうですね」
狂人タイプかよ。身内にもそのタイプはいるが確かに事前に共有しておかないと敵を目の前にしたら話を聞いてくれないもんな。
「ところでハイコボルトはどんなことをしてくるのですか?」
サーラがそんなことを聞いてくる。そうだよな、普通はどういうモンスターか聞くよな
「ハイコボルトはゴブリンと違って魔法攻撃なない変わりに自身も含めて味方全体にバフをかけるんだよ。そこに統率も合わさって全体的に強い感じかな。弱点は前衛が相手をしている間に魔法攻撃で数を削るのが1番いいんだが……関係ないな。」
「そうですね」
既にアミールはコボルト達を凍り漬けにしており、誰も光に帰ってはいないものの全員動きが取れなくなっており、既に勝敗は着いていると言っても過言でない状況だった。ハイコボルトは魔法を使えないしな。サーラのバフもなしに優勢を取れている辺り戦闘力の高さと氷属性の相性の良さで何とかなっているのだろうが、情報を入れて戦えないとこの先苦戦するだろうな。
そんなことを考えているとコボルト全員が光に帰っていた。ハイコボルトは一撃では倒れなかったのだが、そこは手数で押し切っていた。
「お疲れ様」
アーバスはアミールに声をかける。何もしていないから感謝の意味も込めて労う。
「全然、準備運動にもならないわ。まだ模擬戦をしていた方がマシね」
アミールは氷漬けにしてしまってそんなに戦えないので不満げな様子だった。魔力の消耗量を確認するがそこまで減っておらず、午後の活動に支障をきたすことなく余裕で攻略出来そうな状態だった。
「あれでも苦戦するんだぞ。前衛1人で攻略できるもんじゃないからな」
「その割には弱かったわね」
「普通の人はモンスターを氷漬けに出来ないからな」
そもそも上位属性なんて扱える学生がそこまで居ないんだよ。アーバスは上位属性は使えるが、他はアミール程の高レベルの氷属性は使用することは出来ないからな。
「使えるんだから仕方ないでしょ。それよりと宝箱よ。今回は何が入っているのかしら」
ボス戦だったので当然の如く宝箱がドロップしているのだが、通常のボスからは良いものは今のところドロップしてないんだよなぁ。今までの当たり全部レアモンスターからしかドロップしていないのでそこまで期待はできないな。
アミールが宝箱を開けると中から出てきたのはブレスレットだった。
ブレスレットのドロップ率は他の装飾品と比べると低い方であるが、倍率やスキルのランダム制は他の装飾品と変わりないなのでブレスレットいいスキルを引くのは難しかったりする。
「アーバス。何が付いてるか確認できるかしら」
アミールから鑑定の依頼があったので確認する。そこに付いてたスキルはやはりそこまで良いものではなかった。
「調理スキルだな。倍率は5%とそこそこ高い方だけどな」
付いていたスキルは調理5%だった。これは料理系をする際に調理速度や美味しさがアップするスキルで、料理人からは重宝されるスキルなのだが、戦闘系の人間からするとハズレだな。ただ、戦闘系でも調理したりする人もいるのでそういうところから需要はあるので意外とそれなりな値段で売買される代物である。ブレスレットだから指輪よりも価値があるしな。
「調理系かぁ。私達からするとハズレね」
「料理しないから仕方ないですね」
学生は食堂で美味しいご飯を食べれるので、ご飯を自分で作ろうとする学生はそこまでいなく、大体の学生はすぐに売却してしまうのだ。
「仕方ないわね。戻りましょ」
とりあえず切り替える為に一旦戻るのだった。