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14話ハイレッドドラゴン戦

「ギャオオオォォォ」


「最悪、変異種かよ…」


ハイレッドドラゴンに進化したレッサーレッドドラゴンであったが、普通のハイレッドドラゴンは違い、全身がクリスタル化した鱗に覆われていた。これは覚醒と言われるものでこれは進化した際に超低確率で起こるもので覚醒したモンスターは表面が魔力の結晶で覆われて魔力循環が良くなり通常より比べものにならないくらいに強力になるのだ。覚醒したモンスターは別名変異種と呼ばれ、属性や威力が格段に上がり、スライムであってもSランク冒険者でも勝てるか怪しいレベルになる。

しかも進化した影響か5割を切っていた体力が満タンまで回復しており、アーバスはただ魔力を消費しただけだった。おおよそ最悪な状態にアーバスはため息をつくがすぐに切り替える。


「やるだけやってみますか」


それでも無理なら奥の手はあるが、できる限り今の状態のままで戦ってみたい。アーバスはアイテムボックスから銃を取り出すとハイレッドドラゴンに向けて放つ。放たれた弾丸は直撃はしたもののダメージはそこまで入ったようには見られなかった。  


「こりゃ手数で頑張るしかないな」


相手が上空にいる以上剣での近接戦闘は不可能ではないが無茶しないといけないし、無防備にもなるので出来れば避けたい。アーバスは魔法陣を複数展開するとそこから魔力弾を発射する。魔力弾は普段とは違い属性を付与されており、各魔法陣から違う属性の魔力弾が発射される。普通のハイレッドドラゴンだと弱点は水か雷なのだが、覚醒種の場合だと弱点属性が変わっていることがあるのでアーバスは敢えて全部の属性で攻撃したのである。ハイレッドドラゴンは翼を羽ばたいて飛んできた魔力弾を返そうとするが、そんなもので魔力弾の威力が弱まることはなく、全弾直撃する。


(弱点は火か…)


本来のハイレッドドラゴンだと火属性には耐性があり、殆どダメージは入らないのだが、覚醒の影響で火属性が弱点となっているのか火属性のダメージだけ他の属性よりもダメージ量が多かった。アーバスは自身の周りの地面に魔法陣を展開した後、空中に魔法陣を10個展開させる。地面に展開した魔法陣は複数あり、これには自身の必要魔力減少や魔力増幅、更には地面から魔力を回収する魔法など魔力に関連した魔法を大量に展開していた。更に空中に展開した魔法陣からは先程よりも強力な火属性の魔力弾が大量にハイレッドドラゴンへ向けて放たれる。


「ギャオオオォォォォ」


ハイレッドドラゴンはブレスを放ち、そのブレスの勢いで魔力弾の大半が撃ち落とされる。ただ、本来耐性のある火属性が弱点になっている為、ハイレッドドラゴン自身も自分の攻撃でダメージが入ったみいだ。撃ち落とされなかった魔力弾は胴体に直撃するが、直撃した数がそもそも少なかった為かブレスによるダメージを込みにしても思ったよりダメージを与えることは出来なかった。


「自身にダメージがあるとはいえあのブレスは強力だな」


今のところは魔力弾を連打することで相手に反撃させる暇を与えていないのでこちらへ攻撃が飛んでくることはないのだが、攻撃された場合は後ろにいるロインも守らないといけないので出来れば反撃する暇を与えたくないのがアーバスの本音である。


「手数は大事ってな」


既に追加の魔法陣が15個出来ており、ブレスが終わったタイミングで発射させる。ブレス途中に発射しなかったのはブレスに巻き込まれる可能性や相手がダメージを喰らいながら反撃されるのを避ける為で、出来るだけ相手に回避行動をしてもらいながら確実に削っていけるように立ち回る。ハイレッドドラゴンも回避できるものは回避しており、ダメージを喰らってでも攻撃しようとしてきていないしな。


(ここ)


何度目かのブレスの切れ目のタイミングでアーバスは銃弾を発射する。ここまでちまちま削っていたが、行動やタイミングも掴めて来ており、まともなダメージを与える為にブレスの終わり目を狙って打ち込んだのである。銃弾はハイレッドドラゴンの開いていた口の中に吸い込まれるように入って行くと、そのまま喉元で爆発する。


「よし、良いダメージ」


さっきまでミリしか減らなかったダメージが今の爆発で3割程削れる。ハイレッドドラゴンはそのまま仰け反るとそれに合わせて一斉に射出した魔力弾が無防備な喉元目掛けて殺到する。


ドカーン


と魔力弾が一斉に着弾する音と共にハイレッドドラゴンのHPが更に2割削れる。先程の爆発と合わせて半分以上のダメージがハイレッドドラゴンに入り既に入っていたダメージと合わせて残りは3割程度であった。


「やっぱり頭と喉が弱点か」


弱点である火属性であることも大きいのだが、それよりも身体内部での火属性の爆発や喉元に直撃した魔力弾といい、先程まで胴体に直撃していた魔力弾よりもダメージが明らかに大きいので特にダメージが通りやすい場所なんだろう。アーバスは更に追加で魔力弾を放つがハイレッドドラゴンは既に仰け反りから復帰しており、上空を旋回することで頭部への魔力弾の直撃を回避していた。ハイレッドドラゴンはそのままの勢いでアーバスへと突進してくる。アーバスは即座に銃から剣に切り替えると、居合い切りの要領で剣を振り抜く


「ギャオオオォォォォ」


直前にハイレッドドラゴンが右へと向きを変えたので胴体への直撃こそはならなかったが、振り抜いた剣はハイレッドドラゴンの左手と左翼を根本から切断しており、飛行能力を失ったハイレッドドラゴンはそのままズザァァと滑るように墜落する。


