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11話 2組戦

クラス対抗戦最終日。アーバス達はアリーナの控え室に着いたところで、アーバスは控え室にあるホワイトボードの前に立つと


「今日の作戦を伝えるぞ」


その一言にザワザワとしていたクラスメイトが静かになる。連勝してクラスに多少の余裕が見られるが、勝ってるだけあって士気は高そうに見える。


「最終戦の作戦だが、単純だ。大将以外で総力戦を行う」


その一言にクラスメイトがざわつく。最終戦は総力戦が一般的だが、大将1人残しての総力戦なんて普通はやらないからな。


「ちょっ、私だけ仲間外れなわけ?」


アミールが動揺して思わず声を上げる。そりゃそうだ。今までアミールが大将をしていたし、前衛で障壁を張れない彼女が大将だと遠距離攻撃は防げな上に一人ぼっちになるからな。


「そんな訳ないだろアミール。お前は前衛だ。大将は俺がやる」


最終戦の大将はアーバス自身、奇襲攻撃などの小技はできなくなるがアミールが前衛なこともあり戦力は大幅にアップしているだろう。アミールは「良かったぁ」と安堵していたが、そもそも障壁を張れない大将を1人にはさせたくない。


「総力戦だが、サーラのバフとアミールの前衛能力の高さなら前衛戦は有利に動くだろう」


アミールの剣術が凄いのは確かだが、それ以上に1人で相手前衛と均衡を取れるサーラがいるのだ。普通にやれば前衛は有利を取れるだろう。


「リンウェル。後衛や前衛に魔法での遠距離攻撃が飛んでくる可能性が高い。ちゃんと守れるようにしとけ」 


「了解や」


リンウェルが頷く。リンウェルの指揮はどちらかというとバフや突撃といった攻撃に寄っており、遠距離攻撃を防いだりする障壁が他のクラスと比べて脆い。脆すぎるとまでは行かないが、魔法での総攻撃は耐えれないだろう。他のクラスは高火力での総攻撃であっても割れることはないだろうが、1組は総攻撃には耐えられないので2組が狙ってくるとしたらそこだろう。


「2組は他のクラスよりも強敵だ。実力もそうだが、作戦指揮もしっかりしている。恐らくこの2戦での弱点を突いてくるだろう。実力はこっちが上だろうが、相手はそれをひっくり返してくる作戦を用意してくるだろう。油断はするな」


今回アーバスは前線には参加しないが、このメンバーなら問題なく勝てるだろう。



「と思っていたんだがなぁ」


アーバスは本陣で1人ため息をつく。現在開始から1時間程経過したところである。ここから前線の詳しい様子は確認出来ないが、索敵で数と位置だけは把握できている。2組は15人と半数が退場になってはいるが、1組の前線は残り2人まで減っており、全滅寸前であった。なぜこんなことになったのかというと、前半はアミール達の活躍であろう。順調に相手の前衛の枚数を削っていたのだが、突然として1組の後衛の半数消えたのだ。恐らくは2組の魔法での一斉攻撃だろう。それによりバフの優劣が反転。そこから徐々に1組が押される形となりそのまま全滅しそうな状態にまでなってしまったのである。


「あれ程、魔法攻撃には気をつけろと言ったのに…」


恐らくは前衛が順調に削れており、このまま勝てるといった慢心から来たのであろうがそれを加味しても見事な逆転劇である。勝てそうと相手の気の緩みを逃さなかった2組には称賛を贈りたいくらいだったが、2組は残り2人となってからは中々倒しきれずにいるようだった。1人はアミールとわかるのだが、残りの1人はここからだと誰かわからないな。ただ相手も前衛が3人にまで減っており、大将であるロインは残ってはいるようだが、前衛の人数が少ないのもあって倒しきれていないようだった。


(倒したらそのまま来てくれると助かるんだが)


