110話 オーク軍団の報酬は豪華らしい
「皆さんお揃いですね」
次の日の放課後、アーバス達は校長室へと呼び出されていた。内容は言うまでもなく昨日の依頼の話である。
「昨日はお疲れ様でした。私個人の事情で報酬が今日になりましたことを謝罪します」
「気にしないで下さい。タイミング悪く帰ってきてしまったこちら側にも責任があります」
シエス達の企みを理解せずに帰ってきてしまったこちら側にも責任があるからな。というか事前に聞いていればアルカーナ村に寄ったりして時間を調整することができたんだけどな。謝罪はこれで終わりにして本題へと移る。
「まずはパーティーでの初任務お疲れ様でした。無事にオーク軍団は壊滅し、アルカーナ村への襲撃は回避されることとなりました」
「いえ。当然のことをしたまでです」
依頼だったとはいえ、村が襲撃される前だったのが救いだったな。これが襲撃中か後だと生存者の確認などをする必要があったのでその日に帰って来るのが厳しくなっていただろう。
「次にこちらが報酬となります。既に4等分されておりますので1人ずつお受け取りください」
そう言うとアーバスから順番に報酬と受け取る。今回はボスがAランク上位とあって金貨は固いだろうなと思って受け取ったのだが、思ったよりもずっしりとした重さにアーバスは中を覗くと金貨が結構な枚数あったのだ。
「報酬は金貨30枚となっております。本来なら金貨10枚ずつなのですが、アルカーナ村のギルドマスターの不手際の謝罪としてギルドから20枚ずつ上乗せされております」
アーバスが首を傾げているとシエスから説明があった。流石に今回のミスはギルドとしても重く受け止めているようだ。それにしても20枚とは結構乗せたな。これはリリファスから圧がかかったかもしれないな
「不手際ですか、私達からは報告していないと思いますが…」
「あの後アーバスくんから報告があったのですよ。然るべきところに報告はしております」
そういうと3人はアーバス見る。アミールとリンウェルはいつの間にという顔をしているが、サーラだけはやっぱりといった顔をしていた。昨日のあの場所にメルファスのトップであるリリファスがいたのにサーラは気づいていたみたいだしな。
「後は今回Aランクモンスターを倒したということで来月からあります代表戦の予選の免除をいたします」
パーティー戦限定ですけどねとシエスは付け加える。代表戦とは毎年夏休み明けに行われる国別対抗のことで、各大国から選抜した学生で順位を競う大会である。パーティー戦、団体戦、魔法戦、近接戦、総合戦の5種目あり、団体戦以外は複数の登録をすることはできない。
そして、その中でも1年生のみが出れる新人戦と全学年が出れる本戦と2つあるが、今回の免除は新人戦の方だろう。
「免除だってこれは出るしかないわよね」
予選免除にアミールのテンションが上がる。アーバスは出るなら協力するつもりだ。サーラは参加するだろうし、後はリンウェル次第だな。
「ウチも頑張るで、じゃないと出れるところがないからな」
リンウェルも出てくれるみたいだ。なら対抗戦はパーティー戦に出場だろうな。
「ウフフ。やる気ですね。登録はこちらで済ましておきますので本戦の日までお待ちくださいね」
シエスはそういうと参加登録の手続きをする。まだ、予選の登録がまだ始まってないのにもう登録してくれるのは有り難いな
「これにて依頼は完了です。依頼初達成おめでとうございます」
シエスはそういうとこれにて学園の依頼は終了となる。このままアリーナで練習と行きたいのだが、残念だが今日はまだ予定があるんだよな
「楽しみね。パーティー戦」
「まだ、2ヶ月は先だけどな」
代表戦の日程は来週が受付で、その翌週から1ヶ月かけて予選が行われるのだ。これは予選が全クラスの人が出れるので膨大な人数から本戦の人数を絞る為である。
「アミールやサーラは個人戦は出なくてええんか?」
確かにアミールとサーラなら個人戦でも代表戦に出れるだけの実力があるからな。順当にいけば決勝まではいけるだろう
「私は代表戦に出れたらいいからね。それにこのパーティーなら代表戦なら出れると思うからね」
「私もアミールも個人戦は相性が良くないのでパーティー戦の方が有り難いですね」
どうやらアミールもサーラもパーティー戦希望だったらしい。サーラはわかるがアミールも個人戦の成績が良くないのは意外だな。他の国の事情はわからないが、それでもアミールより上なんていないんじゃないか?