「流石は結晶刀、切れ味が違うな」


アーバスがアイテムボックスから取り出したのは結晶刀という刀で、形状は普通の刀と変わりがないのだが、刀身は白くクリスタル見たいな光を放っていた。これはアーバス自身が以前に倒した変異種の素材から作られた剣であり、これによってこの結晶刀には覚醒特攻という覚醒モンスターに対して鋭い切れ味を誇っているのだ。普通の剣でも良かったのだが、覚醒モンスターの表面のクリスタルは固く、普通の剣では刀身が負けてしまい刀身が折れるかもしれない。もし、折れてしまった刀身は引っ付けることが出来ず、鍛冶でもう1度作り直しとなる。そうなってしまったら以前よりも性能が同じや上がったりするとはほぼなく、以前より劣化してしまうので新しい剣を作るか性能が落ちてもいいからもう1度作り直すしかないのである。流石にそれは勿体ないのでアーバスは結晶刀を使用したのである。


「さて、飛べなくなったしこれでこっちのものか」


アーバスは思いっきり踏み込むと一瞬でハイレッドドラゴンへと接近しそのまま斬りつける。ハイレッドドラゴンはその攻撃を防ごうと手で防御しようとするが、結晶刀の威力は絶大でその手をバターのように切り裂くとそのまま胴体も切り裂いていく。直撃したハイレッドドラゴンのHPがまた更にガクンと減少したのを確認するとアーバスは振り抜いた結晶刀をそのまま同じ軌道で逆から切り込む。大ダメージを負ったハイレッドドラゴンはそれを防ごうとするが、間に合わずそのままHPが0になり光の粒になり消滅した。


「進化と覚醒に予想外だったがまぁなんとかなったな」


ハイレッドドラゴンに進化して更に覚醒した時はどうなることになるかと思ったが意外と自力で何とかなるものだな。結晶刀は出したもののあれでないと覚醒を相手するのは厳しいかったから仕方なかったが、それでもそれ以外は自力で勝てたしな。


「お疲れ様。まさか勝つとは思わなかったよ」


「ありがとう。俺も勝てるとは思ってなかったぜ」


「それにしても隠し通路にハイレッドドラゴンなんてレベル1とは思えない強さだったね。知っていたのかい?」


「知ってる訳ないだろ」  


ここがなんの部屋かはわかないが、明らかにレベル1とは思えない強さだった。そしてハイレッドドラゴンを倒したところにはいつの間にか宝箱が置かれていた。これはアイテムがドロップしたことを意味しており、モンスターの素材の場合はそのままモンスターがいた場所に置かれている。


「とりあえず開けるか」


アーバスは宝箱の目の前に立つとそのまま宝箱を開ける。すると中に入っていたのはクリスタル状のリングであった。クリスタルの色は倒したハイレッドドラゴンと同じ薄い赤色をしており、アーバスはそれを手に取るとそのまま右手の中指にそれを装着する。


「お、なる程な」


「アーバス君、何かわかったのかい」


「こりゃ魔力消費減少のリングだな。変異種からのドロップなだけあって相当性能がいい」


装備したリングを解析すると、魔力の消費が普通より8割も抑えれるとのことだ。一般的に出回っている魔力消費減少のアイテムだと数%が大半でで10%を超えてくると国宝級になるくらい出にくいんだけどな。


(何レベルのダンジョンを潜る必要があるんだよ…)


現在存在が確認がされているレベルはハードのレベル1だ。そこへ潜れる冒険者でもここまで良い性能のアイテムを持っていると聞いたことがない。アーバスが確認している中では18%が最高なのでこれは存在している中では世界最高のアイテムになる。金額なんて付けれるものではなく、これを巡っての戦争が起きかねない代物だった。


「やっぱり変異種を討伐しただけあって性能が良いんだね」


「だな。それよりどうする?この先に階段があるみたいだが」


「アーバスに任せるよ。もう僕の実力では勝てる敵ではなさそうだからね」


「なら進もうか」


アーバスは好奇心で進むことを決意する。魔法学園にいてる間はメルファスで戦っていたような敵とは戦うことはないと思っていたが、魔法学園に居ながら高レベルのモンスターと戦えるとなると楽しめそうだった。そんな気持ちで階段を降りるとそこには帰還用の転移陣があった。これは階層の底に着いたら現れるもので形はどれも一緒で教科書にも乗っていたので間違いない。


「ここで最下層みたいだね」


「あぁ。どうやら最短距離でクリアする為の近道だったらしいな」


「その割には強すぎるけどね」


アーバス達は転移陣を使って帰還する。帰還するとそこはダンジョンの入口であり、変なところへ飛ばされなかったと安心する。


「やっぱり近道みたいだね。ほら、レベル2のダンジョンが出てるね」


ロインはダンジョンの入れるレベルを確認したのかそのようにいう。アーバスも一緒にロインのを確認するとどうやらレベル1はクリアされておりレベル2のダンジョンの入ダンへのボタンが出ていた。


「でもあの強さでレベル1クリアだけじゃなんか物足りないな」


「レベル2ダンジョンがどうかわからないけど、僕の知ってる限りあそこまで強くはないはずだよ」


「だよな」


レベル1の最下層のボスの情報ならアーバスも軽くではあるが知っている。そもそもレッサーレッドドラゴンが出てくるのがレベル10以降なのだ。レベル10でも出てくるがその場合は最下層のレアであり、通常モンスターとして出てくるのはもう少し先なのである。


「まぁとにかくお疲れ様。今日はありがとな」


「僕の方こそ。まさかレベル1クリアなんて助かったよ。協力ありがとう」


時間的に今から入ダンしても1層目をクリア出来るかどうかな時間なのでアーバス達はここで解散することにした。

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