165話 リンウェルのソロボス戦
「なぁ、アーバス。次のボスなんやが1人で行ってええか?」
「いいぞ。ただ、無理だと思ったらサーラとアミールに介入させるけどそれでいいか?」
「それでいいで」
ボス前の広場でリンウェルが1人でやりたいとのことだったので許可しておく。道中は属性剣で属性を習得するようにとアーバスは言っていたが、ボス戦は敵も強くなることからアーバスは使うことを許可したのである。
「いいなー私も参加したいな。アーバス、私は駄目なの?」
「アミールは次の最下層のボス戦で使うからいいだろ」
アミールがそう言うが、次のボスは最下層だからアミールがメインアタッカーなので氷刀はそこで使われることになるだろうしな。
「そうだったわね。ならいいわ、リンウェル頑張って」
次のボスでアミールは戦えるとなるとあっさりボスをリンウェルに譲る。なんせ次のボスは普通ならボスベアーとハイベアーなのでリンウェルの雷属性が有利に働くボスだしな。アーバス達は少し休憩するとそのままボス戦へと突入する。
「さてと早速お試しといきますか」
と、リンウェルは戻ってきたばかりの槍を取り出し魔力を込める。槍は大量に雷を帯びていき、雷も黄色から青白くなって段々と威力が上がって行くのが目に見えてわかる。
ハイベアーはその攻撃を止めようと親玉のボスベアーの前に立ち塞がるようにリンウェルの元へと駆け出していく。
「デリャアァァァァッ」
っとベアーとの距離が後10メートルとなったタイミングでリンウェルは溜めていた雷を前方へと放つ。
放たれた雷はハイベアーを貫通した後、その後ろに立っていたボスベアーにも直撃する。
「流石にこれじゃ倒せんわな」
ハイベアーは今の一撃で倒れたものの、ボスベアーはその強靭な肉体でどうやら生き残ったらしい。
「アーバス、あれ威力高すぎない?」
「そりゃ雷属性強化があるからな。普通よりも強くて当たり前だ」
なんせ大強化だからな。道中なら3回くらい攻撃を入れないと倒せないハイベアーでも溜めによる威力上昇も合わせれば1撃で倒せるようになる。流石にボスベアーは倒せなかったがあの威力だと半分くらいは入っているだろう。
「流石にもう1回溜めるのは厳しかったみたいね」
「そりゃそうだろ。ボスベアーの方が動きは速いんだからな」
リンウェルは溜め攻撃を終えるとすぐにボスベアーに近づき近接戦を始める。手を振りかぶって攻撃してくるボスベアーに対してリンウェルは槍で受け流すと、僅かな隙を槍で突いてダメージを与えていく。
「ねぇアーバス。リンウェル動きが良くなっているのは気の所為かしら」
「そうですね。さっきまでの階層と違って槍の使い方が良くなっている気がします」
と、アミールとサーラがそんなことを言う。さっきまでと比べると明らかにリンウェルの槍を振るう速度が上がっており、しかもリンウェル自身の動きの無駄もなくなってきているのだ。
「そこは攻撃速度大と槍技能強化のせいだろうな」
攻撃速度大の恩恵で僅か隙でも攻撃を与えることができるのが大きいが、それ以上に槍技能強化の恩恵が大きいな。今までは攻撃や防御に無駄な動きがあって攻撃のタイミングを作れていなかったが、それが無くなったことで攻撃のタイミングが増えてその分ダメージ量が増えてるのだ。
「剣の技能強化ってないの?」
「俺も初めて聞いたスキルだから調べてみないとわからないな」
アーバスも昨日聞いたばっかりなので他にあるのかエバクにメッセージで聞いてみたのだが、そんなスキルは知らないとのことだった。リーゼロッテも同様の答えだったので大昔に途絶えたスキルの1つなのだろう。
「そうなのね。もしあれば私も使ってみたいわ」
「アミールはそこまで必要じゃないだろ」
「使ってみたら意外と直すところも出てくるかもしれないじゃない」
