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192話 サードオプティマス

「あら、アーバスどこへ行っていたのです?」


「ちょっと追加の仕事をな」


地下牢から戻ると就任式は終わっていたらしく、リリファス達は捕獲しか元ギルド職員達を尋問にかけているところだった。アーバスはリリファスの質問に答えると気絶させていたゴミージャンとエルを眼の前に雑に放り投げる。


「仕事ですか。ゴミージャンともう一方は誰ですか?」


リリファス達はゴミージャンには見覚えがあったらしくそこまで驚いていなかったが、エルの方は誰も知らないみたいだな。


「もう1人はエルと言うみたいだな。サードオプティマスの幹部みたいだ」


サードオプティマスという言葉に皆が一斉に凍りつく。なんせサードオプティマスはお茶会組と実質的な敵対関係にあるからな。それの幹部が捕まったのだから予想外の出来事だろう。


「これが幹部の1人ですか。思ったよりも年配なのですね」


「そうですね。もっと若い人だと思っていましたね」


とシエスとリーゼロッテは感想を漏らす。アーバスもサードオプティマスの構成員は20代の若者ばかりだったのでてっきり幹部をそうかと思っていたが、幹部は思っていたよりも年配なことに少し驚いたけどな。


「もしかしたら幹部は熟練した人物達で構成した組織なのかもしれぬな」


「ありえますね。もしかしたら背後に大きい組織があるかもしれませんね」


なんせサードオプティマスが若者だけで作った組織ではないことが発覚したのだからシエス達みたいな熟年者が構成員の中にいても不思議ではない。人間で年齢が判明している中ではシエス達勇者パーティーの800歳超えであるが、モンスターであるルーファとかになると2000歳以上にもなるみたいだしな。ちなみにペルロストの前の魔王であるガルヴァディロムは1500歳程度だったはずだ。2000歳とまでいかなくても1000歳程度の人間やモンスターが背後にいても不思議ではない。


「ゴミージャンがいるということは戦闘場所ということは……」


「王城の地下牢だ。違和感に気付いて張っていたら案の定だったな」


ゴミージャンが一緒だったのが違和感に思っていたのだが、この幹部がゴミージャンを助けに来たのだったらゴミージャンも連れて来たのに納得する。なんせあれだけ派手にやろうとしたギルド職員による攻撃は全て揺動でゴミージャンを助けるのが本来の目的だったのだろう。


「地下牢は人を多めに配置して死角を全て消しているはずですし、鍵は衛兵と門番が持っている鍵が必要です。鍵を奪取しながらゴミージャンの牢屋の中へ入るのはアーバスでも厳しいはずですよ」


なんせ解錠に必要な鍵は門番だけでなく地下通路の衛兵が所持しているものも必要だからな。特に地下通路の衛兵の数は多いので気付かれずに衛兵1人を倒しても発見させるのは時間の問題だろう


()()()衛兵数ならバレずに2つの鍵を入手するのは難しかっただろうな」


「ということは普段の人数では無かったということですか」


「地下通路や門番は重要地点なのでそこからの招集は禁止しているので減ることは無いとはずですよ」


アーバスの言葉の意味に気づいたリーゼロッテがアーバスに問いかけにシエスはそんなことはないと言い張る。


「地下通路と門番の衛兵の数は共に普段の半分だけだったな。ギルド職員による襲撃情報が直前に発覚したのも作戦の一部じゃないかな?」


ギルド職員の襲撃の情報は就任式直前に衛兵にも通達がいったみたいだったからな。もしかしたら緊急事態という名目で誰かが指示を出して故意に牢屋関係の衛兵を引き抜いた可能性があるな。


「騎士団長、直ぐに調査をお願いします」


「はっ」


シエスは隣にいた騎士団長に調査を依頼すると騎士団長は衛兵を連れて王城へと戻っていく。誰が引き抜いたかはわからないがそいつはきっとサードオプティマスに関わりのある人物だろうから確保しておく必要がある。


「サードオプティマスの連中は各組織にスパイを送り込んでいるようだな」


「そうみたいですね。トゥールは大丈夫なのですか?」


「大丈夫とは言い切れないな」


トゥールには政治組みたいな露骨な連中はいないが、今回みたいにこっそり紛れ込んでいることはあり得るかもしれないからいないと断言は出来ないな。


「この際ですから確認しますか?」


「そうだな。リーゼロッテはレイラとその側近を中心に確認してくれ。結果を見てからどうするかを考える」


「わかりました」


本当は情報部隊を使って捜査をしたいところではあるが、トゥールの調査の心臓部である情報部隊に万が一サードオプティマスのスパイが紛れ込んでいるかもしれないからな。そうだった場合はサードオプティマスの関連の調査は確実に失敗することが予測されるのてまずは情報部隊にサードオプティマスの関係者がいないことを証明する必要があるからな。

と、ここまで指示を出し終えた後でアーバスは気づいたことがある。


「ところでこの幹部の情報が誰が確認するんだ?」


アーバスはふと気になったのしで質問してみる。この場で記憶を覗けるのは3人でアーバスとシエスとギルディオンであるが、シエスは今魔法でギルド職員達の記憶を確認していないので使えないものとして俺かギルディオンか。その2択なら実質的なパーティーリーダーであるリリファスの発言は予測できる。


「アーバスお願いしてもよろしいでしょうか」


「そうだろうと思った。ちょっと確認するか」


アーバスは気絶しているエルの頭を掴むとそこから記憶を順番に確認していく。


(会議場はファルフォスで本部はツオークね)


本部のある場所はツオークの首都にある貴族関係の建物の中にあるようだ。そして、会議であるが、こちらはツオークではなく友好関係のファルフォスで行われており、会場はまさかの王城にある会議室で行われているみたいだった。


(記憶を覗かれるのは対策済か)


政治組はアーバス次に会議の場面の記憶を確認していくが、会議には全員で20人出席しており、全員顔にお面を着用していてその顔は見えないようにしていたのだが、これは万が一記憶を覗かれた際に誰が幹部かを特定されるのを防ぐ為だろうな。


(そりゃ政治組が関わっているわな)


仮面を付けての会議ではあるものの声までは変えていないようで、会議の出席者の1人は体型と声からゴミカスであると断言できる。直近の会議を覗いたはずなのだが、既に死んだゴミカスが生きているということはトゥールみたいに毎月会議をしているのではなく、数ヶ月から半年といった頻度での開催ということなのだろう。


(ん?)


と、アーバスは会議の発言している人物の声に注目する。仮面で顔の下はわからないが体型と声からしたら女性なのだろうが、アーバスはその声に聞き覚えがあったのだ。


(誰だったかなぁ)


声に聞き覚えがあるということは実際に話したことがあるということなのだが思い出せなかった。トゥールではないことだけは確実にわかるのだが、どこであったのだろう。


(こいつが親玉ね)


会議の最後に立ち上がって締めに入る人物がどうやらサードオプティマスの親玉みたいだ。見た目は男性のようで無精髭も仮面の空いた部分から見えるが、エルを介して視ているのでその人物が魔法を使って姿を作っているのかどうかまでは判別することは出来なかった。


(これだけ情報を集めれば十分か)


拠点の情報などの必要な物は手に入れることが出来たので後は報告するだけでいいだろう。消失封印も無かったのでこれが全てだと判断してアーバスは記憶を覗くのを終えるとリリファス達へと向き直るのだった。

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