194話 拠点への強襲
バゴン
とサードオプティマスの拠点に辿り着いたリリファスは入口にいた見張りを殴って気絶させるとそのまま前蹴りでドアを蹴り飛ばして破壊する。
「邪魔するでぇ」
挨拶とばかりに言うリリファスは魔法で声をイカツイ男性にしていることもあってか、立ち振舞も含めてもはやゴロツキにしか見えなかった。一応貴族の出身のはずらしいのだが、この立ち振舞を見ると嘘ようにしか見えなかった。
「てめぇ。どの組織だ」
「カタタギや」
それって一昔前に存在していたとされるゴロツキ系ギルドの名前だったような気がする。確か高ランク冒険者ばかりで構成されており、冒険者としては強かったんだけどあまりの傍若無人ぷりにメルファスが粛清したんじゃなかったかな?
「なん…だと」
「嘘つけ。そんな組織なんか無いはずだ」
存在したのか昔すぎたのか存在を知っている人間は驚愕し、逆に知らない人はそれを聞いても臆することなく突っ込んでくる。これがジュネレーションギャップという奴か。リリファスは突っ込んできた人達を蹴り飛ばすとそいつ等は壁に叩きつけられて絶命する。
「カタタギを知らんなんてお前らそれでも裏組織なんか?」
リリファスはその知名度の高さを利用して名乗ったはずなのに知らない人物がいたことにご立腹なようだ。まぁ、カタタギが全盛期で活動していたのが40年前らしいので年齢が若かったらその存在を知らない人が居ても不思議じゃないだろう。アーバスもメルファスに入ってからその存在を知ったくらいだしな。
リリファスは更に突っ立っていた者たちも全員ぶん殴って倒すとその内の1人をアーバスの方へ向かって投げつける。
「ベークさんよ、そいつの中身を確認してくれるか?」
「任しとけ」
アーバスはそういうと頭を掴んで記憶を確認していく。ベークは確か男性幹部の名前だったはずなのでアーバスは渋い男性の声を魔法で作って返事する。素の状態でも低い声を出すことも出来るが、渋い男性の声は出ないからな。その間にもリリファスは先へと進んでいくのでアーバスは仕方なしに頭を掴んだ状態のまま、引き摺りながら記憶を確認していく。この男はは詳しい情報は持っていなかったが、詳細な地図は手に入ったので仕上げに脳を破壊すると用済みとばかりにその辺に放置する。
「どうやった?」
「ハズレや。でも、地図が手に入ったから重要そうなところから虱潰しやな」
アーバスもリリファスに倣ってゴロツキみたいな言い方で返事する。らしくはないと思ってはいるのだが、横にいるリーゼロッテから「魔法で声が変わっていますので、むしろゴロツキみたいな言い方の方が良いですよ」とアドバイスを受けたのでそうすることにした。
「そうか。なら徹底的にやるで」
リリファスはそういうとアーバスが全員に配布した地図とルートを使って順番に訪問さして重要そうな人物だけはアーバスが記憶を確認していく。
「なぁ、ここまで当たりはあったか?」
「なしやな。でも、誰も逃げたり報告するといった動きはないで」
ここまで確認した全員が重要な情報を持っている人物は居なかった。ただ、各所に配置された監視用の魔道具を先に魔法で干渉して無効化したこで今の所は監視室に目立った動きは無いみたいだな。
それはここの所長室も同じでアーバス達が突入した部屋以外は何も変化は見られなかった。
「もう所長を脅した方が速そうやな」
とリリファスの意見に全員頷くとリリファスは向かいにあった所長室のドアをまた前蹴りで蹴り倒してドアを破壊する。
「邪魔するでぇ」
と、破壊したドアから毎回こうやって入っていくのでこれはゴロツキが家の中に入る挨拶なのかな。所長は突然ドアを蹴り倒されてあ然としていたが、徐々に状況を理解したのか顔を真っ赤にすると
「貴様ら何も…………」
アーバスに向かって叫び始めた瞬間にアーバスはスタンライフルで所長を気絶される。その手際良さに所長を殴り倒そう拳を構えたリリファスが理解出来ずに固まっている。
「えぇ物持っておりますな」
「エクストリーム相当のスタンライフルやからな」
シエスの言葉にアーバスは自慢そうに答える。アーバスはアミールから譲り受けたスタンライフルをエバクに依頼してエクストリーム相当のスタンライフルへと引き上げていたのだ。その威力は凄まじく特殊属性耐性が非常に高いエクストリームのモンスターが一撃でスタンするくらいであり、もしスタンに耐性がない人間が喰らうとずっと一撃でスタンし続けるくらいだ。もし仮にスタンに耐性があったとしても完全耐性じゃない限りはこちらも一撃でスタンし続けるだろうな。
アーバスはスタンしている所長へと近づくとこれまで通りに頭を掴んで情報を抜き取る。
(やっと当たりだな)
所長の頭の中を確認するとここには研究施設があり、そこには洗脳や奴隷の契約書なども違法に作成されていて、更に睡眠を始めとした特殊属性と洗脳を付与できるポーションまでも作っているそうだ。特殊属性のポーションと奴隷の契約書さえあれば違法奴隷なんて作りたい放題なのでこれにはアーバスも頭を抱える。
合法に作られていたらまだ入手経路から業者や制作所を問い詰めたり営業禁止にしたりすることができるのだが、全てが違法入手となれば制作所を突き止めて破壊するかないからな。
(でもどうやってだ?)
