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206話 準決勝初戦を終えて

「……………」


我はS1組の圧倒的な試合展開を見て呆然と試合を見ているとそのまま試合終了のブザーが鳴り響いたことにより現実へと引き戻される。

ただ、引き戻されたからといって呆然とした表情が戻ることはなく、むしろ引き攣った表情も加わった状態で試合が終わったアリーナを見つめるだけであった。


「ターニー、試合を見てどう思う」


「圧倒的でしたね。Sクラスの首席ってこんなに強かったんですね」


ターニーはアミールの戦いぶりを見てそういった。そういえばアミールは対抗戦では最終戦でしか前衛に出ていなかったのでターニーがアミールの戦闘を見るのは初めてだったか


「そうだ。対抗戦の最終戦では退場したが、1vs1であいつに勝てる者は他の組にはおらぬからな」


「なんか実感がこもっていますが、もしかして対戦したことあるのですか?」


「初等部の時にな。その時よりも更に強くなっていて完全に別物だけどな」


我は初等部の時に対戦したことがあるが、アミールは初等部の時から1人で無双してくるくらいには強かったからな。対抗戦では2組戦で退場したものの、1組の後衛が崩れなければ誰もアミールを止めることが出来ずに勝っていただろう。


「もしかしてクロロトが対抗戦の初戦で総力戦を仕掛けたのは」


「お前が思っている通りだ。アミールが出てくる前に前線を崩壊させておかないと押し負けるからな」


先の対抗戦で我がターニーの意見を無視した上で総力戦を仕掛けたのはそれが理由であった。我が初等部の時に戦ったいずれの試合もアミールは初戦から最前線に立って相手を倒しまくってたからな。それでいて大将はサーラなのでアミールを倒しても試合が終了しないというおまけ付きでだ。そんなものを見せられていたら今のAクラスみたいに1組戦は総力戦を仕掛ける以外の選択肢を我には思いつくことが出来なかったのだ。

現実はそれよりもやばい奴によって狙撃されて負けたがの。ただ、それが原因で今のクラス内の分裂に至ってしまったのでそこは反省する必要があるな。


「何故そんな大事なことを言わなかったのですか?」


「それを聞いたお前は我の話を信じることができたか」


「それは………いえ確かにそうですね」


ターニーは何故我がそう言わなかったの理由を返さえると反論しようとして納得してしまう。初戦で首席が前衛で殴り込みなんて言われてもあの時のターニーなら我がどれだけ真剣に言っていても絶対に信じなかっただろう。


「この試合で弱点みたいなところはあったか?」


我は話題を変えるためにターニーに質問する。ターニーは試合を思い返した後


「強いて言えばアミールさんに回復が付与されていなかったくらいですが、それ以外に目立った弱点はありませんでしたね。Aクラスを通路に押し込めた時点で勝利と言っても過言でありませんね」


アミールには回復の代わりに障壁が付与さていたが、あれはサーラが魔法を2つしか同時に展開出来ないことの弊害である。ただ、1組はアミールが前線を倒している間に後衛の展開と前衛の増援準備が出来ていたのでアミールへ回復が付与されるのは時間の問題だっただろうな。通路のせいで最大で3人としか同時に戦えないとはいえ、それでアミールがノーダメージでAクラスを壊滅させたところには乾いた笑いしかでないがな。


「サーラさんが本陣からバフを掛けていなかったのは次のA3組戦を見越してでしょうね」


「そうだろう。次の試合はサーラが大将を務めるのだろうからな」


サーラは初戦では後衛に混ざっていたが、本来は大将なのである。A3組は先のSクラスの対抗戦は観戦してもいないし情報もないはずなので次の試合もニールが大将だと思うだろうからな。なんせサーラと障壁担当と護衛の前衛を2人置いておくだけで大将の護衛が完成した上で本陣からバフと回復が飛んでくるのだ。普通は本陣からバフと回復は飛んで来ないのでその分だけ1組は有利だの。


「ターニー、お前なら今までのことを見てS1組に対してどう作戦を立てる?」


「フィールドがこのノーマルフィールドなら自軍本陣前の通路に罠を大量に仕掛けての総力戦ですかね。それが1番勝算がありそうですが、それでも勝率は低そうですね」


「だろうな。アミールを止める為に大量の犠牲が必要なのに大将ではないなんて理不尽すぎるわな」


自軍本陣で総力戦か。確かにそれならこちらは自軍前の大きなフィールドで戦えるのに対してS1組は通路に前衛を展開するしかないのでこちらが数的優位を取れるだろうな。ただ、ここまでしてもターニーの試算では勝算が低いようだったが、それはクロロトも同様の意見だった。


「やはり次も勝つしかないですね」


「それしか無いだろう。その為の作戦は決まっているのだろう?」


「はい。でも、正直なところもう少しA1組の実力を見たかったですけどね」


とターニーはそう言いながらアミール達が居なくなったフィールドを見る。ターニーとしてはもう少し戦闘が長引いてA1組の連携や劣勢からの建て直しを見たかったが、それを見る前に試合が終わってしまったからな。


「仕方ない。我々もやれるだけのことはやるぞ」


目標は決勝への進出だ。決勝さえ上がれば無条件降格の危機は少し回避出来るだろうからな。我とターニーは会場から出ると急いで次の作戦の準備へと取り掛かるのだった。



「勝ったわよ。アーバス見てくれた?」


「索敵からだけど見ていたぞ。1人で全滅させるとはやるな」


アーバスはアミール達を見送った後はニールと雑談をしながら戦況を確認していたのだ。アミールの立ち回り自体は障壁の強度も加味して戦っており、試合全体を通して致命的な隙は見られなかった。

ただ、リンウェルはアミールに暴れて来いとは言ったものの、ジャック達の主力が来るまでの時間稼ぎをさせるつもりだったみたいで。まさかバフと障壁の付与だけで相手クラスを全滅させるとは思っていなかったけどな。


「ウチの判断はどうやったんや?やっぱりアミールを1人で突撃させるのは失敗やったか?」


「そうは思わないな。あの状況であればアミールに突撃させても問題なかっだろう。サーラのバフを回復から障壁に切り替えたのも良かったが、強いていうなら後衛を展開した時点で回復を付与するべきだったな」


リンウェルは後衛を展開した後は突撃の様子を伺ってかアミールに回復のバフを入れてなかったからな。

あれは前衛がアミールだからノーダメージで済んでいたが、これがジャックやニールだったらダメージを負って気絶していたかもしれないだろうからかな。もし仮にアミールに回復が掛かっておらず何かの拍子の連撃を食らっていたら退場になるような致命的なダメージを負っていたかもしれなしな。アミールが優勢に立ち回ってくれていた以上は後衛は1人だったとしてもしっかりとサポートをする必要があるだろう。それがクラスを引っ張る人物だったら尚更である。


「それはそうやな。どうやらウチも少し慢心があったみたいだな」


「そうだな。ただ、反省会は放課後にして今は勝てたことを喜ぼうか」


なんせ反省会はいつでも出来るが、勝利した雰囲気は勝った今しか味わうことが出来ないからな。反省会を開くくらい反省するような点は無かったのだが、アミールやリンウェルには思う所があるようでそこは不満を解消させておかないと次の試合まで引き摺るのも良くないことだしな。アーバス達は勝ったクラスメイトと合流すると初戦の勝利を喜び合うのであった。

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