201話 ウィッチ戦(アミール視点)
「あれはウィッチですか?」
「そうだな。でも、普通のウィッチだから通常かレアかのどちらかだな」
私達は本日の最後の攻略であるレベル18ダンジョンの最下層のボスへと挑んでいた。出現したボスはウィッチで道中がバジリスクなどの蜥蜴型モンスターだったことを考えるとレアなのかもしれないのだけれど、ここ最近のボスがBランク上位やAランクだったことを考えるとAランク下位であるウィッチは通常ボスでも違和感がないわね。
「無効化も何もないな。アミール、やれるか?」
「すり抜けとか無いんでしょ。なら問題ないわ」
「そうだな。でも、即死はあるから油断しないようにな」
私はアーバスから軽くアドバイスを受けるとウィッチの元へと駆け寄っていく。ウィッチはそれに気づいたのか迎撃する為に鎌を構えると鎌が赤く光る。きっと即死が付与されたのでしょうね。そして私がが射程圏に入ったと同時にそよ鎌を振り抜く。
「そんなの当たらないわ」
私は瞬発力を活かして鎌を振り抜かれたのと同時にバックステップで攻撃回避すると、もう一度踏み込んでウィッチを自身の射程圏に捉える。
「やあっ」
私が剣の範囲に入って振り抜いた攻撃はウィッチを捉えてダメージを与えるが、ウィッチはその程度で怯むことはなく振り抜いた鎌を引き戻して攻撃する。か、その攻撃には即死が付与されておらず、速度もそこまで出なかったのもあって私は剣で鎌を弾き飛ばす。
「その程度なら当たらないわよ」
最近のダンジョンでAランク下位のボスとが当たることが増えたからか、私も段々とAランク慣れしてきているみたいで毎週受けている依頼もAランク下位中心で依頼へと変更しているのだけど、安定して依頼を達成できているわね。その成果もあってAランク下位のモンスターまでなら安定した立ち回りができるようになってきたのは安心ね。
「させないわ」
ウィッチは後ろに下がってもう一度鎌を構えるが、即死を付与させる前に私は鎌を狙って剣で弾き飛ばして即死を付与させないようにする。ウィッチは仕方なく鎌に即死を付与するのを諦めて鎌を振り回すようにして私へと迫るがアミールはその程度でダメージを受けることもなく無理して攻撃をせずに冷静に1つずつ鎌を避けていく。
「ここね」
私はウィッチが鎌を振り下ろして引き戻す瞬間を狙って、剣で鋭く鎌の根本を攻撃するとウィッチはその衝撃に耐えきれずに鎌を落としてしまう。
「ここで稼がしてもらうわ」
私はウィッチが鎌を落としたことを確認すると敢えて大振りな攻撃をせずに連続で攻撃を入れてウィッチに鎌を拾う時間を与えずにダメージを入れていく。ウィッチはダメージが蓄積していこともあってか一定回数の攻撃を食らっては怯んでで鎌を拾うことが出来ずにダメージを一方的に蓄積させていく。
「っとついに来たわね」
ウィッチは鎌を拾うことを諦めると両手でファイティングポーズを取って肉弾戦を開始する。アミールはそれを確認すると攻撃から一転防御に切り替えて相手の攻撃を捌いていく。
(確かアーバスは無理に攻撃していなかったわよね)
私はアーバスがエルダーデスウイッチと戦っていた時のことを思い出しながら氷属性を付与してウィッチの攻撃を防いでいく。アーバスの時は防御していても属性のダメージは入っていたと言っていたので防御中心での立ち回りで問題ないはずよね。
(気を付けないといけないのは即死くらいね)
今は攻撃に即死が付与されていないが、アーバスの時のエルダーデスウィッチはその全てに即死が付与されていたはずだったので、このウイッチも即死を使えることから何処かで即死を付与して攻撃をしてくるはずね。なので他の攻撃は多少受けてもいいけど、それだけは必ず防がないといけないわね。
それからもウイッチによる攻撃のラッシュは続き、私は防戦一方で反撃の隙を伺っていたところでウイッチはダメージが入らないことに痺れを切らしたのか拳を振りかぶるとそこに即死を付与して振り抜くが私はそれを冷静に剣で受け止める。ウイッチは攻撃が失敗したとわかるとまたラッシュへと戻って反撃の隙を与えずに攻撃していく。
