20話 引き続きダンジョン探索でもドロップは…
6層目からはゴブリンがエンカウントするようになった。スライムと一緒に時々エンカウントするが、最大でも1体でありスライムがあまり動かないこともあってかゴブリンを先に倒せばそこまで苦戦することなく倒すことができた。
「6層目といってもそこまで代わり映えしないわね」
「ゴブリンが増えただけですからすね」
増えたのがゴブリンなのが不服らしい。しかもゴブリンからのドロップは今のところなく全てがスライムゼリーだしな。
「アーバス、イレギュラーモンスターとかいないの?」
「そんなのすぐ居たら逆に怖いわ」
スライムキングとか本来レベル6で出てきたら何も出来ずに一瞬で全滅だよ。攻撃されたことすら気づかない可能性もあるからな
「だって今日だけでハイオークにスライムキングが出てきてるじゃない」
「お前なぁ…」
その言葉にアーバスは思わず頭を抱える。ハイオークは隠し扉だったのでショートカット用のモンスターだったとは予想出来るが、スライムキングは完全に事故だろう。進化することは知っているが、流石に進化しすぎでは?と思ってしまうくらいには進化しすぎだ。スライムキングは本来Aクラスモンスターであり、仮に外の世界で出現した場合はAクラスかSクラスの冒険者が動員されるだろう。ただ、AクラスとSクラスを合わせても冒険者全体の3%未満なので人数確保出来ない場合はメルファス所属の人間が動員されるだろう。
「アミール。ハイオークもですが、スライムキングもアーバスがないと何も出来なかったですからね」
「うっ…わかってるわよ」
サーラの一言にアミールは言葉を詰まらせる。スライムキングはともかくハイオークは実力で突破しているんだがな。
「でも、もう少し強くなってほしい気持ちはわかりますけどね。今のままでは魔法を使うこともありませんし」
「そこは進むしかないな。下に行けば強くなるはずだしな」
「ですね」
そう言いながらアーバス達は先へと進んでいく。結局6層目ではゴブリンの素材やドロップは無く、次の層へと進むこととなった。7層目からはモンスター自体は特に代わり映えはないが、ゴブリンがスライムと一緒に確定で出ることになり、そのゴブリンのドロップが宝箱だったのである。
「アーバス。宝箱よ」
「ゴブリンはドロップじゃなくて宝箱か」
どうやらゴブリンからは宝箱がドロップするようだ。素材も落ちるだろうが、それよりも宝箱がレベル6でもドロップしたという事実は少し安心する。ちなみにさっきのスライムキングは例外な。
「宝箱はボスだけかと思いました」
「私もよ」
「道中でも出るとは聞いていたがレベル6でも出るんだな」
「早くあけましょ」
「他のモンスターも来るかもしれないからそうしようか」
アミールが早速宝箱に近づきそのままを開ける。
「銅のインゴット…」
「お前は何を求めてるんだ?」
「装備に決まってるでしょ。作ると高いんだから」
アミールは装備狙いらしい。確かに宝箱からだと素材はいらないが狙ったスキルは出ないんだよなぁ。金は掛かるが作った方が狙ったスキルが付与出来るのでアーバスは作る方が結果的には楽だと思っている派である。
「まぁでもレベル6の宝箱なんだからこんなもんだよな」
「そうですね。むしろ今までが良すぎでしたからね」
「むゥ」
レベル6のダンジョンなので仮に装備がドロップしてもそこまで性能が良いのが出ないだろう。どうせどうでも良いスキルが出る確率なんて0.何%だろうしな。それに比べたら銅のインゴットの方が遥かに資金になるしな。その良いドロップだってハイオークとスライムキングでレベル6にはいなさそうなモンスターだしな
「とりあえず次行きましょ」
「そうですね。1層でも先へ行きたいですし」
「そうだな」
その後はスライムばかりでゴブリンを見ることはなく、アーバス達は先へと進んでいく。7、8層目はゴブリンの確率が上がるだけで特に代わり映えは無く、9層目はゴブリンだらけではあったが、複数体同時に戦うことはなく1体ずつであった。
「これは魔石?」
「そうだな。サイズ的には小だな」
9層目の中盤でそれまでゴブリンから倒した際のドロップは低確率での宝箱でそれ以外は特に落とさなかったのだが、ここにきて宝箱ではなく魔石がドロップしたのだ。これは外の世界で使う傷薬や魔力回復のポーションの原料で使うものである。大きさによって効力が上がり、特大以上のサイズは武器の生産や強化に必須のものになってくる。外の世界ではモンスターの体内に存在するので比較的入手は可能なので価値はそこまで高くはないが、ダンジョンでもドロップするんだな。
「これがポーションの原料の魔石なのね」
「そうだな」
「ねぇ、アーバス。ポーションって作れるの?」
「作れなくはないが錬金スキルがないからそこまでいいものが作れないぞ」
「そうなのですね」
「スキルがないからな。作れても普通級が精一杯だろう」
ポーションは誰でも作れるものであるのだが、品質によって回復出来る量に違いがあり、一番上である最上級のポーションは通常のポーションより倍の量回復する量が違うらしい。ただ、スキルなしで作ろうとすれば普通級が最大となるみたいだ。
