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135話 早朝の来客

「こんな朝早くに珍しいな」


アーバスは通信の音で起床する。こんな朝早くに来る場合は大抵緊急事態だから仕方ない


「主、寝起きかァ?朝っぱらからすまねぇなァ」


通信をしてきたのはバルファーティアだった。寝起きで通信相手を確認せずに出たから意外な通話相手に少し驚いた。今までだとリリファスからの通信が殆どだったからな。


「別にいいさ。それよりも何があったんだ。輸送関係か?」


バルファーティアのことだからルディック村関係だろうが、何か問題でもあったか?最近だとルーが居なくなったので輸送関係が不足して代わりにトゥールから人員を派遣したが、そこに問題が生じたのだろうか?


「輸送関係や村自体に問題は特にねぇなァ。いや、ある意味村には問題があるかァ?」


「何だそれ」


バルファーティアの話し方を見るにルディック村に危機が訪れていたり、輸送関係に問題があるわけではないみたいだ。ただ、バルファーティアだけで判断できたない事案が出たことだけはわかった。


「主がこれから学園なのはわかっているが、とにかく来てくれェ。見てくれたらわかるからよぉ」


「わかった。行くから30分は待ってくれ」


「すまねぇな」


バルファーティアはアーバスに頭を下げると通信を切断する。本当は放課後に行きたいのだが、口調的に放課後だと遅いのだろう。一体何があったんだ?



アーバスはシエスに遅刻の連絡を入れると転移でルディック村へと移動する。シエスには金曜日に続いての遅刻の連絡に小言を言われたが、金曜日はシエスの諜報の情報漏洩のせいであの時間となっただけなんだよなぁ


「主様おはようございます」


「ルーか。バルファーティアのところへ連れて言ってくれるか?」


「はいっ」


ルディック村に着くとルーが出迎えてくれた。バルファーティアが出迎えに来ないということは緊急事態への対応中か。でも、ルーが案内してくれるということは村の中にはいるのだろう。


「ルー!?」


「はい。何でしょう主様」


ルーが不思議そうな目でアーバスを見てくる。そういやルーは一昨日に家族の元へと帰ったはずなのに何でルディック村にいるんだよ。馴染みすぎて気づくのに遅れたぜ


「お前アニーさんと一緒に群れの元へと帰ったはずじゃないのか?」


とアーバスはルーに聞く。人間に襲われたことやテイムされたことで一族から追放された可能性もあるが、あの時のアニーさん達表情や今のルーの様子を見るにそれはないだろう。


「それは来てからわかることだとバルファーティア様が言ってました」


バルファーティアから口止めされているらしい。そこは事前に言って欲しいんだけどな。アーバスはルーに連れられて客間へと入ると、そこにはバルファーティアと成人男性の見た目した人がもう1人、いやもう1体か。が向かい合って座っていた。


「主、本当に朝からすまねぇ。俺1人では判断出来なくてよぉ」


「別に大丈夫だ。大して学ぶこともないしな」


ダンジョンには色々と世話になっているが、授業についてはアーバスが勉強したもの以下しか出て来ていないからな。歴史に関しては少し覚える必要があるが、メルファスやトゥールで使うことはないからテストの時だけ都度記憶するだけで良いだろうしな。


「バルファーティア、そちらが来客か?」


「あぁ。すまねぇが自己紹介してくれねぇか?」


アーバスはバルファーティアに聞くとやはり来客だそうだ。来客はこちらへ向かって向き直ると頭を下げて自己紹介をする。


「我が名は龍王シムタイである。この度はルーを保護していただきありがとうございます」


「アーバス・ヴェルライトだ。判断したのはそこにいるバルファーティアとここにいないリーゼロッテだ。俺はお礼を言われるに値しないさ」


アーバスはそう言うとバルファーティアの横に座る。それにしても龍王自ら来るとはな。龍王とはこの世界にいる5つの龍の一族があり、各一族の中の頂点に君臨する者が龍王と名乗ることを許されている。シムタイの属する一族は龍の中では珍しく人間と対等に接する一族だと聞いたことがある。


