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229話 想定外の展開(3組視点)

「ターニー、準備は出来ているか」


「バッチリです。これである程度は時間を稼げるかと思います」


ターニーは本陣にある仕込みを終えて後衛に戻るとと前衛の指示を出し終えたのかクロロトがターニーの元へとやってくる。


「いよいよだな」


「そうですね。勝てるかはわかりませんが今出来る最善の策は用意したつもりです」


ターニーは昨日の作戦会議の後もずっと1組に勝てないか1人で作戦を立ててはシュミレーションボードに向かって作戦を考え続けていたのである。その結果現状の3組の出来る最善の結論を出すことができ、クロロトの承認を持って当日実行することとなったのである。


「ありがとうターニー。ここまで来れたのはお前のお陰だ」


「その言葉は団体戦が終わってからにして下さい。まだ最終戦が残っていますからね」


「そうだったな」


クロロトはターニーへ感謝を伝えてくるが、それは全試合が終わってからだ。何せ3組は決勝へ進んだ上に優勝が狙えるかもしれない位置にいるのである。仮に負けたとしても最終戦に勝てば2位は確実なのでターニーとしてはこれからが正念場なのである。


「それに今気を抜くと最終戦を2組みたいに落としますよ」


「それは困るな」


クロロトはそれを聞いて気合いを入れ直す。せっかくここまで来たのだからいい成績で終わりたいとターニーは思っているのだ。その為にもクロロトには最後まで油断せずに戦って欲しいのである。クロロトもターニーに頭を下げるくらいなので勝ちたい気持ちは同じだろう。であれば誰が相手であっても全力でぶつかってほしいとターニーは思っているのである。


「なぁ、ターニー」


「どうしましたか?」


「俺はちゃんとクラス代表を務めることが出来ていると思うか?」


突然クロロトがそんなことを聞いてくる。ターニーは少し考えるように目を瞑ると


「そうですね。代表戦前のクロロトは正直嫌いでした。なんせ身分だけで差別するような人でしたからね」


「……………」


「ですが、今はそうではありません。ちゃんと3組が勝つ為に努力と協力をしてくれる立派なクラス代表ですよ」


ターニーはこの1ヶ月のクロロトの態度を見て一定の信頼が出来ると判断したのである。まだ完全に信頼してはいないもののの、この団体戦では自身の力を存分に発揮すると決めたのである。


「そうか。ありがとうターニー」


「そんなことを考えている暇があればアミール嬢とリンウェル嬢を倒してきて下さい。ライバルなんでしょう?」


「向こうはそう思ってないがな」


クロロトはそんなことを口には出してはいなかったが、ターニーはアミール嬢とサーラ嬢をクロロトがライバル視していることを察していたのである。クロロトはそれに直接言及することは無かったが、その言い方はクロロトは本当にライバルだと思っているのだろう。


「さて、試合が始まりますよ。位置について下さい」


「あぁ。よろしく頼むぞ」


と言ってクロロトは去っていくが、よろしくなのはターニーの方だ。今回用意した秘策は前衛の腕に掛かっているのだから。




「おいターニー。これはやべぇぞ」


前衛戦開始早々クロロトから泣きの通信が入ってくる。前衛にアミール嬢が出てくるのは想定済みでターニーはアミール嬢を止める為にクロロトを中心とした主力メンバーを割り当てたのだが、ここに来て前衛にリンウェル嬢が加わったのである。リンウェル嬢は初等部では前衛の槍使いとしてトップクラスの実力があったらしいのだが、元々指揮官希望だったみたいでこの学園に入ってからは後衛で指揮官をするところしか見てないので前衛の腕は鈍っていて前衛に出て来ないとターニーは読んでいたのである。

しかし蓋を開けてみれば前衛の腕は鈍るどころかクロロトに迫るような実力で槍を振り回して次々と3組前衛にダメージを与えていく。


(しかも、雷属性ですか)


リンウェル嬢は指揮官として回復やバフばかりでその適性属性を知ることが出来なかったのだが雷属性だったのも誤算だった。雷属性はその攻撃速度と追加効果である麻痺も含めて氷属性と同じく対人最強と言われる上位属性である。主力をアミール嬢に割いてしまった以上残りの戦力でリンウェル嬢を止める必要があるのだがそれは非常に難しいだろう。


(しかもそれは聞いてないですね)


前衛でクロロト達が食い止めてくれているアミール嬢であるが、その手に持つ剣には氷属性の他に雷属性も混ざっており、2属性を使っての攻撃にクロロト達のHPは想定よりも速いペースで削れていっており、回復が全く追いついていないのである。


(どこまで隠していたのですか)


ターニーはここまで戦力を隠しきっていたアーバスに心の中で文句を言う。アミール嬢を始めとしたクラス全体の実力が上がっており、しかもアミール嬢を全試合前衛配置というだけでも他クラスからしたら脅威でしかないのにその上で隠し玉まであるなんてターニーは予測していなかったのである。


(つまりAクラスに対しての立ち回りは手を抜いていたとのことですか)


アーバスが準決勝前の最初の会議で全力でAクラスを叩くと言っていたのでてっきり今までの試合内容が全力かとターニーは思っていたのだ。その状態でも勝ち目が無かったのにここに来て主力級の前衛の追加とエースの追加属性である。


(こんなことなら引き分けじゃなくて戦うべきでしたね)


協定の関係で準決勝は引き分けで済ませたが、こんな隠し玉があるのなら準決勝で戦って確認しておくべきだったとターニーは後悔する。ただ、決勝進出が確定している状態でアーバスがここまでしてくるかは不明ではあるが


「ターニー、動くにしても早くしねぇと持たねぇぞ。どうする」


そのクロロトの一言にターニーは現実へ引き戻される。こうしている今も前衛は削られており、退場者はまだ出てないがこのままいけば前衛の崩壊まで時間の問題だろう。


(後衛は…………やはり修正してきましたか)


ターニーはまず弱点となっている1組の後衛を守る障壁を確認する。1組の障壁は過去のどの試合よりも強固な障壁を展開しており、3組の魔法で総攻撃をしたとしても1撃は耐えられるだろう。1組の後衛は障壁以外はバフが多数を占めている構成だが、これはサーラ嬢からのオートキュアがあるからだろう。実際に1組の前衛は優勢なのもあってかサーラ嬢の回復だけで間に合っているくらいだ。


(決断するしかないですね)


ターニーはこれ以上は前衛が持たないと判断し、あらかじめ決めていた作戦を実行することを決意する。


「これより作戦を実行します。作戦開始は1分後にしますのでクロロトは全員へ作戦実行の通達をお願いします」


「わかった。確実に決めろよ」


ターニーの決断にクロロトは何も文句を言わずに決定に従う。これが対抗戦の時だったら一蹴されて終わりだったので本当に変わったんだなとターニーは思う。


(これで優勢を取れればいいのですけどね)


1組に勝つのは不可能だとは自覚しているものの、少なくともこの1戦で勝つ為の希望は残しておきたい。ターニー達後衛は障壁を維持する担当以外の全員が魔法の発動の態勢へと入る。


「全員放て」


全員がターニーの掛け声に各々最高威力の魔法を解き放つ。解き放った魔法は戦闘中の前衛へも向かっていき、その中心で炸裂する。


(結果はどうですかね)


ターニーは結果を確認する前に後衛達に指示を出して消えかかっていたバフを再度展開させるのだった。

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