この所長の記憶から製作所は判明したのだが、破壊したとしてもそれから新しく作られた生産拠点を見つけることは出来ないだろう。
(とりあえず破壊はしておくか)
アーバスは一時的に所長から記憶を抜くのを中断すると生産拠点のある場所全ての場所を魔法で確認する。所長の記憶は鮮明だったようでその全てで、違法的に奴隷の契約書やポーション類が生産されていたのだ。
(ルーファ商会ではないな)
アーバスは念の為に出荷先や生産拠点のある場所を再度確認したが、ルーファ商会やトゥールの生産拠点でなかったことが確認されたので、アーバスは魔法の発動へと移行する。アーバスは各生産拠点の空中に虹属性の魔法陣を展開する。
本来ならアーバスのキャパを軽く超える量の魔力なのだが、契約の指輪の効果によって無限の魔力を得ているので何の心配もなく同時に魔法を発動させる。発動した魔法陣からは虹色の光を放ちながら各生産拠点を攻撃していく。そして光が消えると生産拠点があったところは何も無い更地が広がっていたのだ。
(これで良いか)
アーバスは結果に満足すると再度所長の記憶を確認し始める。ただ、収穫が大きかったのは生産拠点のことだけで、後はそこまで大した情報は得ることは出来なかったのだ。本当なら幹部の本名などを知りたかったのだが、誰も名前を知らないみたいで何処に住んでいて普段はどんな活動をしているのかの詳細までも不明だった。
「そうか。ならこれにて撤収やな」
リリファスは報告を聞くと撤収指示を出すとリリファス自身が転移で場所を移動させる。
「お疲れ様でした。もう元の姿で大丈夫ですよ」
とアーバスの見慣れない場所へと転移するとリリファスは装備を解除してそう言った。アーバスは最後にさっきまで滞在していたサードオプティマスの拠点を仕上げとばかりに虹属性で更地に変えておく。
「えらい中身の無い拠点の制圧だったな。こんなのアーバス1人で十分だっただろ」
「結果を見ればそうですが、もしものことがある可能性がありますから仕方ないことですよ」
敵の強さや耐性は大したことが無かったのでアーバス1人でも対処出来たが、代表や幹部クラスが居る可能性もあったから仕方ないだろう。事前に詳細な情報や準備もしなかったしな。
「生産拠点を潰せただけ良かったんじゃない?あんなのがそこら中に出回ったら世界の治安が終わるわよ」
シエスの言う通り世界中で違法奴隷を作り放題となったら奴隷の強い奴が王で国民は奴隷となって治安なんて無くなるからな。
「それもそうか」
「ギルディオン。何処へ行くのですか?」
「帰る。作戦も終えたし後処理をしないといけないのでな」
ギルディオンは立ち上がると転移で何処かへ行ってしまった。元ギルド職員の不祥事やサードオプティマスの後処理をしないと行けないのだろう。
「リス。私達も戻りますよ。一刻も早くサードオプティマスの構成員を炙り出しますよ」
「そうですね。アーバス様、それでは失礼します」
「あぁ。頑張ってくれ」
それに続いてリリファスとリーゼロッテもメルファスへと戻っていく。メルファス内もサードオプティマスのメンバーが紛れ込んでいるはずなのでそれを排除する作業が必要になったしな
「アーバス、私達も戻りますよ」
「そうするか」
アーバスはてっきりここで何か話し合いをすると思ったのだけど装備を解除する為にこの施設を経由しただけなのか。ならここに居ても何も無いのでシエスと一緒に学園へと帰還するのであった。




