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177話 初戦後

「戻ったわよ」


「お疲れ様。よく勝ってくれた」


「当然。目標はダブルでの優勝よ。こんなところで負けてられないわ」


試合が終わり、フラッグの下へと戻ってきたアミールを出迎えると、そのまま控え室の方へと歩きながら試合の感想戦を始める。


「アミール、初戦は緊張したんか?」


「全然。ジャックのところのパーティーだったからというのもあるかもしれないわね」


リンウェルからの質問にアミールは緊張感なく答える。初戦がジャックのパーティーだったからかそこまで緊張することなく戦えたみたいだな。これが他の組だったら緊張していたかもしれないが、同じ組だったのが有利に働いたな。


「リンウェルとサーラはどうだったのよ。緊張してたの?」


「ウチはアリーナに入るまでは緊張してたで。お役御免となってからはその緊張もどっかいったけどな」


「私の役割は普段と変わらなかったので何も感じませんでしたね」


と、リンウェルとサーラが初戦の感想をいう。リンウェルは前衛かもしれないということで緊張していたみたいだが、サーラの役割は普段通りだったこともあり全く無かったみたいだな。

こういう戦闘の時って前衛は緊張することは多いが、後衛は意外とやることが同じなので緊張することが少いんだよな


「アーバスはどうやったんや?」


「事前にある程度は考えてきてたのもあってそこまでだな。それに作戦通りに進んでくれたからこっちとしては助かったな」


渓谷のフィールドでは最初からアミール単騎で勝負を決める前提だったのでアミールが上手く機能してくれたので何も困らなかったしな。サーシャへの狙撃も含めて完璧な立ち回りだったな。


「アーバスは緊張することってないんやな」


「今のところはそういう場面が無いだけだ。それに相手がジャックのパーティーなのが事前にわかっていたしな」


なんせパーティー戦の本戦出場者のことは現在調査中の段階で本戦に進出した全てのパーティーのことを把握しているわけではないからな。Sクラスのパーティーは優先して情報を集めていたので全パーティーの情報はあるが、Aクラス以下のパーティーには未把握の情報が多いからな。

本戦は全てオープンな場で戦うので1回戦が全て終わることには勝ち上がったパーティーの情報は揃っているだろう。


「アーバス。少し聞きたいんだけどいいかしら」


「なんだ?」


アミールから聞いてくるとは珍しいな。アーバスから見たら特に不備も無かったように見えたのでダメ出しするところなんてないのだが


「ニールを倒した後のラウムへの攻撃だけどあれって良かったのかしら?」


「ジャックが剣で攻撃して来れない状況がわかっていたらあれで完璧だな。そうで無かったら悪手だな」


ジャックがラウムを助けようとした場面だが、あれはジャックがニールを助けようと剣を仕舞ってタックルしてでもアミールの攻撃逸らすか、ニールを逃がして自分は退場になろうとしていたからな。

結果的にはアミールへのタックルで止める形となったが、それが見えていたのであればラウムを優先して攻撃するのが正解だな。なんせジャックのタックルを喰らったとしてもアミールが退場になることは無ないからな。

逆に見えていなかったとなると、ジャックに対して致命的な隙を晒していたとなる。これがタックルだったので退場にならなかったが、剣で攻撃されていて致命傷となれば退場もあり得たので反省すべき点となるな。


「そう、やっぱりミスなのね」


と、アミールが露骨に沈む。どうやら後者だったようだな。アーバスはてっきり前者だと思っていたので意外だったな。戦闘中ならそこまで意識が回ってそうだったんだけどな。対抗戦の時は少なくとも出来ていたはずなので、続くようなら夏休み中に鍛え直さないといけないな


「ありがとう。また立ち回りを考えてみるわ」


「困ったら聞いてくれ。出来る範囲でアドバイスはするぞ」


困った時に聞いてアドバイスするのもパーティーの役割だからな。アーバスもメルファスに入った時はその時の13聖人やリリファスに色々と聞いたり教えてもらったりしていたからな。


