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204話 初戦までの間

「アーバス殿本当に助かった」


「何を言っている。お互い様だろう?」


昼休み、初戦に見事勝利したクロロトは1組に出向いてアーバスに感謝の言葉を伝えに来たのだ。アーバスとしてはこのまま連勝してくれれば最終戦は戦わなくて済むのでこちらにもメリットはあるから協力しているだけなんだけどな。


「そうでもない。もし、アーバス殿が協力してくれなければ初戦を落としていたかもしれぬからな」


「そうでもないさ。ターニーが優秀だから俺が居なくても何とかなったと思うぞ」 


アーバスは何度か作戦会議をして思ったのだが、ターニーが参謀として優秀すぎるのだ。これはS1組の参謀であるリンウェルが参謀としてそこまでなので参謀の期待値が低いことも一因であるが、それを差し引いたとしてもターニーは優秀な方の部類であるだろう。もしかしたら3組は作戦指揮などが優秀なクラスなのかもしれないとアーバスは作戦会議に参加してそう思っていた。


「いや。アーバス殿が居なければ俺はターニーを信用する事なんて無かっただろう。それこそ今日みたいな作戦は却下していたはずだ」


どうやらクロロトはそこまでターニーを信用しきっていなかったようで仮にターニーから今回のような奇抜に見える作戦を提案されていたら断っていたみたいだった。同じ参謀であるリンウェルも理解出来ないくらいだったから誰に提案してもそうなっていただろうな。


「クロロトは今でもその考えなのか?」


「いや。今回のでターニーが非常に優秀なことがわかったからな。決勝では奴に全作戦を任せた上でその通りにするつもりである」


どうやらクロロトのターニーに対しての信頼が凄く上がったようだった。戦力的には厳しい3組ではあるが、ターニーがいればひょっとすれば最下位は回避出来るかもしれないな。


「押しかけ来てこんなことをいうのはアレだがアーバス殿はこれから試合だろ?作戦会議とかはしなくて良いのか?」


「こっちは大した作戦でもないからな。それに今ここで作戦を共有すれば相手クラスに漏れる可能性もあるからな」


現在4組が午後の試合の為に昼休みを丸々使って作戦の共有をしているのだが、1組はそんなことをせずにいつも通りの昼休みを過ごしているのである。これは作戦がそこまで大したことが無いのもあるのだが、それ以上に作戦が相手漏れることを警戒して敢えてアーバスは休憩時間に作戦共有をしないようにしているからな。

なんせ1組にはお喋りが数人いるので事前の作戦共有を行ったとしてもそれが漏れて相手に対策を組まれるかもしれないからな。なのでアーバスは当日の控え室までは作戦共有を行わないようにしているのである。


「それだと細かな連携が出来ないのではないか?」


「細かく作戦を指定したとしてもその通りに進むとは限らないからな。共有する作戦は大まかなものだけにして後は現場で判断するようにしているからな」


先の対抗戦でもアーバスはクラスには大まかな作戦しか伝えておらず、細かい作戦はリンウェルに任せていたからな。何なら対抗戦の最初の2戦はアーバスも前線に出ていたしな。


「現場判断か。確かに現場指揮官にある程度の自由を与えるのは必要であるか」


「自由は必要だと思うぞ。特に作戦負けした時は指揮官の腕が非常に大切だしな」


作戦通りに動いてくれる指揮官も必要だが、それ以上に現場で適切に判断できる指揮官の方がアーバスは欲しいからな。アーバスが事前指示以外でリンウェルに指示を出さないのはそれが理由だったりする。その為にシュミレーションボードもリンウェルに聞かれた時以外は一切として見たり答えたりしないようにしている。


「さてと、儂はそろそろお暇させていただく。アーバス殿ありがとうな」


「あぁ。次も勝ってくれよ」


アーバスとクロロトは握手をするとクロロトは自分の教室へと戻っていく。クロロトに慢心は無さそうだっし、ターニー達平民のことも信頼しているようだったのでこのまま順調に信頼を回復してくれれば無条件での入れ替えは回避してくれるだろう。