「なら売却するしかなさそうね」
「大した金にはならないが仕方ないな」
良いものが作れるのなら売却せずに使えばいいのだが、作れないのなら売却がセオリーだ。持っていても仕方ないし貯まる一方だしな。
「それにしてもゴブリンの素材は出ないわね」
「そうですね。今のところはドロップしてないですね」
「だな。素材は高確率で落ちると思ってたんだがな」
スライムだと半分以上の確率でドロップしたんだけどな。確かに外でもゴブリンは倒しても使える素材はないのでそれがダンジョンにも反映されているのだろうか
「もう階段じゃない」
そんな話をしているともう10層への階段が目の前に見えてきた。意外と早かったな。あれからまだ1時間しか経ってないので今日は15層まではいけそうだな。
「思ったより早かったですね」
「そうだな。さっさと倒して進みますか」
「そうね。行きましょ」
階段を下るといつもの光景で、皆が入ると中央が輝き出す。かがやき終わるとそこにはハイゴブリン1体とゴブリン5体が出現した。
「ゴブリンが6体ね。数が多いけど私1人でなんとかなりそうね」
「おい待て」
アーバスが忠告する前にアミールはゴブリン目がけて駆け出す。あいつ完全にハイゴブリンが居ることに気づいてない
「やぁぁ」
一撃でゴブリンを1体を光に還す。それを好機のばかりにハイゴブリンが火球でアミールを狙い撃つが、アミールはそれをステップのみで回避し、その横移動で1つ隣にいたゴブリンも攻撃するが、ゴブリンは光に還はらなかった。
「一匹魔法を使うゴブリンか居るわね」
アミールは魔法を使うゴブリンがいたのを確認するが、そのまま倒せなかったゴブリンを倒すべく切り込にみいく。
「ゴブッ」
アミールの攻撃をゴブリンは棍棒で防ぐ。アミールはゴブリンをそのまま力ずくで押し込もうとするが、ハイゴブリンは再び火球でアミールを狙い、残りのゴブリンもアミールを集団で囲むように攻撃しようとする。
「チッ」
アミールはこれ以上は危険と悟ったのか再び突撃しようとせずにバックステップでアーバスの元へと戻っていく。
「ゴブリン6体の割に妙に強いわね。アーバスどいうこと?」
「ハイゴブリンが1体いるからな。魔法を使ってくる奴がそうだな。ゴブリン達も統率されているのか、普段よりも強化されているな」
「それは厄介ね」
アミールはどうやらハイゴブリンが混ざっていたことにやっと気付いたらしい。
「サポートはいるか」
「いいわ。一人で十分よ」
「そうか。なら任せた」
アミールは一人でやる気らしい。アーバスはアミールに倒すのを任かせることにした。一応何かあればフォローできるようにアーバスはフォロー出来るようにアミールへ障壁を展開出来るように準備をしておく。
「統率か何だか知らないけど全員凍らせれば問題無いわね」
アミールはそう言うと氷刀に氷属性を付与すると氷刀を振り抜く。振り抜いたところを起点に氷が扇状に広がり、そのままゴブリン達を氷漬けにする。氷漬けにされた残りのゴブリン達はそれだけで光に還るが、ハイゴブリンは足元が氷っただけで光には還らなかったが、足元が凍って身動きが取れないでいた。
「これで決める」
アミールは全力で氷刀に魔力を込める。氷刀は刀身に氷が出来ており、その大きさは刀身の3倍程の大きさになっていた。
「はぁぁぁぁ」
そのままアミールはハイゴブリンを切り裂き光に還っていき、その後には宝箱が落ちていた。
「やりましたね。アミール」
「えぇ。でもやっぱりもの足りないわね」
「そうか?」
「そうよ。全然全力で戦えないじゃない」
あれで全力じゃないのか?それとも全力で戦ったら直ぐに終わってつまらないのかはともかく不満らしい。まぁ範囲攻撃でゴブリンが消えたしな。
「とりあえず先に宝箱を開けましょ。良いのが出れば倒した甲斐があるし」
「そうですね」
不満はとりあえず宝箱で解決するらしい。アミールが宝箱を開けると
「これは指輪?」
「アーティファクトですね」
中に入っていたのは普通の指輪だったのだが、これはアーバスが着けているのと一緒で指輪型のアーティファクトである。アーティファクトは別名装飾品と呼ばれており、これを装備すると効果を得られて両手に5つづつ計10個までつけれたりするのだ。親指はそもそも指輪が入らない為、そのままでは装備は出来ないが加工することで全ての指輪に装備することが可能となる。
「アーバス。効果わかる?」
「あぁいいぞ」
アミールが鑑定を依頼してくる。本来ならダンジョンを出たあとに鑑定できるところに持っていって解析してもらうのだがアーバスは鑑定スキルを持っている為問題なく使用することが出来る。
「これの効果は移動速度0.1%上昇だな」
「ハズレね」
「そうですね」
移動速度のスキルは弱くはないのだがパーセンテージが如何せん低すぎる。もう少し大きければスキルとして優秀だが0.1%だと無いのと一緒だな。
「まぁいいっか。進みましょ」
「そうだな」
使えないことを残念がったのも束の間アミール達はすくに切り替えて次の階層へと足を進めるのだった。