「そういう訳には行かないです。本来なら狩られるのが定め。それをテイムという形で保護していただけるなんて思ってもいなかったのです」


保護していたというが雑な扱いをしていないだけで実際は輸送のお手伝いをしてもらっていたからテイムらしいことはしていたんだよなぁ。まぁ向こうが感謝しているのだから野暮なことは言わないことにする。


「それほどでもないさ。ところで今日来たのはお礼の為じゃないだろ。何が目的なんだ?」


アーバスは目的を聞くために龍王シムタイに直接問いかける。なんせ外にはアニーさんやチッタ以外に人化した龍が30体も居るんだからな。もしこれが暴君と噂される龍王シヴドラなら宣戦布告された上に総攻撃だっただろうから龍王シムタイで良かったとアーバスは思う。


「単刀直入に言います。我々を保護してくれませんか?」


「一族全員か?龍王シムタイ達にも故郷があるはずだ。それなのに何故離れる必要があるんだ?」


龍の一族には各々人目に付かない秘匿された場所に住んでいるらしく、その場所はトゥールですら知らないくらいだ。そんな安全な場所を捨ててまで何故此処へ移住しようとしているのだろう。


「それが龍王シヴドラに目を付けられまして」


「あの暴君にか。目的は何なんだ?」


龍王シヴドラに目を付けられたのかぁ。恐らくは一族の中の誰かが龍王シヴドラに目を付けられたといったところだろう。


「チッタを妻にするから寄越せと言ってきたのです?」


「ん?龍王シヴドラは妻子がいたはずじゃなかったか?」


アーバスの記憶が正しければシヴドラには妻子が居たはずだ。それなのにチッタを妻として寄越せとはおかしな話だな


「龍は一夫多妻制が普通なのですよ。ただ、チッタにはルーが居ます。そのことを伝えると宣戦布告してきまして」


「なる程な。被害は?」


「今のところ故郷だけですが、我々一族が滅ぼされるのも時間の問題かと」


なる程な。それなら移住してくる理由も納得できるな。アーバスはバルファーティアの方を見る。バルファーティアは既に決意を固めているみたいで龍王シムタイの移住を許可するつもりだろう。


「わかった。ただ、1つだけ約束してくれ。俺達を裏切ることだけはするなよ」


「はい。誓ってそのようなことをしないと約束しましょう」


「そうか。では龍王シムタイは一族の皆に伝えに言ってくれないか?バルファーティアはここに残ってくれ」


龍王シムタイは皆に伝える為にルーと一緒に外へと出ていく。アーバスはそれを確認すると障壁を張って外に聞こえないようにすると


「バルファーティアはどう思う?」


「どうって何もかんじねぇけどなぁ」


バルファーティアはどうやら何も感じなかったそうだ。ってことは気のせいなのか?そうだったらいいんだがな


『メッセージ』


アーバスは魔法を起動させる。この『メッセージ』という魔法は通信魔法の1種で相手と通信出来ない代わりに複数人に対して一度に発信できる魔法である。


「緊急招集を行う。20分後にルディック村の客間に集まるように」


アーバスはバルファーティア以外の幹部全員に発信する。これで後は集まるのを待つだけだな。


「主いいのかぁ。幹部全員招集してぇ」


「ルディック村はトゥールの重要な場所の1つだ。狙われるのならそれ相応の歓迎の準備をしないとな」


バルファーティアがそんなことを言うが、龍達を受け入れる以上次の会合までのんびりと待っている時間はないのだ。それなら皆が普段の生活を始める前の今のほうが集まり易いだろう。


「さて、どうやって迎撃の準備をしようかな」


アーバスは幹部全員が来るまでどうやったら陰湿にハメれるか意地悪く考えるのだった。

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