このままいっても回復のないアミール達は恐らく負けるだろう。その場合にこちらの本陣まで来てくれるのかどうかがある意味重要なのである。制限時間は3時間で恐らく半分過ぎるまでには1組は大将を残して全員退場するだろう。もし2組がそのまま来てくれた場合はそのまま迎え撃つので問題はないが、2組が本陣に戻ってしまった場合はこちらから出向いて戦う必要が出てくるのである。

2組の戦力分析は既に終わっており、透明化や位置偽装といった小技を使ってくる選手はいなさそうなのでそのまま向かってもこちらの本陣が狙われることはほぼないだろうからそこは安心である。仮にこちらから攻めるにしても2組の前衛は大将込みで3人しかいないので大将を落とすか、残りの前衛を倒せば大将が出て来ざるを得ないのでどちらにせよ大将との一騎打ちになり、大将討伐で試合が終わりそうな状況であった。


(アミールが大将倒してくれると何もしなくていいんだけどな) 


アミールが大将を倒せばそれで決着なのだが、バフの差で圧倒的に負けており、しかも相手大将の実力がアミールとほぼ互角となれば相手は回復もあるだろうからアミールが大将を倒して勝つのは絶望的だろう。

そこから少し時間が経過し、相手をもう2人退場させて1組の前線は全滅した。アーバスはあの不利な状況から2人も退場させたことを素直に称賛するが、それでも問題はあった。


(攻めて来ないなこれは)


減ったのは前衛の2人だろう。ということは大将しか前衛がおらず、大将の退場のリスクを考えると撤退だろう。アーバスは仕方なく相手の本陣を攻める為に本陣を出ようとしたのだが


(この状況でまさか攻めて来るのかよ)


相手はそのままの勢いで本陣へ攻めることを選んだらしい。そのまま本陣に引き篭もってタイムアップが普通だと思うがそうしないということはこのまま引いて勝つのが嫌かもしくは相手に何かされる前に叩きたいかの2択であろう。


(相手さん結構冴えてるな)


アーバスは今取り出した銃をしまいこれまで使用していた銃を取り出す。先程出していたのは遠距離攻撃用で跳弾と威力維持に特化したタイプの銃である。これを使えば壁に跳弾させるて当てるという難しい技術は必要になってくるが、本陣に居ながら相手本陣を攻撃できる代物である。

やっくる2組にアーバスは狙いをつけるとタイミングを計って引き金を引く。銃弾はまだ敵は現れて居ないが敵が出てくるであろう場所めがけて飛んでいき、そして


「チッ」


予期していたのかたまたまなのか出会い頭を狙った銃弾は寸前で止まったロインの目の前を通り過ぎていってしまった。更には跳弾もしないのでそのまま壁に当たって消えてしまう。しかも外れることを想定していなかったのか2発目を撃っておらず、今撃っても手遅れだろう。2組はもう狙撃がないことを確認すると一斉に飛び出して大将を倒す為に展開する。前衛はロインしか居ないので残りは角を曲がって直ぐのところで障壁を展開し、ロインへバフを掛けていく。

アーバスは距離を詰められないように銃で狙撃していくが、その尽く避けられるか弾かれるかして直撃を与えれない。銃弾の速さや威力も一発ずつ変えているのだがそれでも対応されてしまっている。しかも仮にダメージ与えたとしても銃での狙撃なので頭以外だとこの距離なら半分削れたらいい方だろう。削れたとしても相手は後衛が13人、オート回復もかかってるので削り切るには連続で3発くらいヒットさせないと厳しいだろう。残り距離100メートル、ついに半分距離が詰められた辺りでアーバスは発動待機させていた魔法陣を展開する。これは相手を狙って10発の魔力弾を発射するもので数は2つ、計20発の魔力弾が高速で連射され、ロインの元へと殺到する。ロインは避けたり、弾いたり、時には直撃を受けたりして攻撃を捌いていく。その間もアーバスからの狙撃は続いており、何発かの直撃弾はあったが削り切ることはできず、ついには魔力弾も捌ききられてしまう。


