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2話 校長と入学試験

「久しぶりだけどやっぱりセーティスは違うなぁ」


アーバスは検問を抜けるとその先に広がるメインストリートを見てそう感想を漏らす。メルファス教会がある教国メルファスやアーバスの出身である聖都ヴェルチアは建物こそ近代的ではあるものの、どちらかといえば人口は多い方ではないので人通りはそこまで多い方ではなかった。だが、セーティス王国の首都であるタポリスは歴史を感じさせる町並みだが非常に活気に溢れており、メインストリートは大混雑するくらいに人が行き交っているくらいだ。

魔法学園は中央にある王城の近くにあるのでアーバスはメインストリートある屋台などを見て回りながら進んでいく。


「魔法学園はここか」


メインストリートの突き当りにある王城の横を抜けるとそこには政治の主要施設が立ち並んでいる区画になり、その一角に魔法学園は存在する。

アーバスは門の横に居た人に事情を話すと学園の中から職員が1人やってくる。どうやら校長室へ通すように言われたそうで、その職員に連れられて校長室へと案内される。


「ジョーカーいらっしゃい。そこのソファーにかけてください」


ノックして入ると仕事をしていたのであろう校長のシエスが顔を上げてこちらへ挨拶をする。アーバスは中央にあるソファーに座るとシエスもまた紅茶を持って対面のソファーに座った。


「久しぶりですね。時々通信はしていましたが直接2人で会うのは半年ぶりかしら」


「それくらいですね。でもシエスさんの場合ここから中々出れないでしょうし仕方ないかと…」


タポリスは発展してるものの夜間は街の外へ出るのが禁止になるくらいに出てくるモンスターが非常に強力なのである。なので夜間は街の外周に障壁を張ってタポリスをモンスターから護っているのである。シエスはその障壁の維持の為に普段からタポリスにいることが多く、会議などの重要な時にしか離れることはないらしい。


「リリファスから聞いているとは思いますが、ジョーカーには明後日に行われる試験に参加して頂きます。ここでの成績が悪くても合格ですが、ランク分けには入学試験の成績を使いますのでそのつもりでいてくださいね」


どうやらクラス分けの為に入学試験を受けなければいけないようだ。Sランクは160人、Aランクは240人と80人ずつ増えていき、下はDランクまでの合計で1600人が魔法学園に入学される。ランクによって設備の差はないが、学生が受けれる依頼などはランクによって受けれるものや待遇が違うとのことだ。全力を出せば実技試験は余裕でSクラスだろうが目的はダンジョンなので依頼はそこまで興味はないんだけどな。

ただ、この学園のダンジョンは魔法学園の生徒しか挑戦することは出来ない仕組みとなっており、他のダンジョンと難易度は共通ではあるものの、人数が少ないので他のダンジョンと違ってスムーズに入ることができるそうだ。アーバスは魔法学園への入学の影響でメルファスからの依頼が無くなるので戦闘感覚を維持する為には丁度いいだろうと思っていたのだが、


「ちなみに1年生だとダンジョンへ潜れるのはSランクと許可したAランクの人だけです。ジョーカーであっても下位のランクになれば許可をするつもりはありませんのでそのつもりでいて下さいね」


とシエスは意地悪く微笑む。ランクによって待遇差があるとは事前に聞いていたがダンジョンへ入るのですらあるのか。これ以外にも待遇の差はありそうだし上位クラスに入っていた方が良さそうだな


「これが試験票です。ここに書かれている時間と場所に来てください。王都にいる間は魔力を込めれば教室の場所や現在地が地図として出てきますので迷うことはないでしょう」


試験票を受け取って魔力を通すと現在地と試験会場の位置が表示された。これは魔力を使った地図で、どうやら障壁の魔法陣を利用して魔力を込めると場所を表示してくれるみたいだ。ただ、この機能はタポリスのみでしか使えないみたいでタポリスから出るとただの紙切れになるらしい。


「質問がなければこれで終わりです。後、2人きりの時は口調は普段通りでいいですよ」


「なら、そうさせてもらう。質問は特にないかな」


2人の時は普段通りの話でいいというが相手は校長なのでいいのか?と思ってしまうがシエスが良いというならそれでいいのだろう。シエスからはこれ以上何もないとのことなのでアーバスは校長室を退出して学園を後にする。