アーバスが見た限りだとアミールの動きにそこまで無駄があるようには感じなかった。なのでアミールが使ってもそこまで効果はないとは思うが、アミールはそうではないみたいだ。アーバスも興味本位で使ってみたいとは思っているが、それで武器のスキル1枠を潰すのも勿体ない気がするので今のところは使う予定はないな。
「これだけ強いとリンウェルにボスを任せても問題なさそうだな」
「そうね。ボス戦も交互にやってもいいかもしれないわね」
槍で強化されているとはいえ、ボスくらいならリンウェルでも問題なく倒せるところまできているな。レアボスはモンスター次第ではあるが、イレギュラーなら確実にアーバスが戦うのでリンウェルには下がってもらえばいいだけだしな。リンウェルだけで厳しそうならサーラに補助してもらえばいいだけだしな
「これだけ優勢だとやることがないな」
「そうですね。私も眺めているだけですからね」
とそんな話をしているとボスベアーが力尽きたのか光となって消えていったのだ。
「リンウェルお疲れ様。修繕した槍はどうだった?」
「これ凄いな。完全に別物やで」
と、リンウェルは興奮しながらそう答える。そりゃスキルが5つも増えると別物になるだろうな。
「今までよりも身体の動きが良いから攻撃を捌くのは簡単やし、ダメージも簡単に与えれるからとても使いやすかったわ」
「だろうな。ただ、道中は感覚が変わるだろうからそこは気をつけるんだぞ」
「そりゃスキルが変わるんやからそうなるわな。確かに気をつけんといかんな」
属性剣には攻撃速度と槍技能強化はないから普段よりも動きにくくなるだろうから無理しないように気をつけないといけないからな。武器が変わった時に今まで付いていたスキルが無くなったせいでダメージを受けるということは昔も今も変わらないとリリファスから嫌ほど聞かされているからな。
「リンウェル、宝箱は開けなくていいのか?」
「ホンマやん。普段アミールが開けるから忘れてたわ」
ボス戦はリンウェルとアミールが一緒に戦っているのだが、大半のダメージをアミールが叩き出してしまうせいでリンウェルはアミールに宝箱を譲っているから開けてないんだよなぁ。そのせいで、ボス戦で宝箱を開けることがないのでリンウェルはそのままスルーして次の階層へと行こうとしたのである。
リンウェルは宝箱のことを思い出して宝箱の前まで戻ってくる。
「それじぁ開けるわな………って指輪かいな」
と、宝箱を開けるとそこには装飾品の指輪が入っていた。リンウェルがハズレみたいな顔をしているのはここ最近の宝箱から出てくる指輪は調理や鍛冶成功率など冒険者からしたらハズレのスキルばっかり出ているのが原因であり、当たりに暫く巡り会えてないので全員装飾品の更新が出来ていないからな。
「スキル効果上昇10%か。これは装備出来るなおめでとう」
出たのは装飾品や武器などについていふスキルを上昇させてくれるスキルだな。倍率もノーマルの中では高い部類に入るのでこれは装備していても問題ないスキルだろう。
「そうなんか。久しぶりに大当たりが出てホッとしたわ」
と、それを聞いてリンウェルはホッとする。技能強化の方はわからないが、雷属性強化や攻撃速度とかにも効果が乗るので装備していて問題ないものだな。
「誰かさんの物欲が凄いからそれが影響しているんじゃないかな」
「何ですって!?」
と、アーバスの1言にアミールが噛みつく。エクストリームでは普通に有用なスキルはドロップしていて、ノーマルのボス戦だけ露骨に良いものが出ないからな。ノーマルの道中でドロップしたスキルも更新する程倍率が高くないものしかないしな
「わかったわよ。私も出せばいいんでしょ。ボスでとびきり良いドロップを出すわよ」
「それ絶対フラグやで」
アミールはそんなことを宣言するが、フラグでしかないと残りの3人は思うのだった。




