19話 レベル6のボスモンスター
「やったわねサーラ」
「ありがとうアミール。アーバスもありがとうございます」
「俺は何もしてないよ。サーラの実力だ」
障壁張ってるだけで何もしてないからな。まさか火属性の上位魔法使えるとは思っていなかったな。火属性が得意な人よりかはやや威力が落ちてるので適性は恐らく光だろうが、もしかしたら相性の悪い闇属性以外は全て使えるのかもしれないな
「いえいえ。上位魔法を使うと障壁が張れなくなりますし、あの攻撃は防げたかわかりません」
「サーラなら防げたと思うぞ。障壁の強度され上げれば防げるからな」
スライムキングのあの攻撃は初見だと対応は難しいかもしれないが、強固な障壁を張れさえすれば攻撃自体はスライムを亜音速で飛ばしてくるだけで属性や効果は一切ないので攻撃を防げれさえすれば、後は魔法での遠距離攻撃で簡単に倒せるのである。移動も遅いので逃げられる心配もないしな。
「それにしてもイレギュラーモンスターとは珍しいですね」
「そうね。滅多に出ないって聞くし」
イレギュラーモンスターとはそのレベルからしたら不相応に強いモンスターのことで、その出現率は高くないものの、出逢えば全員退場してもおかしくないレベルの強さのモンスターである。
「たまたま今回は勝ったけど次も勝てるとは限らないぞ」
「そうね。全滅なんて当たり前もんね」
今回も奇襲に備えて障壁を展開していたお陰で何とか防げたからな。もし、障壁が突破されていたら今頃は全員退場になっていただろうな
「アーバス見て、宝箱よ」
アミールが宝箱を見てはしゃいでいる。そういえば道中での宝箱のドロップか。
「宝箱ってどういう仕組みなんですかね。普通なら死体が残るはずですのに」
「確かに謎だな」
何せ外では倒しても死体しか残らないしな。死体ならその素材を使って武器だったり防具だったりを作れるので強いモンスターの死体はそれなりに値段がつくんだけどな。今のスライムキングだって死体として残れば優秀な防具が作れたんだよな。ダンジョンでは死体が消える代わりに当たり外れはあるが宝箱が出るんだけどな
「誰が開けますか?」
「そんなのサーラしかいないわ。ね、アーバス」
「そうだな。倒したのはサーラだし当然だな」
宝箱は道中に落ちているの以外は倒した人と相場が決まっているらしい。パーティー内で交代で開けているところもあるそうなのだが、それも稀と聞くな。しかも初宝箱なので交代で開けるにしても最初はサーラになるだろうな。
「わ、私でいいんですか?」
「当然よ。さ、開けましょ」
アミールに促され、サーラは宝箱の前まで来る。ちょっと緊張しているようだったが、サーラは「行きます」と言うと意を決して宝箱を開ける。
「これは杖ですね。アーバス何かわかりますか?」
中に入っていたのは杖のようでサーラはアーバスに鑑定を依頼する。杖自体は良くある市販の杖みたいなもので、特に装飾とかはされていなかった。
「この杖はいいぞ。魔力消費を5%抑えてくれる上、魔法の効果を5%上げてくれるらしい」
魔法効果の上昇とは回復なら回復量、攻撃魔法なら威力が、と魔法の効力が上昇するスキルだな。魔法関連のスキルだと魔力消費量軽減や魔力増幅くらいに当たりのスキルだな。
「スキル2つですか、それだと逆に使うのが申し訳なくなりますね」
ダンジョン産の武器は基本的にスキルが複数付くことはあまりない。生産だと複数のスキルを付与することは可能であるが、性能については素材依存で素材が良ければ高い効果を付与出来るが、逆に素材が悪すぎればマイナスになってしまうこともある。しかもスキルを複数付けるとなると後から付けるものは本来よりも少ない数値になってしまうのである。
「大丈夫よ。私は氷刀貰ったしね」
「そもそも杖使えるのはサーラだけだしな」
杖は使えないことはないが銃があるからなぁ。杖だと魔法攻撃しか出来ないので戦闘スタイルに合ってないからアーバスは使っていないしな
「そういうことなら遠慮なく使わせて頂きますね」
サーラは杖を貰うことを決めたらしい。サーラは今まで武器を使って無かったので丁度いいだろう。
「さて、進みましょうか」
「ですね。ところでダンジョンの道中でこんなに騒いで大丈夫なんですか?」
ダンジョンでは大きな声で騒いだりするとモンスターが寄ってきてしまうのでボス戦以外は騒ぐのはご法度とさてれいるのだ。場合によっては全滅しかねないからな
「そこは大丈夫だな。今のところ近くにモンスターはいないしな」
索敵魔法は展開していたままなので様子を見ていたが、スライムが寄ってくる気配はなく、ただ自身の周りをウロウロとしているだけのようだった。こっちへ来ても魔力弾で返り討ちにしていたけどな。
「そうなのね。スライムだからなのかしら」
「かもな」
「それでは進みましょうか」
イレギュラーはあったが2層目の探索を開始する。2層目もスライムしか居ないのだが数は1層目と比べると多く、数も同時に3体と多くはなっていたが、アミールは被弾することもなくそのまま2層目も余裕で突破する。その後はイレギュラーもなく、3、4層目もスライムが増えるだけで難なく4層目の階段へと到着する。
「スライムばっかりだったわね。」
「そうですね。ドロップもスライムゼリーばかりでしたね…」