「貰ったぁ」


ロインはアーバスの攻撃を捌ききると身体強化で30メートルあった距離を一気に詰めて攻撃してくる。アーバスは銃をアイテムボックスにしまうと剣を取り出して応戦する。


キィン


と大きな音を立て、アーバスはロインの一閃を防ぐ。その間に魔力弾をロインの後方に追加で展開しており、アーバスは攻撃を防いだタイミングで魔力弾で攻撃するが、ロインはそれを察知してか後方に飛んで回避をする。だが、今回の魔力弾は追尾機能がついており、ロインが後ろへ飛んだのも折込み済かのように魔力弾が曲がってロインへと襲いかかる。アーバスはその間にも後方へ飛んだロインを追撃をするべく足に魔力を込めて一気に突進して追撃を加えるがロインは剣を当てるだけで受け止めようとはせず、本人ごと後ろへ吹き飛んで距離を取る。


(流されたか)


後ろへ吹き飛びはしたが着地はしっかりとしており、吹き飛んだというよりは力を利用して距離を取ったが正しそうだ。魔力弾もさらに追尾をしようとするが魔力切れかそのまま霧散する。


「仕切り直しか…」


アーバスはそう呟く。距離にして50メートル。お互いにひと踏み込みで届く距離である。今の攻防を見るに現状だとお互いのバフは互角。ただ、こちらはまだ追加の個人バフが結構あるのに対し相手は後衛からのバフ込みでだ。追加の隠し持っているバフはあるかもしれないがそれでもこちらが有利かつ相手の後衛さえ消せれば更に有利になる。アーバスは再度魔法陣を展開するとそこから魔力弾を放つと同時にロインへと切り込む。

ロインは今度は受けの姿勢なのかこちらが剣を振るうのに対して防御をするだけで特に攻め込んだりはしてこなかった。先程の一戦でロインはアーバスの剣術に関しては強敵だが何とかなる範囲だと思っていたが、正面や死角から飛んでくる魔力弾に対して反応するのが精一杯で攻撃する余力がないのであった。正面はまだ視覚で見える分だけ反応は容易ではあったが、死角に関しては全力で魔力探知を使用してやっと飛んで来ている角度がわかるだけで、魔法陣を見つけたり、ましてや破壊するなんて余裕が一切なかったのである。アーバスはそのまま連撃で攻めていくが途中からロインに異変が起こる。


「くっ…」


アーバスの攻撃に段々と防御が間に合わなくなって来ているのである。今までは剣の部分でしっかりとガード出来ていたのが間に合わないのか柄の部分まで使って攻撃を防いでいた。これはアーバスがバフを増やしたのではなく、ロインに掛かっていたバフが消えてきた為である。ロインは味方のバフでアーバスに対抗していた為、バフが消えるのは致命傷であり、自己のバフは既に全て使用しているので味方のバフがないと攻撃どころか守備もままならない状況になってきたのである。ロインは後衛の状況を確認したいが、アーバスから目を離せる状況ではなく今あるバフで対処するしかないのだが、それでも最小限の被弾をしながら戦っており、再度バフが掛かれば反撃するつもりであった。だが実はこの時既に後衛は全滅しており、残されたロインは本人のバフだけで戦うしかなかったのである。

アーバスはそんなロインを見ながらここで勝負を仕掛ける為に今まで使っていなかった追加のバフを使用し、態勢を崩す為にロインの剣へ強烈な一撃をいれる。


「しまった」


普段ならそんな攻撃は避けたり流したりして正面から防ぐことはないだろうが、今のロインにそんな余裕は無く、強化が入っていることに気づかずにその攻撃を防いでしまう。防いだ衝撃でロイン態勢は大きく後ろへ反れてしまい、胴体が完全にがら空きになってしまう。アーバスはそれを逃すことなく空いた胴体に全力で剣を振り抜いた。振り抜いた剣はロインを直撃するとロインはそのまま退場になり、試合は1組の勝利で幕を閉じた。

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