「アーバス、クロロトと何も話してたの?」


「クロロトから感謝されただけだ」


クロロトの話を終えてアミール達の元へと戻るとアミールに話の内容を聞かれたので簡単にであるが答えておく。


「あのクロロトがアーバスに感謝ねぇ」


「やっぱり信じれませんね」


どうやらアミールとサーラはクロロトの様子が変わったことに未だについていけていないようだった。あの性格から真反対になったのでそう感じるのは仕方ないが、いい加減慣れてくれないと3組に脅威を感じなさすぎて負けそうな気がして仕方ない。


「大変だ。2組が初戦を落としたそうだ」


血相を変えたニールが教室へと帰って来るとそんなことを言い出した。その一言にクラス全体が一斉にザワつく


「アーバス、どう思う?」


「恐らくだが手を抜いたんじゃないか?」


アミールがどういうことか聞いてくるとアーバスは自身の予想を答える。アーバスは手を抜いた以外で2組が負けるとは思っていないからな。


「手を抜くとはどういうことですか?」


「主力を温存して護衛に置いていたんじゃないかと思うな」


初戦は様子見する為に主力を護衛に置くクラスは多いからな。実力を見せない為に主力を温存するのはお互いがそうなのならいいのだが、どちらかが全力で攻めてきた場合は早急に温存していた戦力を出さないと前線が崩壊する可能性が高いからな。


「つまり温存し過ぎて前線が崩壊したということやな」


「多分な。5組の主力パーティーはパーティー戦の決勝で戦ったところだからな。作戦さえ嵌まればSクラス相手でも勝てる実力は持っているだろう」


5組は総力戦を仕掛けたとは思うが、通信妨害などで2組主力に前線が不利になっているのを気付かせるのを遅らしたのだろうな。そしてその隙に特殊属性などを駆使して2組の前線を崩壊させたのだろう。そうなれば2組は主力を出してもひっくり返すのは厳しいだろうな。恐らく特殊属性への対策もしてないはずなので主力も禄に抵抗出来ずに刈り取られたはずだ。


「というか何でアーバスがそこまでの情報を知っているのよ」


「決勝に上がりそうな組は事前に調査しているからな。後は5組の主力がパーティー戦の決勝だったことも大きいな」


5組の主力である代表パーティーは決勝で当たることもあって使える属性や魔法などは事前にほぼ全部リサーチしていたからな。その際に通信妨害や特殊属性といった嫌がらせに等しい魔法を大量に持っていることも把握済だったりする。


「そこまで調査しているのですね」


「でないと作戦が組めないからな。特殊属性や通信妨害の魔法があるなら事前に対策する必要があるしな」


通信魔法くらいならアーバスだけで無力化できるが、特殊属性がある場合は装飾品を用意しておかないと対処出来ないからな。実際アーバスはパーティー戦の時は対戦相手毎にアミールに持ってもらう装飾品を変えていたからな。


「本当なら2組も初戦から総力戦で戦わないといけない相手だったのにこれは相当痛手だな」


なんせ準決勝は3試合しかなく、仮にS2組が残り試合を全勝しても5組はA2組に勝つだけで決勝への抽選券を手に入れることが出来るからな。


「つまりS2組は抽選で落ちる可能性があるんやな」


「そうなのだが、ここでS4組との協定が問題となってくるだろうな」


「何で協定が問題になってくるのよ」


「そりゃ負ければS4組も準決勝敗退の可能性が出てくるんやからワザと負けれんやろ」


S1組はS3組をサポートする協定なのに対してS2組はS4組と共闘しているのだ。アーバスはその取り決めを実は知っているのだが、最終戦はS2組とS4組は引き分けの協定を結んでいるのだ。これによりA5組が残りの試合全部に負けない限りはS2組の敗退が決まってしまうのだ。


「でもS2組は勝たないと決勝へいけないのよね?」


「そうだな。だからややこしいんだよ」


S1組とS3組はそうなった場合はお互い全力で戦うと決めているから問題ないけど引き分けの協定を結んでいるS2組とS4組は協定を破棄する必要があるからな。その場合はS2組側からの破棄となる上に今後は他のSクラスと協定を結ぶことが出来なくなるだろう。だが、協定通り引き分けとなった場合はロインの組内での立場が大幅に悪化するのでどちらにしても悪い方向へ行くのが確実だろう。


「究極の選択やな。ロインはどうするんやろうな」


「そうだな。どっちを取るんだろうな」


そんな会話をしながら昼休みは過ぎていくのだった。

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