(なる程ね。隙はあるけど即死なのが厄介ね)
ウイッチの一連の攻撃を確認して私はそう感じる。確かに振りかぶりには非常に隙が大きいのでカウンターやパリィは当てやすそうでだけど、攻撃速度は普通の攻撃よりも速くなっているのでタイミングを間違えれば即死で退場しそうね。
カウンターを入れるにしても今はする無理してする必要は無さそうなのでこのまま氷属性のダメージを与えながら防戦で良さそうね。でも、ダメージが入っているかは気になるわね
「アーバス、聞こえる?」
「聞こえてるぞ。どうかしたか?」
私が普段の声でアーバスを呼ぶとアーバスはそれに反応して通信で返事をしてくれる。私は通信系の魔法は一切習得していなのだけど、アーバスが相互通信してくれるので戦闘中のやり取りも一々大きな声を出さなくて済むのが助かるわね。大きな声を出すときって意外と集中力が削られるのよね
「相手の攻撃を氷属性で防いでいるだけだけどこれって属性ダメージ入っているのかしら」
「ちゃんと入っているぞ。残りは3割ってところだからこのまま無理せずで大丈夫だぞ」
私はアーバスの返事を聞いて安心する。アーバスの時は特殊属性で例外って可能性もあったから心配していたのよね。ただ、防戦一方って攻撃で優勢取っている時よりも集中力が必要だから大変なのよね。このウィッチも連撃も合間に即死の振りかぶり攻撃をしてくるから腕の動きを見ておく必要があるのよね。
(よし、やっと鈍ったわね)
それから暫く防戦していると氷属性特有の氷纏いによってウィッチの腕が肘の所にまで氷が広がってタイミングでウィッチの動きが鈍くなる。関節にまで氷が広がったから腕を動かしにくくなったのでしょうね
「はぁっ」
私は殴ってくるウィッチに対して雷刀に一層魔力を込めると触れたウィッチの右腕が完全に氷で凍ってしまう。それと同時に温存しておいた魔力で地面1面を氷で凍らせるとそれに巻き込まれたウィッチの足が膝関節まで氷と化す。
今までは凍らせても足首が限界だったが、アーバスの魔力操作の成果もあって今では同じ魔力で最大足の付根まで凍らせるくらいには効率よく魔力を変換することができたので凍らせれる範囲が拡がったのよね。
「やっと反撃出来るわね」
ここまで防戦一方だったがやっとこちらへと攻撃のターンが回ってきたのだ。ウィッチは氷を砕く為に残った左腕で手短な右手の氷を割ろうとするが、時間を掛けて重厚に固まった氷はその程度で砕けることはなく、逆に左腕を取り込もうと吸い付いている。
ウィッチは完全に氷に気を取られており、私の存在は目には入っていないみたいだった。私は雷刀に氷属性の魔力を入れると雷刀はその名前に相応しいない氷をその刀身に宿す。
(属性融合って出来るのかしら)
私はふとサーラが練習していた属性融合のことを思い出す。サーラが言っていたが2つの属性をそれぞれ別に展開してそれを均等に混ぜるのだと言ってたわね。
(試してみようかしら)
既に氷属性は展開しているが、雷属性は上級魔法クラスを使える事ができるのだから不可能のではないと思うわ。原理はサーラから聞いているから後は思い切りだけね。私は得意の氷属性の魔力は維持しながら残った部分で雷属性を使用する魔力を注入する。
(上手くいったわね)
雷刀は刀身に宿した氷の周囲に雷を宿しており、両方の魔法を発動出来たことを確認する。これが果たして属性融合かどうかはアーバスに聞いてみないとわからないものの、少なくとも自分がイメージしていたものは出来上がっただろう。
「どりゃあぁぁぁぁぁぁぁっ」
私は2つの属性を宿した雷刀を振りかぶるとそのままウィッチへと振り下ろす。ウィッチは氷を壊すのに集中していたせいで反応に遅れて防ぐことも出来ずに攻撃が直撃すると金色の宝箱を残して消えていったのだった。