「アミールが自分から聞いて落ち込むなんて珍しいやんか」


「そうですね。大抵ミスなんて気にして無さそうですのに」


「五月蝿いわね。明確にミスだと思ったから聞いたのよ」


リンウェルとサーラに煽られてアミールがいつもの調子へと戻る。ミスなのを理解出来ているのも良いことだが、やっぱりいつもの調子じゃないと何か狂うな。


「アーバスはええんか?初戦から銃を使って狙撃なんかして」


「銃は透明化で隠したし、狙撃手なのは皆知っているからな。隠すならむしろ前衛なことくらいだな」


アーバスが銃を使えるということはサーラとエクストリームの攻略を始めた頃にアミールとリンウェルに打ち明けていたのだ。二人とも高ランクの銃使いが異例なことを知っていたので簡単に秘密にしてくれた。

リンウェルはその銃をパーティー戦の初戦で使ったことに驚くが、透明化と転移の魔法を使えば銃であることは隠せるからな。アーバスは銃を使用したものの、直接サーシャを狙撃したのではなくサーシャの後方に展開した転移陣から狙撃して退場させたのである。肝心な銃は透明化を使った状態で右手に持っており、更に透明化した転移陣の入口を展開しておいたので観客からは転移陣で狙撃したのではなく空中に展開した魔法陣から攻撃したように見えたはずだしな。


「へぇ。そんなことやってたんやな」


「あぁ。狙撃手なのは既にバレているからな。出来るなら団体戦の準決勝が終わるまでは後衛だと誤魔化したいしな」


ダンジョンではイレギュラーモンスターや変異種相手に魔力弾と剣で戦っているのでアミール達からはオールマイティーの前衛アタッカーの印象が強いが、他のクラスから見たアーバスのイメージは未だに迷彩魔法を使える狙撃手なのだ。Sクラスに一部にはアーバスが前衛も出来るということはバレているが、それでもメインが狙撃手だと思っている生徒が大半だからな。

これは先週ターニーから直接聞いた話なので信憑性は高いだろう。なので、アーバスとしては出来るだけ狙撃手のイメージを崩したくないのである。


「そうか。ダンジョンでのアーバスはこのパーティーしか知らんのやったな」


「そうだったわね。ダンジョンでは前衛アタッカーしているからすっかり忘れていたわ」


どうやらリンウェルとアミールはアーバスの対抗戦での立ち回りをやっと思い出したらしい。サーラもそういえばという顔をしていたのできっとパーティー全員忘れていたのだろうな。


「そういうことだから前衛はリンウェルとアミールに任せるつもりだ。俺は索敵と狙撃による補助をメインにするつもりだ」


なんせリンウェルとアミールが前衛なのは周知の事実だからな。リンウェルは対抗戦では後衛だったが、他のSクラスの情報を探るとやはりリンウェルは前衛アタッカーとして警戒されていたらしい。対抗戦では後衛だったので2組戦では前衛アタッカーとして警戒されていなかったが、パーティー戦では前衛アタッカーとして投入して存分に団体戦で警戒してもらおうと思っているからな。

その代わりにジャック達のパーティーに圧勝して早々に脱落させることが出来たのでジャック達の警戒度は下がるはずだしな。


「なる程な。パーティー戦って団体戦の前哨戦でもあるんやな」


「なんせSランクは準決勝からのせいで大抵の代表戦の情報に触れられるからな。騙せるのなら騙せた方が有利に働くからな」


「それはそうか。Aランクはこっちの情報はこの代表戦でしか触れれないしな」


と言うアーバスであったが、この先暫くはSランクのパーティーと当たることがないのでアミールにフラッグを強襲してもらって全滅かフラッグを削り切って勝つつもりなんだけどな。

アーバスはその先の警戒するパーティーを頭の中に浮かべながら控え室のドアを開けるのだった。

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