タポリスでは普段から行商人を始め出入国が多いのだが、この時期は入学試験を受ける学生で更に多く宿が満室になるそうだ。普段なら宿で済ませるのだが、既に宿が満室なこととこれから4年間魔法学園に通うことになるので拠点を用意することにした。既に拠点はリーゼロッテ経由で確保済みで、事前に貰っていた地図の場所に行くとメインストリートから一本道を外れた場所にある一軒家に着いた。ここから魔法学園まで徒歩5分くらいであり更にギルドや商会からも距離が近い場所を用意してくれたみたいだ。アーバス的にはアパートみたいな場所でも良かったのだがありがたく使わせてもらうことにする。


「お久しぶりです。アーバス様」


「ルーファか。久しぶりだな」


扉を開けると玄関にスーツを着たルーファが出迎えてくれた。ルーファはアーバスが代表を務めているトゥールという組織の幹部の1人である。長身で長い髪をポニーテールに纏めており印象はクールに見える女性だ。普段からスーツを着用しており彼女曰くこれを着ないとやる気が出ないとのことらしい。彼女もリーゼロッテと同じ大罪人ではあったが、現在はルーファ商会という商会を運営して世界的な大商会の会長となっている。昔はルーファという名前ではなかったのだが、アーバスの部下になってからはルーファという名前を与えられそれを使って活動している。


「色々と話したい内容はありますが、奥にリーゼロッテが来ておりますのでこちらに」


どうやらリーゼロッテが報告に来ているとのことだった。廊下の突き当りにある部屋の扉を開けるとリビングのようで既にテーブルと椅子が置かれており、そこの1つに座っていたリーゼロッテはのんびりとお茶を飲んでいた。アーバスか対面に座るとリーゼロッテは報告をし始めた。


「今回の魔法学園への入学の件ですが、やはり直近で規定が変更されて決まったようです」


「やっぱりか…」


そんな気はしていたが、やはり直近で決まったようだ。恐らく目的はアーバスの発言力の低下だろう。アーバスはメルファスに所属してはいるが厳密には協力関係であり正式にメルファスの人間ではない。だが、教会内での権力は教皇に次ぐ力を持っており年齢も相まってそれを良くないと思う者も少なくないのは知っていたが、アーバスが会議にいないタイミングで規定を変えてまでアーバスの活動を停止してくると思ってもいなかった。


「リリファスですがどうやらアーバスの任務を13聖人中心に振り分けるみたいですね」


13聖人とはメルファス教会における役員のことで教皇であるメルファスと協力関係にあるアーバスを除いて13人いる役員の総称である。役員は実力共に問題ないのだが、大罪人など役員だけで出撃するにはリスクが大きすぎるものはアーバスが担当していたのだ。そのせいで年々13聖人に実力が必要なのかという疑問を持つ人もいたが、今後は13聖人がアーバスの任務を行うとのことなのでその声も無くなるだろう。

リリファスのことだからアーバスの反対派を中心に依頼と割り振って出撃させそうだな。反対派の13聖人は発言力があるが実力が非常に低いことから政治組と呼ばれている。実力が低いので依頼も大したものをこなしていなかったはずなので果たして生きて帰ってこれるのだろうか?


「ある程度死ぬだろうがそれもやむ無しか…リリファスもエグいことをやるな」


戦力の低下は避けれないだろうがリリファスのことだからやりそうだな。政治組のことだからジョーカーの出撃要請を求めるだろうがリリファスは学業を理由に出撃させないつもりだろう。リーゼロッテは会議でその質問は出たそうだが、政治組が13聖人で対処できると押し切ったそうだ。


「どうせ他の実力者に指令を振るのが目に見えてますので私はある程度雲隠れしながら情報収集するつもりです」


リーゼロッテは元大罪人なので実力は十分あることから13聖人に見つかったら依頼を振られるのが目に見えているのでメルファス内では逃げながら情報収集をするつもりみたいだ。


「わかった。でも報告はいつも通り続けてくれ」


「わかりました」


そう言うとリーゼロッテは転移でメルファスへと戻っていった。アーバスはリーゼロッテの横に座っていたルーファの方へ視線を移すとルーファは拠点の案内を始めた。


「アーバス様。生活に必要なものについては一通り揃えておりますが、足りないものがあれば私か商会の者に伝えてくださいね」


拠点の説明を終えるてリビングへと戻るとルーファはこれから会議みたいでそう言うと商会へと帰っていった。アーバスは周囲に誰もいないことを確認するとアイテムボックスから教科書を取り出す。目標がSクラスになった以上勉強する必要が出てきたからな。剣術や魔法の試験は問題ないものの筆記試験はセーティスの歴史などアーバスが殆ど知らないところから出題されるので付け焼き刃にはなるが1日あればなんとかなるだろう。

アーバスは試験日当日まで拠点に籠もってひたすら勉強するのだった。

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