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203話 S3組の初戦を観戦

「アーバス、こっちや」


「そこにいたか」


次の日、アーバスは学食で飲み物と軽食を大量に買い込むとその足でアリーナへと向かう。アリーナには既にリンウェルが到着していたようでリンウェルが手の振る所へ向かうとリンウェルの隣に腰を下ろす。


「えらい遅かったやん。何かあったんか?」


「これを買ってただけだが?」


アーバスはアイテムボックスからジュースとポテトを取り出すとそれを食べながら試合開始までのんびりとアリーナ全体を見ていた。


「大事な試合やのに呑気やな」


「俺達は関係ないからな」


とリンウェルの質問にアーバスはポテトを食べながら目線を合わせずに答える。ここは第2アリーナで今から準決勝の最初の試合であるA3組とS3組の試合会場である。今はクラス代表が審判と一緒に中央に集まっており、準決勝のルールや注意事項について聞いているみたいだ。アーバスとリンウェルは今後対戦相手になるA3組やS3組の試合内容や作戦を見に来たのだが、アーバスだけはスポーツ観戦をしに来たかのようなスタイルでその様子からは真剣さは一切として伝わらなかった。


「ホンマにそれで観戦する気なんか?」


「なんせSクラスの方が有利でAクラスは余程驚くような作戦がない限りは力負けするだろうしな」


「そりゃそうやけど流石に危機感なさ過ぎちゃうか!?」


と、ポテトを食べながらアーバスはそのように話す。なんせ普通に戦えばSクラスが決勝に上がるような戦いなのでアーバスは準決勝で戦うAクラスは踏み台としか思っていなかった。


「そりゃ俺が介入しているからな。介入していなかったらこんなに呑気にしてないさ」


アーバスはこの日の為に約1ヶ月の間S3組の参謀であるターニーと綿密な作戦会議をしていたのである。それもあってかA3組が想定よりも強くない限りは負けるはないような入れ知恵をしてきたのだ。


「よっぽど自信があるんやな」


「あぁ。この試合はS3組が勝ったと思っているからな。それよりももう一つのブロックの方が心配だな」


アーバスが心配しているのは反対側のブロックの初戦であるS2組とA5組との試合で、そっちはアーバスが介入していない上にロインはS3組を嵌めるためにこの準決勝を疎かにしているみたいだからな。なので、A5組の実力や作戦次第では負けることもあり得るとアーバスは思っていた。


「さてと試合が始まったな」


そんな話をしていると各クラスの代表が本陣に戻されてその1分後に試合開始のブザーが鳴り響く。そのブザー開始と同時に両クラス互いに本陣に数人残して残りは全員出撃する。


「これはお互いに総力戦か?」


「そうみたいだな。A3組はそれしか選択肢にないけどな」


お互いの選択は本陣に奇襲対策で数人を残して残りを出撃させるという作戦である。その本陣に残ったメンバーには討ち取られると終わりである大将も残っているので勝負は大将を落とすか前衛が勝つかに早速絞られていた。


「アーバス、気の所為やなかったらS3組の大将って主力でも何でもない奴が大将をしてるんやないか?」


「鋭いな。そうだ、S3組の大将はクラスの中では平凡なナドークだな」


何とS3組が選んだ大将は主力でも何もない人物だったのである。このナドークはタンクの出来る前衛で回復などの他のことは一切として出来ない完全な置物タンクなので戦闘能力としてはほぼ皆無なのである。なのに何故S3組が大将に指定したのかリンウェルは全くわからなかったようだ。


「これもアーバスが選んだんか?」


「最終的に選んだのはターニーだが、方針を決めたのは俺だな」


誰を大将にするかの適任者を探したのはターニーであるが、この初戦の作戦の基本方針を考えたのはアーバスである。


「わからないって顔をしてるな」


「当たり前やろ。そんな中途半端な人間を大将にするメリットなんて一切ないんやからな」


リンウェルは作戦の根幹を理解出来ずにいるようだった。最初この作戦をクロロトに話した時は何を言ってるだという目で見られたが、その横にいたターニーはその意図を即座に理解してくれたようで速攻で二つ返事してきたな。

