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124話 早朝の依頼

「ん?珍しいな」


土曜日の朝、アーバスは通信で目を覚ます。昨日はあれから次の階層にいったところで解散したのでそこまで夜遅くに拠点き戻ったわけではないが、それでもまだ早朝だろう。こんな早朝に連絡してくる人物なんて限られるが、恐らくは急用だろうからアーバスは寝ぼけながらも通信に出ることにした。


「アーバス、こんな早くに申し訳ないですね」


「いえ。そんなことはありません」


通話の相手はリリファスで、脇にあった時計を見てみると4時だった。普段が6時起きなのでそりゃ朝早いと感じた訳だ。


「急なのですが、テグロウ山にてドラゴンが徘徊しているとの情報がありました。今のところ被害は出ておりませんがジョーカーとして出撃を依頼したいのです」


どうやら出動要請のようだ。そういえばリリファスが時々依頼をすると言っていたのでこれがそうなのだろう。アーバスは回っていない頭で依頼内容を確認する。


「ドラゴンの種類はわかりますか?わかっていると有り難いのですが」


「1体はハイブルードラゴンですが、もう1体は種類までは特定出来ていません。が、レジェンド以上だとのことです」


「レジェンドですか。それは確かに13聖人クラスじゃないと厳しいですね」


レジェンド系のドラゴンだと討伐には13聖人が必須だろう。しかも政治組とそのの不祥事のせいで数少ない災害級モンスター倒せる人材が更に少なくなっており、今の13聖人ではレジェンド系のドラゴン1体倒すのにも人材不足で依頼が後回しになっているらしい。ただ、これが続くもの困るのでアーバスは先に釘を刺しておく。


「私は原則土曜日しかクエストを受ける気はありませんよ」


全ては政治組の責任ではあるが、アーバスは魔法学園への強制入学とメルファスとしての活動を止められたからな。復帰しても問題はないが、まだ政治組が残っているので完全に居なくなるまではアーバスは復帰するつもりはなかったりする。

それに復帰したとしてとエクストリームやアミール達との攻略があるので活動出来ても精々週2から3日が限界だろうしな。

 

「無理を言っているのはこちらだとわかっているつもりです。決して復帰してもらおうだなんて思っていませんよ。予定があるのならこの依頼もキャンセルしていただいて構いません」


リリファスはアーバスの現状を知っているだけあって無理をさせるつもりは一切ないようだった。最終的に承認したのはリリファスだからリリファス自らアーバスをジョーカーとして復帰させる気はないのだろう。


「キャンセルなんてしませんよ。厳しいようならこちらから事前に連絡を入れますからね」


アーバスとしては別に依頼があろうが無かろうがどっちでも良いからな。今日だってリリファスからの依頼が無ければブラックボードから適度に依頼を受注してモンスターを倒しに行っていただろうしな。


「そうですか。では依頼をお願いしましたよ」


と、リリファスは依頼の受注を確認すると通信を切ってしまった。アーバスはギルド本部の進捗状況を聞きたかったのだが、リリファスから話をしてこなかった辺りまだ終わっていないのだろう。ギルド本部の制圧はセーティスへ少数精鋭部隊を出してしまったせいか、大した抵抗も出来ずに制圧されたみたいだった。

ただ、主要人物については生きての捕縛が出来なかったようでその影響もあって事後捜査が遅れているみたいだった。


「さてと、まずは調査から始めますか」


とアーバスは準備と整えるとテグロウ山の麓にあるテグー村へと転移にて移動する。テグー村には以前来たことがあるので少しは村のことは知っていたのだが、ドラゴンが来たというのにその時と全く変わっておらず、厳戒態勢ですらなかった。


「お、アーバス君じゃないか久しぶりだね」


「相変わらず元気ですねギルド長」


「ナグーと呼べ」


アーバスは以前に情報収集の為にこの村に来たことがあり、その際にテグー村のへと進行してきたスーパーウルトラゴーレムを破壊したことがあったのだ。それでギルド長であるナグーさんに気に入られており、ここに来た時には良くしてもらっている。


「で、今日はどんな要件だい?」


「テグロウ山にドラゴンが住み着いたと聞きましてその調査に来ました」


アーバスは手短に依頼の内容を伝える。調査というよりどちらかと言えば脅威の排除なのだが、その辺りは曖昧にして伝えても問題ないだろう。


「あぁ、あの住み着いたドラゴンね。1体はハイブルードラゴンなんだろうがもう1体は多分エンシェントレッドドラゴンだね」


「エンシェントかぁ。それはまた変なのが住み着いたみたいだな」


リリファスの話ではレジェンド以上と聞いていたが、その上のエンシェントとはな。ナグーさんは今は一線を退いているが、現役時代はSSランク冒険者パーティーの前衛として活躍していたそうだ。ナグーさん自身もSSランク冒険者だったのでナグーさんがそう言うなら結構信用できるな。