「2人がそんなこと言うなんて意外やな」
「そうだな。そんなに他の国って強いのか?」
メルファスを除くと他の国で学生が強い国なんてあったかなぁ。今のうちにリサーチしてもいいかもしれない
「そうね。ここ最近だとファルフォスとツオークが強いわね。毎年そこ2つの優勝争いで、セーティスが3番手ね」
せーティスが3番手なのは意外だな。てっきり毎年優勝しているのかと思っていたんだけどな
「ファルフォスとツオークね…」
「アーバスどうしたんや?」
セーティス王国は毎年高ランクの冒険者を排出しているくらいには冒険者をしっかりと育てており、高ランク冒険者の出身の割合だとトップだったはずだ。逆にファルフォスとツオーク出身の高ランク冒険者は殆どいなかったはずだ。
「そんなに強いのか?」
「そうね。対戦したけど手も足も出ないくらいには強かったわね」
「私もその2カ国には勝てなかったですね」
どうやらアミールとサーラがボロ負けするくらい強いらしい。それが本当だったら将来有望だな
「アーバスも当然一緒に出てくれるわよね?」
「当然だ」
アミール達が出てアーバスだけ出ないなんてことは出来ないからな。本音はあんまり出たくないけどアミール達が目立ってくれるなら影に隠れれて目立つことを避けれるはずだ
「お待ちしておりました」
そんな話をしているとアーバス達はルーファ商会内にあるギルドへと到着していた。出迎えはルーファでどうやら依頼主の交渉も終わってそうだな。
「納品依頼ありがとうございました。こちらが報酬となります」
とルーファは早速報酬を渡してくる。報酬は予想よりも少し多いくらいだった。
「オーク軍団ってこんなに稼げるの?」
「こんなに多いなんて…」
アーバスとサーラが絶句する。そういえばギルドに入ってからは単体討伐のクエストしか行っていないみたいだ。倒したモンスターも売却しているらしいがやっぱり数が多い方が報酬は良いみたいだ。
「数が数ですからね。それにハイパーオークの状態が非常に良かったのもありますね」
ハイパーオークは攻撃しすぎてボロボロになるのが勿体ないというこもあって一撃で倒したからな。そのおかげで報酬金額が上乗せされたらしい。
「もしかしてハイパーオークも均等に分配されていますか?」
「パーティーでの討伐なんだから当然だろ」
アーバスは当然のように答える。俺もオークやハイオークの討伐報酬を貰っているからな。普段パーティーを組んでいないのでわからないが、エリースが言うにはパーティーで討伐したモンスターは山分けと相場が決まっているらしい
「なんでそうなるのよ。アーバスが倒したんでしょ?」
「そうですよ。そんなお金受け取れませんよ」
「いや、受け取っとけよ。お金には困っていないし」
ノーマルダンジョンでのドロップ売却は俺は参加していないの関わらず山分けしているのに俺が倒した高ランクモンスターの報酬は俺のものなのは流石に気が引けるぞ
「それはそれで何か怖いんやが」
「普段は貰う側だからな。たまには良いだろ」
「本人が良いと言っているのですから素直に受け取って置くべきですよ」
「そう…それなら貰っておくわ」
「ありがとうございます」
それでも納得いかないアミール達だったが、ルーファがフォローしてくれたお陰で渋々納得してくれたみたいだ。
「これで昨日分の精算は終わりだけどここで解散でいいか?」
時間に余裕はあるのだが、今からアリーナに戻っても中途半端に練習して終わりそうだしな。なのでここで解散にすることにする。
「いいわよ。サーラ、買い物へ行きましょ」
「良いですね。最近買い物に行けていなかったんですよね」
「ウチは寮に帰って勉強やな」
解散になるなりアミールとサーラは買い物へリンウェルは寮で戦術の勉強をするみたいだ。
「楽しくやっているようですね」
「まぁな」
3人が部屋から出ていくなりルーファがそう言ってくる。さて、こっちは色々と進捗を聞かないとな。昨日ルーファと話してはいるが、トゥールの話は一切してないからな。アーバスはシエスに会う時間までルーファと情報の交換をするのだった。