アーバスは周囲の状況を確認する。この場にはこの後S1組の対戦相手であるA1組も観戦に来ているのだが、A1組が遠くに座っていることを確認するとアーバスは遮音の障壁を張ってA1組に声が聞こえないようにするとアーバスは理由を話し始める。


「聞きたいが、何故大将はクラス代表が務めいるんだ?」


「そりゃ奇襲されても守り抜けるようにやろ?本陣が1番手薄になるからな。それに大将が前線にいると狙われるからな」


団体戦や対抗戦は前線での戦いがメインとなる以上本陣には奇襲対策として少数精鋭を残すのが鉄板である。なんせアミールみたいな大将クラスが奇襲に来た時に本陣を守り切る時間稼ぎが必要となるからな。増援を出す形でも良いのだが、前線からの戦力を引っ張る必要があるので前線が崩れてしまう恐れがあるので採用しているクラスは殆どないらしい。もう一つは大将を前線に出すと集中狙いされて退場となってしまうかもしれないのでそれを避ける為に本陣に残っているのもあるな。

そういったのが理由で本陣には何があっても大将と奇襲で残りきれるような配置をする必要があるのだ。


「じゃあAクラスが奇襲して来るとしてどの程度の戦力があれば耐えれると思う?」


「Aクラスの奇襲の仕方にもよるがそこまでの戦力は必要ないやろ。仮に向こうが少数精鋭で攻めてきたとしてもクラス中位のタンクとヒーラーが中心の護衛パーティーくらいで耐えれるやろうな」


Aクラスの少数精鋭の奇襲部隊といってもSクラスの最低レベルよりかは下だ。大将でわざわざ防衛しなくてもクラス内の中間レベルのタンクとヒーラーを中心としたパーティーを構成するだけで相手からしたら強大な壁となるだろう。


「そうなんだよ。だからわざわざクラス代表が大将を務める必要がないんだよ」


「そういうことかいな」


クラス内中位の護衛パーティーのみで相手出来るのにクラス代表を大将にして護衛にするメリットは何一つとしてないからな。それならクラス代表を前線に放り込んで暴れてもらった方が相手前線の壊滅と試合時間が速くなるからな。セオリーではクラス代表は大将として本陣にいるはずなので向こうはその前提で作戦を組んでいるだろうしな。これがSクラス相手なら悪手だっただろうが、Aクラス相手ならこれはむしろ有効だとリンウェルも理解する。


「ほら見てみろ。面白いくらいにA3組の前線が崩壊しているぞ」


アーバスとリンウェルの目下で前衛達による戦いが繰り広げられているが、クラス代表であるクロロトが次から次へと相手クラスの前衛を退場させていっており、A3組はクロロトに主力3人も注ぎ込んでクロロトを止めようとしたのだが、止まるどころかその主力3人があっさりと退場させられて戦況は一気にS3組へと傾いていた。


「これは圧倒的やな。ウチらも同じことをやるんか?」


「そのつもりだ。だけどこっちは俺とサーラは温存でアミールだけを投入するつもりだけどな」


アーバスの方針としてはAクラス戦ではアミールが前衛として暴れてもらってリンウェルは後衛での指揮、サーラを大将としてアーバスは予備戦力として本陣で待機しておく予定だ。

何せSクラスの中では前衛3番手のクロロトで無双出来るくらいだ。A3組よりも弱いA1組にアミールを止めることは出来ないだろう。

そしてその圧倒的な光景を見て観戦に来ていたA1組の面子は真っ青な顔をして戦いを見つめている。


「勝負ありだな」


戦力で劣ると上に前衛が完全に崩壊してしまったA3組がここから立て直せるはずもなくS3組は危なげなく勝利するのだった。

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