「ところで、エンシェントが出たのに何で村は冷静なんだ。普通はパニックになるだろ?」


エンシェント級のモンスターとなればそれは一大事で普通なら大規模な討伐隊や厳戒態勢を引くのが普通なのだが、どういうわけか村は普段と変わりない様子である。いくらナグーさんがいるとはいえエンシェントレッドドラゴン相手だと流石に秒殺されるだろう。


「そりゃ短期間にレジェンドレッドドラゴンとエンシェントレッドドラゴンが出てきたら村の皆の感覚が麻痺するさ。両方共村には手を出してないからね」


どうやらその直前にレジェンドレッドドラゴンがテグロウ山に出没していたみたいだ。しかもそのレジェンドレッドドラゴンは村に攻撃することは無かったようで村には一切の被害が無かったらしい。なので今回のエンシェントレッドドラゴンも同じだろうと何も準備をしていないらしい。


「なぁ、少し聞きたいことがあるんだが?」


「何かね?」


アーバスはちょっと気になったことを質問してみる。最近レジェンドレッドドラゴンに関してトゥールが関わっていた気がするんだよな。


「もしかして、メルファスの馬鹿が突撃して進化したレジェンドレッドドラゴンって」


「良く知ってるね。ここで起こったことだよ」


予想は的中していたみたいだ。メルファス13聖人2人も駆り出したのに返り討ちにされて2段階進化した場所がまさかここだったなんてな。

その際にどうやらルーは暴れなかったらしく、そのせいで村の警戒が非常に緩いみたいだ。


「ちなみに聞きたいんだがメルファスは?」


「来てないね。もし来ていたら私のテストに合格しない限り行かせないね」


どうやらメルファスは来ていないみたいだ。アーバスはてっきり政治組がまた負けて進化したのだと思ったのだがどうやら違ったみたいだ。


「ちなみにアーバスくんなら行っても問題ないよ。Dランク冒険者だけど実力が十分にあるからね」


「ありがとうございます」


アーバスはどうやらテストなしで行ってもいいらしかった。ナグーさんにはちゃんとDランク冒険者と申告しているはずなのだが、それでも行っていいと言えてしまうのは長年上位の冒険者と戦ってきた影響なのだろうか。


「といってもあのドラゴン達の寝蔵は他にあるみたいでね。日中しか顔を出しに来ないからまだ来ていないんだよ」


どうやらドラゴン達はテグロウ山に住み着いているわけではなく日中にテグロウ山に居てるだけのようだ。村の警戒が薄いは危機感がないからだと思ってたのだが、ドラゴンが日中に顔を出して帰るだけなら厳戒態勢じゃないのも頷けるな。


「ところでだ、アーバス。その格好は魔法学園のかい?」


「?あぁ、そういえばこの格好で来ていたっけか」


アーバスは1回自分の服装を確認してから納得する。寝起きだったからか、普段から制服で過ごす時間が増えてしまったせいで土曜日なのにこの格好で来てしまったようだ。最近は緊急依頼も制服の格好のままギルドに行ったりすことことが増えたせいでこの格好のまま行くのに違和感を覚えないからな。


「というかその制服はセーティスの魔法学園じゃないか。良くそんな遠いところから来たね」


制服だけでアーバスがセーティスから来たことがわかったらしい。テグロウ山はセーティス王国とは違う大陸にあるしな。  


「転移があるから一瞬だよ。それはナグーさんもそうだろ」


「アタシはSSランクだから当然だが、アーバスはDランクだ。Dランクの転移持ちとか常識じゃ考えられないからね」


冒険者が転移を元から使える場合は関係ないが、後天的に習得をしようとすればAランク以降に覚えることが多く、仮に覚えたとしてもアーバスみたいな非常式な距離を転移で移動することはないだろう。


「そういうもんかね」


「そういうもんさ。アーバスもDランク冒険者に成り切るにはまだまだ甘いね」


とナグーさんから言われる。これでもナグーさん以外の冒険者ギルドにはバレてないんだけどなぁ。アーバスはドラゴンが来るまでのんびりとギルドでナグーさんを話をするのであった。

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