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178話 ジャックの敗北

「終わった。何もかも……」


控え室に入るとorzの状態のジャックが部屋の隅にオブジェクトかのように鎮座していた。アーバス達はその姿にドン引きするのだが、それも一瞬で見なかったことにして空いている椅子に腰掛ける。


「お疲れ様。2回戦進出おめでとう」


「ありがとうニール」


ニールがアーバス達を祝福すると、それに続いてラウムとサーシャも祝福してくれる。負けて悔しいだろうに良く祝福してくれるな。


「やっぱりアミールさんは強いね。まさか1人に壊滅させるなんてね」


「ホント、何があったんだよ。1ヶ月前と別人じゃねぇか」

 

「え、そうなの?全然気にしてなかったわ」


1ヶ月の特訓の間に強くなったアミールにジャック達は驚く。アミール本人は強くなった感覚はあるにはあるみたいなのだが、まだ実感がそこまでないみないだしな。どちらかというと周りが驚いていることの方が多いな。


「一体どんな練習をしたらそこまで別人になれるんだよ」


「え、アーバスに魔力操作を教えてもらっただけだけど?」


ジャックに強さの秘密を聞かれたアミールは何も躊躇いもなく答える。ジャックはその答えにギロッとアーバスの方を睨みつけると


「貴様かぁ。俺への特訓はし断った癖にアミールさんへはイチャコラしながら指導ってか?潰すぞ?アァ!?」


「パーティーメンバーに特訓して何が悪い。後、そんなに頭の中ピンク色だと更に女子に嫌われるぞ」


なんせ代表戦のエントリーしたタイミングで教えを請うジャック達有象無象と違ってアミール達はダンジョンに入ってからすぐに教える話になったからな。何故かジャックが威圧してくるが、どれだけ女子に飢えてたらそんな反応になるんだよ


「なん…だと」


「ジャックの場合は強くなって女子にチヤホヤされたいだけでしょ」


「そうやろな。そんな事してたら逆に女子から引かれるで」


「既に引いてます………」


ジャックは逆効果なのを知らなかったのか落ち込んでいると、女子達から無慈悲な追撃が飛んてくる。サーシャは既に引いているみたいで、ジャックが唯一といって良いくらいに普通に接しているのにも関わらず嫌わているみたいだ。その言葉を聞いてジャックは更に落ち込みながらアーバスに聞いてくる


「アーバス、なんで俺はこんなに嫌われているんだ?」


「どう見ても入学当初の問題行動だろ」


ここ最近は代表戦に集中していたのもあってかジャックは静かにしていたそうだが、その前が酷すぎたからな。1組男子全体にまで影響を及ぼすようなくらいの悪行を働いていたんだから1ヶ月程度じゃイメージを変えるのは難しいだろう。


「何故お前は女子だらけのパーティーなのに好かれているんだ?」


「信頼されているだけだろ。好意なんてないしな」


アーバスからしたらアミール達はただのパーティーメンバーだからな。そこに男女の関係は一切ないので揉めることはないしな。


「嘘だー。そんなこと言って絶対に裏でイチャコラしてんるんだー」


「してるわけないだろ」


正直に答えるアーバスにジャックは半泣きになりながら棒読みでそんなことを言ってくる。正直に答えているだけなのにジャックは何故毎回変な妄想をしているのだろうか。


「そんな訳ないだろ。思春期の男子なんだ、絶対に嫌らしいことを考えているに決まってるだろ?」


「ニール、そうなのか?」


「何故俺に振るんだ!?」


と、俺は理解出来てないのでニールに聞いてみる。唐突に振られたニールは露骨に動揺しだす。そんなニールをジャックを見逃す理由がなかった。


「ほぉ、ニールはラブラブなようで良かったですねー」


「ちょっと待ってくれ。何でそうなるんだい?」


「えっ。本当に彼女いるの?誰、誰なのよ」


ジャックに煽られて更に動揺するニールに流石のアミールを気付いたようだ。1組男子の評価が低い中良くオッケーを貰えたな。


「だからなぜそんなを言うんだ?まだ何も答えていないだろ」


「これはいてそうやな」


「自白の魔法を掛けてもいいんだぞ」


と中々答えないニールにリンウェルも気づきアーバスは止めの一言を放つ。それが止めになったのかわからないが、ニールは申し訳なさそうにサーシャの方を見る。サーシャはそれを見て顔を赤くするだけだったのだが、それだけで十分だった。


