179話 久しぶりの報告
「初戦お疲れ様でした」
「ありがとうシエス」
放課後、アーバスは久しぶりにシエスの元へと訪れていた。シエスには昨日パーティーとして潜ったばかりではあるが、その時は近況報告はしていないからな。シエスが代表戦のことで忙かったこともあり、こうして放課後に話す機会なんてあまり無かったからな。
「アーバス、初戦は決めていたのですか?」
「初戦というより本戦全部アミールのごり押しだぞ」
パーティー戦の初試合、同じ組相手に圧勝したアーバスにシエスが事前に決めていたのか聞くが、アーバスは悪びれることなく本戦の作戦を伝える。
「魔力操作で随分と実力が向上しているはずですが、見せても問題ないと?」
「ないな。既存のものくらい見せても作戦に影響が無いからな」
なんせダンジョンでは今まさに追加の属性を習得しているところだからな。アミールが習得している雷属性は習得して身体強化に組み込むと更に行動が速くなるからな。メインである学校別の代表戦までには間に合わせるつもりなので今の状態のアミールを見せていても本番では別人になっているので今のところは無問題なのである。
「というかこんなに楽なトーナメントでいいのか?」
と、シエスにパーティー戦のトーナメントのことで確認を取る。アーバス達のパーティーがあるブロックは比較的緩い組み合わせとなっており、ジャック達に勝てればSクラスの生徒とは決勝まで当たらない組み分けとなっていたのだ。これには流石のアーバスもトーナメント表を確認した時に三度見するくらいには不正を疑ったのである。
「いいですよ。それより本戦の組み方って知っていますか?」
「そこまでは知らんな」
予選もそうだが、本戦も抽選回とかが有るわけではなく、出来たトーナメントが掲示されて初めて対戦相手が分かる仕組みなのだ。開幕戦などの大事な試合は組み合わせが調整されると聞いたことがあるが、実際はどうやって決まっているのだろうか
「実は大事な試合以外は全て抽選です。今回だと、アーバスとジャックくんのパーティーの対戦は決まっていて残りは全て抽選です」
なんと組み合わせは全て抽選で決まっていたらしい。それなら強さの片寄ったブロックや1回戦でSクラスの潰し合いがそこそこあったのにも納得がいくな。というかそんな古典的な方法で選ばれていたのかよ
「ちなみに個人戦に関しましては本戦の出場者が揃い次第教員推薦枠も含めて全て抽選となります」
「それは残酷だな」
教員推薦枠までも抽選となれば運の悪い生徒は連続で教員推薦枠に当たるということも出てくるというわけだ。それは可哀想だと思うが、裏を返せば1回戦で教員推薦枠同士が潰し合いをしてくれるということなのでそうなれば生徒にとっては嬉しいのかもしれないな。
「というか教員推薦枠同士が1回戦で戦うのは良いのか?」
「場所を固定しても良かったのですけどね。全てを抽選にしないと意外と不正とか疑われるのですよ」
本当なら1回戦から教員推薦枠同士での潰し合いなんてしたくないわな。でも、抽選と言われているのに教員推薦枠やSクラスの生徒と連戦とかになれば抽選であっても不正とか言いたくなる気持ちもわかるけどな
「文句を言う前に実力をつけて欲しいんだけどな。個人戦なんて冒険者ランクがそのまま実力の指標になるんだろ?」
「そうですね。今年の新人戦だとアミールさんとサーラさんがBクラス上位でロインくんとクロロトくんとクロエさんアロマがBクラス下位で残りはCランク以下ですね」
今年の1年生は実力のある人が多く、例年ならクラス代表にいるかどうかのBランク冒険者がSランクの各組に居ても尚、余るという状況だからな。しかも前衛と後衛がきっちりと別れているのでSクラスのCランク冒険者の生徒であっても代表戦で優勝できるかどうか怪しいところなのである。
「文句を言う前にランクを上げて欲しいところなんだけどな。Bランクまでなら一瞬だろ?」
「普通はBランクまですぐには上がりませんよ」
とシエスいうが、Bランク冒険者なら極端な話下位属性のマスターとそこそこのモンスターの討伐スキルで何とかなるからな。新しい属性や上位属性でなくても辿り着けるのがBランク冒険者だしな。逆に1属性だけならどけだけ強くてもAランク冒険者にはなることが出来ないのだけどな。