道中のドロップはスライムゼリーのみでアイテムは一切ドロップしなかった。最初の方はスライムゼリーでも喜んでいたアミールとサーラだったが、スライムゼリーしか落ちないので最後の方はドロップしても無言だった。
「まぁ今からボス戦だから切り替えて行こうぜ」
「どうせボスもスライム複数よ」
「そんなことありましたね」
アミールがイジケてそんなことを言う。そういえばレベル2の5層目ってスライム5体だったな。今はレベル6なのでそんなことはないとは思うが、本当にスライム5体はやめてくれよ。アーバスはそんなことを思いながら5層目と足を踏み入れる。
「ボスの場所はレベル6でも同じなのね」
「そうみたいだな」
そのまま全員が入ると中央部分に光が集まっていき、光の中からハイスライム1体が現れた。
「ハイスライム1体ね…」
「アミール。相手は進化個体ですから気を抜かないでくださいね」
「分かってるわよ」
ハイスライム1体にアミールのテンションはだだ下がりだったが、サーラの一言で少し気を引き締める。レベル2ではそこまで強く無かったがここはレベル6、強敵になってる可能性は十分考えられる。アミールは強化魔法を付与すると、ハイスライムへと斬りかかる。そのままハイスライムを斬りつけるがハイスライムは光に還ることなく、今度はハイスライムがアミールへと飛びかかる。
「甘いわ」
アミールはそれを横飛びで回避する。そのまま回避をして攻撃するが、ハイスライムは消滅することなくぴょんぴょんと跳ねている。
「やぁぁぁ」
アミールは強化魔法を更に強くして攻撃するが、ハイスライムは動じすにアミールへともう一度攻撃する。アミールはそれを回避すると
「アーバスどうなってるの?凄い強いんだけど」
とアーバスに聞いてくる。アーバスは鑑定を使うと鑑定の結果どうやら斬撃耐性があり、剣などの斬る攻撃はダメージが結構軽減されるみたいだった。今までの攻防で減ったハイスライムのHPは1割にも届くてなく、斬撃に非常に強いことが目に見えてわかった。が、反面それ以外に耐性はなく、ステータスもそこまで高くはなくHPに至っては普通のスライムの方が多いくらいであった。
「アミール。斬撃に耐性があるみたいだ。だから氷属性を使うほうがいいぞ」
「そうなのね。わかったわ」
アーバスの助言を聞き、アミールは氷属性を氷刀に付与する。先程まで使っていた剣と違い、氷刀は氷属性に強化があるので威力は1.5倍にまで強化されていた。
「さぁ。いくわよ」
アミールはハイスライムに向けて走り出す。ハイスライムはアミールの方向転換しようとぴょんぴょんと跳ねて移動しているところであり、どう見ても攻撃を回避できる状態ではなかった。
「やぁぁ」
アミールの攻撃がハイスライムスライムにクリーンヒットし、ハイスライムはその場合に光に還る。物理攻撃は軽減されているが、属性ダメージの軽減が無かったので属性でのダメージで押し切れたみたいだな。
「お疲れ様」
「全然。ウォーミングアップにもならないわ」
ハイオークとの戦いがあったからなのかアミールは余裕そうな表情だった。
(これでも余裕とはな)
午前中に闘ったハイオークは浅い階層ではあったがほぼ全力でた闘っていたはずだし、5層目のボスまでの間も休まずメインで戦っており、魔力の消費は蓄積で結構あるはずなのだが、アミールからしたらまだ余裕があるらしい
(もうちょいレベルを上げたいがこれ以上はシエスに怒られるよな)
レベル6のダンジョンを察するにモンスターはそこまで強くなく、まだお試しの割合が強いだろう。シエスからはレベルが上のダンジョンに挑むことは禁止されてはいなかったが、それでも1日でレベルを飛ばしまくるのは流石に不味い気がする。アミール達のことを考えたらもう少しレベルを上げた方が特訓になるとは思うが、ダンジョン初日でしかも最奥のボスと戦わずにレベルを上げるのは学園としてもあまり好ましくないだろうしな。
「そうか。ならもうちょっと先へ進めるな」
「当然。今日中にレベル6のダンジョンをクリアするんだから」
「そうですね。クリアしたいですね」
アミールはどうやら今日中にレベル6を攻略したいらしい。レベル6が何層まであるかは知らないが、時刻は15時でタイムリミットまで後3時間程なので運良くいっても恐らくは10層〜15層目まであたりになるだろうな。
「それよりも宝箱はどうするんだ」
「勿論開けるわ。今度は何が入っているかしら」
アミールが開ける気らしい。ドロップがスライムゼリーじゃなかったのでちょっとホッとしているようだった。アミールはそのまま宝箱を開けると
「金のインゴットですね」
「換金用のアイテムだな」
中に入っていたのた金のインゴットで、装備の強化や換金に使用するものだ。ただ、強化をする場合はダンジョンでドロップした装備しか強化をすることが出来ない上、素材でも強化することが出来るので換金して強化の為の資金にするのが一般的である。
「装備じゃなかったわね。残念」
「インゴットはそこそこ出るみたいだから仕方ないな」
「まぁ、資金が増えると考えれば悪くはないわね」
「氷刀を強化するには足りないがな」
強化に使える為かインゴットはそこそこドロップするのである。レベル6で金のインゴットはレアだが、それでもダンジョン産の武器を強化するにはこれだけでは到底足りないのである。
「ドロップを確認したし次の階層行きましょ」
「そうですね。行きましょうか」
アミールとサーラはそう言うと6層目と足を進めるのだった。