「マジ?」


「正直に答えたのに何故疑われないといけないんだい?」


と、思わず素で聞いたアーバスにニールには照れ隠しをするように顔を真っ赤にしながら大きな声でいう。まさかパーティー内で出来ているとは思わなかったな。


「おめでとう二人共」


「おめでとうございます」


「今夜は赤飯は何か用意せんとあかんか?」


まさかの事態に女性陣から祝福される。横でジャックが泡吹いて倒れているが強く生きていてくれ。真面目にしていたら卒業までには作れると思うぞ?


「ニール。お前もアーバスと一緒で俺も置いていくのか?」


「……………すまん」


「はぅん」


辛うじて生き返ったジャックの質問にニールは謝るとジャックは身体を痙攣されて倒れてしまう。倒れたと同時に鼻を強打したのか殺人事件の現場のようになってしまったが、誰もそれを気にする素振りは無かった。


「ところで俺たちの敗因はなんだったんだ?」


「聞きたいのか?」


「そうだね。今まではこれで上手く行っていたのに何故急に使えなかったのかが気になるからね」


ニールはどうやら上手く行っていた作戦が簡単に頓挫したことが気になるようだ。アーバスはパーティーメンバーに余計なことを言わないように釘を刺した後に話し始める。


「まずはこの試合はお互いにパーティーメンバーが同じ組でどういう人物か把握しているところだ」


「そうだね。でも、サーシャの特殊属性は対抗戦では使ってなかったから有効なはずだ」


「俺が知ってなければな」


大事なのはアーバスがサーシャの特殊属性を知っているのかどうかだ。知らなければ無策で突っ込んで来るだろうが、知っていた場合は当然対策をした上で行動してくるだろうしな。


「つまり知っていたということか」


「把握出来ていないと対抗戦で指揮官なんて出来ないと思うぞ」


「それはどういうことなんだ。リンウェルがメイン指揮官じゃないのかい?」


「リンウェルは修行中のサブの指揮官だぞ。メインの作戦は俺が練っているからな」


どうやら1組の指揮官はリンウェルとだと思っている人が多数派みたいだ。アーバスはリンウェルに作戦概要を伝えたら後は自由に行動しているので指揮官はリンウェルと思っている人が多いのだろうな。

更には表面上のクラス代表がアミールなのに実権をアーバスが握っていることから他のクラスや組からは裏ボスとまで言われ出しているという情報があるみたいだ。これは単純にアミールが不甲斐ないだけと言っておこう。


「そして2つ目はアミールの開幕速攻を警戒しなかったことだな」


「まさか川を突っ切って来るとは思ってなかったからね」


「それで本陣をがら空きにするのは違うと思うぞ。せめて誰かは残すべきだったな」


ニールは川を突っ切って来ないと踏んで序盤は索敵をして相手の動向を見てから動くつもりだったみたいだ。これが普通のパーティー相手ならそれでいいのだが、アミールが氷属性なことを知っていて好戦的な性格を知っているのなら川を凍らせて速攻を掛けてくる可能性はあるからな。対策としては出遅れはするが、相手の初動を確認してから動くしかないからな。出遅れはするが、奇襲で壊滅させられるよりかはマシだろう。

アーバスはそれでもアミールだけで勝てると踏んでアミールを送り込んだんだけどな


「そうか。でもそこまで対策済なら全員で出迎えても負けてただろうね」


「そりゃな。厳しそうならサーラに上級魔法をアミールを巻き込んで撃ち込んでもらう予定だったからな」


仮にアミールが負けそうならアミール諸共上級魔法を叩き込む予定だったからな。リンウェルの上級魔法は届かないが、サーラの火属性なら余裕で届くからな。その際アミールは退場になるだろうがサーシャは魔法を撃ち込む前に退場させているので、満身創痍のジャック達をサーラの上級魔法連打で削り切る算段だった。


「それはお手上げだね。完璧だよ」


その作戦を聞いたニールは思わず完敗を宣言するのだった。

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