なので冒険者ランクを上げようとする人の大半は入学前後から新たな属性を習得する為の練習をして、卒業までに1属性以上増やして入学当初より何ランクか上げることを目指しているはずだ。
「むしろ2年生になるとSクラスだとBランク冒険者がそこそこ誕生するんだろ?なら今の時点でBランク冒険者が出ても不思議ではないと思うのだけどな」
「それはリンウェルさんだけだと思いますよ」
リンウェルは現在火属性を習得している最中ではあるが、週1でアーバス達とダンジョン攻略しているせいかBランク冒険者になる目前というところまで来ているのである。雷属性は元々マスターしていて属性の実力は問題ないので、後は立ち回りだけだったのだが、本人は兄弟と比べていて劣等感を抱いてしたせいで期待通りの実力を発揮出来ていなかっただけだからな。普通に戦えさえ出来ればBランク評価を貰えてただろうからな。
「それでもないさ。意外とロインやジャック達もがんばっているからな」
聞いた話によるとジャックのパーティーとロインのところ順調に攻略が進んでおり、どちらも殆ど同じ場所らしい。ジャック達のほうが先に攻略に詰まりそうだが、それでも夏休み前にレベル6に上がっていても不思議ではないな。
「それでも報告を聞く限りではアーバスのパーティーが1番順調だと思いますけどね。アミールさんなんてAランク確実じゃないですか?」
「そりゃあんなに高ランク属性剣がドロップすればな」
アミールの場合は立ち回りはAランク基準を満たしているが、属性数が基準を満たしてないからな。それでも属性剣が4属性ドロップしているので、全てを習得する頃にはAランク冒険者の仲間入りとなるだろう。
「それです。エクストリーム産なので普通の属性剣よりも習得速度が早いのはわかりますが、1ヶ月程度でマスター出来るのは異常ですよ」
「と言われてもなぁ」
と、アミールに返した氷刀を思い出す。なんせ強化玉だけでエクストリーム産程度まで強化出来るみたいだからな。素材を集めるのは大変だが、別にエクストリーム産のドロップを狙わなくてもノーマル産の武器と強化玉だけで良くなったのは収穫だろう。強化玉なんて普通の人からすればそこまで武器の能力が上がらないので値段を気にしなければいつでも入手出来るからな。
「えっ。強化玉でもエクストリーム産並にあがるのですか?」
シエスに強化玉でもエクストリーム産並の属性剣を作れることを言うと驚いた表情をしていた。
「あれ、言ってなかったか?」
「聞いてないですね。どういうことですか?」
どうやらシエスに報告していなかったみたいだ。校長室にはほぼ毎日行っている感覚なのでてっきり報告済かと思った。ただ、シエス達のパーティーは暗黒属性の属性剣は持っていないからな。強化玉で強化出来るといってもドロップしないことには入手出来ないし、ダンジョンで新規にドロップさせるといってもエクストリーム産だから強化しなくても問題ないしな。
「虹鉱石や虹の結晶石が長年供給不足だったのはそれが理由だったのですね」
「そうなんだが、その割には初回のクリア報酬があったんだよな」
仮に虹鉱石や虹の結晶石がエクストリーム産のドロップのみだとしても100年前までは普通に供給されていたみたいなのでどういうことか理解出来ないんだよな。
「それはあって当然だと思いますよ。私達も存在そのものを知らなかったですからね」
「なら、どうして虹鉱石や虹の結晶石が供給できていたんだ?」
エクストリームの存在が知られていないということは虹鉱石や虹の結晶石は供給されていないはずなのだ。しかし現実は供給されているのでどこかにはあったはずなのだ。
「それは鉱脈があったからですね。厳密には隠されていたみたいですけど」
「そういうことか」
どうやら大昔に虹鉱石や虹の結晶石をドロップさせた冒険者がどこかに隠していたようで、それを密かに供給し続けたみたいだな。そしてそれが100年前に無くなってそれっきり市場に出回らなかったのが実情らしい。
「なのでアーバスが気にしていることはないですよ。これは保証出来ますね」
「そうか。おっとそろそろ時間か」
気が付けばエクストリームの時間が迫って来ていたのだ。アーバスは急いで準備するとダンジョン棟へとむかったのだった。




